Beginning of Khaos
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私はこんがりと焼き上がったベーコンをトーストに乗せながら今日も脳を巡らせる。かれこれ2週間弱ぐらいは悩んでいる。
実は私はある怪奇創作サイトのメンバーで、今回は凄いのを作ってみようと思ったのが原因だ。そのせいでどんなアイデアが浮かんでも物足りなくなってしまう。
決まっているのは「研究員」ということだけだ。
今日は休日だ。気晴らしにサイクリングでもしてみよう。
私は朝食を済ませ、シャワーを浴びて楽な格好に着替えてお気に入りのロードバイクにまたがり出発する。やはり様々なアイデアが出る。
途絶、停止、収容、残留、無力化。
だがどれも足りない。陳腐な発想だ。
凄い記事を書くには物足りないか、私では無い誰かの手によって既に書かれている。
昼頃になったので近くのレストランで昼食を済ませた。
こうしている間にも様々なアイデアが噴水のように湧いてくる。
周りに何も無い所に生存…、太陽への打ち上げ…、家族を処刑…懺悔させる…?蛇の手を入れるか…?
だが、違う。まだ足りない。足りないんだ。もっと、こう何かが…こう、怖気がするような…。
私は当てもなくブラブラとする。ああでもない、こうでもない。
片っ端から考える。メロン、O5、墓、愛…。
ああちくしょう、思いつかねえ。
そうして私はモヤモヤしたまま家に帰り、春の陽気に包まれてつい寝てしまった。
夢を見た。夢と言っていいのかわからないが、寝ている時に見たものなので夢だろう。
そしてあれが夢であるならば悪夢と形容されるだろう。
端的に言えば地獄そこにあり、だった。夢の中で私はあんなので何を作ろうとしていたんだろうか。まぁあれは夢だ。夢の中だけの作品だ。
けど夢の私に負けないようにしなければな。
そして下書きを開く。
今日浮かんだアイデアを書く。

収容出来ないモノ…。
違う。
無残にも研究員は目をえぐり出す…。
違う。
彼をアイルランド系アメリカ人と呼んではいけない…。
違う。
違う違う違う違う違う違う!
私は学習をしないのか?ちくしょう。
思考がループする。研究員が何度も同じ目にあう。
収容されます。 収容されます。 収容されます。 収容されます。 収容されます。
頭の中でハロウィンで迷った霊が暴れる。かぼちゃが頭の中でスープにされているようだ。きもちわるい。いやだ。こんなのゆめだ。いやだいやだいやだ。
自己嫌悪と胃の内容物がこみ上げる。変わり果てたマスタード入りのホットドッグが辺り一面に広がる。何度も繰り返し、胃の中が空っぽになっても、吐き続けた。
もう何も残っていない。
そして私の意識は奈落へとダイビングした。
 
 
 
 
[こんなのに時間をかけるのか?]
[もっと他の事に使え。]
[もっと価値のある人間になれ。]
[潔く諦めろ。]
[認めろ、お前の作ったものは何の価値もなかったんだ。]
[全て、消せ。]
[そして、消えろ。]
[否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定否定。]
[これでおしまいだ。]
 
 
 
 
 
 
 

・・・
・・・・・
・・・・・・・本当に?
お前はそれで満足なのか?
確かに悪夢は起きたら終わる。
それきりだ。
だが今回は?

[聞くな。]

「完結した」わけじゃない。

[耳をかすな。]

「覚めた」わけじゃない。

[無視しろ。]

本当は、この夢は「終わって」なんかない。

[終わった。]

よく聞け、夢は覚めるものだ。

[もう覚めた。]

お前は、まだ夢を見ている。

[お前は、もう現実を見ている。]

夢は、夢というものは、気づき、覚めるものだ。

[騙されるな。]

いいか、「夢」は「叶える」ものでもある。

[詭弁に惑わされるな。]

これはどっちの「夢」だ?

[決まっている。お前の夢は覚めたんだ。]

お前は、「夢」を見ている。
そう、夢見ているんだ。

[違う。終わった。]

終わってなんかいない。お前は夢を抱いているんだ。あの大量のアイデアはなんだ?

[お前の気の迷いだ。]

ならば何故このような夢を見る?それほどお前がコイツらを強く思っていたからだからだ。

[迷うな。すでに終了したんだ。]

そして夢を抱いているならどうする?

[諦めろ。]

叶えるんだ。

[現実を見ろ。お前ごときが何をほざく。]

夢を現実にするんだ。お前のエゴを押し付けるんだ。

[やめろ。]

そして—

[やめろと言っている!]

この「夢」を覚ませろ!

目が覚めた。
もう迷いはない。
やる事は一つだ。
私は下書きを削除する。
そして新たな下書きを作る。
そして書き連ねる。それも美麗に、醜悪に、簡潔に、複雑に。
この濃密で淡白な11日間について語ろう。
諦め切れない未練たらたらな私の話を書こう。
そして私の儚い「夢」を描こう。
出逢い、接近、そして別れ。
朝食に見るような恋愛ドラマ。
私の夢は、私しか知らない。
他の誰にも理解し得ない。
これで良いのだ。
こんな風に簡単に割り切れてしまう私を私は好きで嫌いだ。負けもするし勝ちもする。
そして1つの「夢」が覚めた。私の「夢」。しかしちょっと物足りない。
だから私は最後に無意味な文章を書き足した。

それで私が書いたやつはこれで終わり。

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