財団百物語
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001 - 語り手:██研究員
あれは深夜に書類作業をしていた時でした。絶対アパートには帰れないだろうなと考え、今日も徹夜だろうから博士の寝室を勝手に借りても良いかな、と思ってた時の事です。
予想よりも手書きでしか認められない書類をこなすというのは難航して、もっと早く手を動かせたら、と適当に妄想をしながら書類へシャープペンシルで書き込みを続けていたんです……部屋の照明は点けず、机のスタンドだけを頼りに僕は書いていましたが…
何かこう、違和感があったんです。もしかしたら、と思って書類を書くペンの動きを止めてから……ああ、何てこった、とその時思いましたよ。慌てて僕は近くのトイレにまで駆け込まなければなりませんでした。遠くで博士の奇声が響いたのを耳にしながら…
現実というものはつくづくに残酷なものでして……はっきりとその痕跡は僕にも残っていたのです。思わず涙が溢れましたが、何の慰めにもなりません。

右目のまぶたの裏側に、僅かに折れた芯の破片が入り込んでいました。まぶたの裏に見えたのはほんの一瞬で、白目にくっついたんです。僕の目の前で。
指で取り出そうとしましたが、最初はわりと痛くない、なので躍起になってこう、ぐいと思わず爪を滑らせてしまい……徐々に血管が充血し始め、最終的にはぼっこりと…眼科からは点眼薬を貰いました。書類は進まず、翌朝博士に怒られました。
皆さんも気を付けて下さい。注意したところでどうにもならないかもしれませんが。

 
 
 

006 - 語り手:████機動隊員
ちょうどその時には、銃撃訓練を行っていた。上司と一緒にな。敵対組織にどうこうするんじゃなくて、潜入操作の為とかで拳銃を取り扱っていたんだ。俺に用意されたのはリボルバータイプだった。
型が相当に古かったし、ああこいつは隊長よりもお偉方だったり俺が顔も名前も知らない…そんなもういなくなっちまった奴等と共に歩んでた銃なんだってな。奮えるものがあったよ。だから喜び勇んで練習をした。
弾を篭め直すのも面倒だって気よりも愛着が湧き始めた時だったかな。もっと格好良い撃ち方をしてみようと、例えば抜き撃ちってのがやってみたくなったんだよ。不思議と俺の中には、自信があった。

腰だめに的目掛けて一気に銃を抜いて引き金に指をかける!一瞬だったけどあの時の俺は格好良いものだと思ってたが…怨念めいたものは、確かにあったのかも知れねえな。
銃弾のケツを叩く為のハンマーが何をどうしたもんか、その時俺の親指にぶっ刺さってたんだからよ。何が有ったのか一瞬分からないままで、次には叫んじまったね。だってよ、ハンマーが爪を貫いてるんだから。
指に力を入れるとこう、白くなるだろ?爪でやった時もそうそう変わんなかったんだよな、最初は白くて。じわっと赤色が出て来たなと思ったら、あとはもうだらっだらだよ。
利き手の指を潰して本当に苦労したよ…ああ、あの時の光景は忘れられそうに無いね。

 
 
 

015 - 語り手:█博士
Ctrl+█を押して編集したデータを閉じたと思っていました。

被害は█キロバイトです。

 
 
 

023 - 語り手:██作業員
████を積んだ200kg越えの荷車の車輪が私の靴先、親指の巻爪の上を綺麗に通過しました。
あれだけ泣いたのは約二十年振りです。血膿の中で見えたての肉がとても綺麗でした。

 
 
 

029 - 語り手:███保育士
誰かのいたずらだったのか分かりませんが、私の靴の中に██ブロックが何個か紛れ込んでいました。
不幸にもちょうど土踏まずの中で止まって履く時には少しの違和感しかありませんでしたが、あの子達の声に応えようと思い切り踏み出した所で……

皆への記憶処理はもう済んだんですよね…え、何でしてないんですか?え?

 
 
 


「何だ今までやって来た話は!これがホラーだと思うのか君は!?」
「そうは言っても、怪現象が起きた所で財団への通達と調査を行うぐらいしかありませんし」
「これで夏を越えられると思ったら大間違いだ!より焦燥と恐怖、生々しき悪寒で無ければ悪辣なこの猛暑ばっ」
「博士…博士!?」


 
 
 
 
 
 

███博士の口唇部の切創は、合計12針を縫うものであったらしいです。
一気に暑さも吹き飛びましたよ。上下の歯で挟んだらしい一部がざっくりと、そこから血が溢れて…

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