662-L1
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SCP-662の実体として関連付けられているデーズ氏へのインタビュー

マース博士: こんにちは。

執事(デーズ氏): こんにちは、マース博士。なんなりと仰せ付け下さい。

マース博士: 最初に、名前を聞いてもいいかな?

執事(デーズ氏): もちろんですとも。デーズとお呼び下さい。

マース博士: それは君の本名かい?

デーズ氏: 生まれ持っての名前では御座いません、旦那様。

マース博士: どういう事だ?どこの生まれなんだ?

デーズ氏: 残念ながら、旦那様、私も自身のフルネームは記憶に御座いませんし、また誕生地についても把握しておりません。それでも英国の生まれであると信じております。

マース博士: デーズさん、いつの生まれかは思い出せるかい?

デーズ氏: またもご期待に添えず誠に申し訳御座いません旦那様、それもまた記憶に御座いません。この時代に居るということは、間違いなく幾分か前の時代であると思います。

マース博士: おおよそどの時代か分かるかい?

デーズ氏: 度々お詫び致します旦那様、私自身に関する記憶に欠いておるのです。ご存知の通り私などは、しがない引きこもりで御座います。(デーズ氏はベルの傍らで頷き、微笑んだ)

マース博士: 君が会った人または仕えた人の中で、思い出せる一番古い呼び出しは?

デーズ氏: 馬車の時代、自転車を富裕な方々がお使いになり始めた頃に御座います旦那様。私が正確に思い出せる記憶ではそれが最古でして。不完全な記憶に御座いますね、旦那様。(再度微笑む)

マース博士: 以後は様付けしなくてもいいよ、ちょっと煩わしくなって来た。

デーズ氏: かしこまりました。

マース博士: これらのようなことを思い出せない理由は何だと考えるんだい?

デーズ氏: それは、何と申し上げたら…(デーズ氏は椅子に体重を預け姿勢を直すまでの間、少し不快そうに見える)

マース博士: 言えるかい、それとも駄目?

デーズ氏: 場合によりますれば、ええ、恐らくは申し上げられず、なれど再び、お許し願いますと、記憶に御座いません。

マース博士: 宜しい。続けようか、提供する物品はどこから持ち出して来るんだい?

デーズ氏: はい、見ての通り、その…(デーズ氏の顔はあたかも多大な苦痛にあるかの如く歪んだが、すぐにくつろいだ表情を取り戻した)いずれも記憶に御座いません。

マース博士: 何故こういった類いの質問をするとたじろぐんだ?

デーズ氏: 存じ上げません。

マース博士: 気にしないでくれ、そのうち分かるさ。さて、ひとつ頼みがあるんだが。

デーズ氏: かしこまりました、お手伝い出来る事ならば何なりと。

マース博士: アイスティーを一杯。グラスの選定は君に任せる。

デーズ氏: アイスティーにする茶葉の種類に何かご希望は御座いますか?

マース博士: 任せるよ。

デーズ氏: かしこまりました。

デーズ氏は立ち上がりインタビュー室のドアへ向けて歩きノブを回した。鍵が閉まっている事に気付くと、マース博士へ振り返り微笑んだ。

マース博士: 何か問題があった様子だね?

デーズ氏: ご希望に添うためにはこの場を立ち去らねばなりません。

マース博士: そうすれば?

デーズ氏: (再度明らかに不快そうに)度が過ぎます、マース博士。

マース博士: オーケー。エージェント・グレイヴス(Graves)、ドアを開けてくれ。

デーズ氏は退室した。カメラ及びエージェント・グレイヴスの監視の下、廊下を進んで行った。別のドアの所で一旦立ち止まると、首を横に振り、カメラを見上げエージェント・グレイヴスを見つめた。それから廊下を駆け抜け角を曲がった。エージェント・グレイヴスは予め言われていた通り、デーズ氏を追跡することなく、インタビュー室のドアを警備し続けた。

監視カメラの監視下で、デーズ氏は迅速に棟内の廊下を通り過ぎ、恐らくは出口、又は監視エリア外の場所を探しながら進み続けた。最終的に彼は通路2Dの途中で止まった。隠されている2台を含めて、この場所に設置されていた3台の監視カメラは全て故障していた。丁度三分後、カメラの機能が回復すると、アイスティーの入ったグラスが二つ載ったトレイを持ったデーズ氏が同じ場所に立っているのが映っていた。彼は速やかに元来た道を辿りインタビュー室へ戻って来た。

マース博士: ああ、やっと戻ったね。そろそろ心配していたよ。

デーズ氏: 遅くなりました事をお詫び致します、面倒事がありまして。しかしご心配なく、ご所望のお茶をお持ち致しました。ご賞味下さい。

マース博士: 何てお茶だい?

デーズ氏: 南部のスウィートティー(訳注:アメリカ南部でよく飲まれる、砂糖をたくさん入れた冷たい紅茶)に御座います。

デーズ氏はグラスを一つマース博士の前に置き、机の反対側に位置する椅子に戻った。マース博士は躊躇いがちに紅茶の匂いを嗅いでいたが、微笑み、一口飲んだ。

マース博士: 美味しいよデーズさん。もしかすると、今まで飲んだスウィートティーの中で実際一番かもしれない!美味い!君が作ったの?

デーズ氏: マース博士、失望させたくありませんが記憶に御座いません。私は任ぜられた通り実行致しました、しかし…ああ!もはや私の心は過去から移ろい変わってしまったのです!

マース博士: 席を立ったのはたったの(時計を見て)およそ10分だよデーズさん。10分間の記憶も思い出せないだなんて、君の記憶力はそんなに酷いのかい?

デーズ氏: 道中も記憶に御座います、お茶を携え戻る事もです、しかしそれで全てです。

マース博士: じゃあどうやって、じゃなきゃどこからお茶を手に入れたの?

デーズ氏: 残念ながらさっぱり。(再び明らかに不快そうに)

マース博士: 宜しい。また頼みがあるんだ。

デーズ氏: 仰せのままに。

マース博士: 金塊が欲しいんだ。

デーズ氏: 純度は如何程に御座いますか?

マース博士: 出来れば99.98パーセントで。

デーズ氏: 可能と思われます、出来るかやってみましょう。

マース博士: 今回は君の外出時間が短くなるよう、外のホールのカメラを切って、エージェント・グレイヴスにもインタビュー室で私と一緒に待っていて貰うよ。

デーズ氏: 大変感謝致します、行っても宜しいでしょうか?

マース博士: ああ。

デーズ氏が廊下へ退出した。廊下のカメラはマース博士が提案した通りにはオフになっていなかった。彼はちょっと思案すると一番近いカメラを見上げ頭を振り、前の様に棟内の廊下を彷徨い始めた。通路2Bで彼は立ち止まり、そして一度に見えている物も隠されている物も通路内の監視カメラは全て故障した。丁度10分37秒後、カメラの機能は復旧し、またも片手に金塊を携えているデーズ氏が同じ位置にいるのを映すばかりだった。彼はすぐさまインタビュー室へと戻った。

マース博士: 前よりも時間がかかったね。何か理由が?

デーズ氏: はい、ホールのカメラが作動したままの様でして、ですのでふさわしい道を再度探しました。遅れまして申し訳御座いません。それと、ご所望の純度の金塊は手に入りませんでしたが、こちらに純度99.14パーセントの物が御座います。

マース博士: 大変見事だ。君は分かっているだろうが、試験することになるよ。

デーズ氏: 私はあなたが何をなさるのか把握しておりません。されどそのお考えは理に適っていると考えます。他に何か御用は御座いますか、マース博士?

マース博士: ああ、次の仕事なんだが、青い1963年のコルべット・コンバーチブルが欲しいんだ。

デーズ氏: 申し訳御座いません、それは不可能です。

マース博士: どうして?ホント欲しいのに。

デーズ氏: 繰り返しますが、私の方法では、どうして私が頼まれたものを入手できないと知ったのか説明できないのです。

マース博士: それでどんな方法があるんだい?

デーズ氏: 記憶に御座いません。

マース博士: 宜しい、じゃあファルベルジェのエッグがどれでもいいから欲しいんだ。

デーズ氏: はあ…その…遺憾ながら…申し上げますと、それもまた不可能です。

マース博士: それで、何故かは言えない、と考えていいのかい?

デーズ氏: その通りに御座います。

マース博士: キャビアはどうかな?ブランドや種類は問わないよ。

デーズ氏: 可能です。

デーズ氏は今一度インタビュー室の外の廊下に進み出た。この時、デーズ氏がホールに現れた事を確認した後、カメラはオフになっていた。一分後にカメラは再度オンになったが、デーズ氏はこの時点で既にインタビュー室に戻っていた。

マース博士: 随分早かったねデーズさん。32秒しかかかってないよ。それにキャビアも美味しい。

デーズ氏: そのお言葉が聞けて嬉しく思います。

マース博士: 最後にもう一ついいかなデーズさん。

デーズ氏: 仰せのままに。

マース博士: オサマ・ビン・ラディンの暗殺を頼みたい。

デーズ氏: 恐れ多くもそれは現時点では不可能です、マース博士。対象は精密に抜け目なく厳重に防護されているのでは?

マース博士: 宜しい。部屋の向こうに居る男性を暗殺して貰えるかな?

デーズ氏: 承りました。

デーズ氏はまたも廊下へ進み出た。確認の後、カメラは瞬間的にオフにされた。オンになった時、隣室のインタビュー室のドアが閉じられていることを確認した。そちらのインタビュー室にあるカメラは、デーズ氏が大型のバックナイフを片腕の陰に隠しつつ携え入室して来る様子を映していた。デーズ氏は部屋に居たD-クラス人員に近付くと、ナイフによる一瞬の動作でその喉を巧みに切り裂いた。デーズ氏はD-クラス人員が死に行く様子を見届けると、取っ組み合っていた手を払いのけた。再度そのD-クラス人員が死んでいるのを確認すると、デーズ氏は元のインタビュー室へと戻った。

マース博士: 果たしたかい?

デーズ氏: 確かに。証拠としてこちらに使用したナイフを。

マース博士: 何故こっちは出来てさっきのは出来なかったんだい?

デーズ氏: 私の察知する事以外は言えませぬが、単に先程の者は不可能であり、他の者はそうでなかったという事で御座います。

マース博士: つまり君は、私の名字や肩書きだとか、あるいは特定の作業が可能かどうかを、君自身がどうやって知ったか分からないという事だね。

デーズ氏: その通りに御座います。

マース博士: 宜しい。私達については今日のところはもうお終いだろう、でも、もう一つ頼まれてくれないかな。エージェント・グレイヴスから君への質問がいくつか、君がもう私に答えた事も含まれるだろうが、新しい質問もある。彼が容赦なく答えを求めて来る時は私が助言しよう。

デーズ氏: 最善を尽くします。

マース博士: 見ているよ。

マース博士はこの時点でデーズ氏をエージェント・グレイヴスに任せ、グレイヴスは執事に対して様々な責め苦と言葉を使い分けつつ22時間に渡り拷問した。拷問の最後に、デーズ氏は下腹部からの重要臓器の摘出により絶命した。エージェント・グレイヴスの最善の努力にも関わらず、デーズ氏がどこへ行き、如何にして去り、あるいは彼が物事を成し遂げる手法や、また彼は作業が可能か否かを如何にして判別するか、その情報をどう集めたか、といった事々に関する詳細は分からなかった。

通常のものからあらゆる手法まで用いた検屍解剖により死体が検証されたにもかかわらず、デーズ氏には特にこれといった疾患や体調不良は無く、拷問中の死により被ったであろうトラウマを除けば最適な体調だと記録された。胃の内容物には少量のスウィートティーと平常の胃酸があるのみだった。

デーズ氏の遺体は明かりで照らされた手術台の上に残されており、カメラは全てオフになっていた。全員が部屋から退出しその後戻った時にはデーズ氏の遺体は跡形も無く、使用された器具に付着した血液の他、遺体から摘出された臓器が物理的な痕跡として残されていた。

更に、デーズ氏を召喚するベルを鳴らすと三分後に彼の姿が現れた。彼は怪我をした様子も無く、一般的な執事が着るような拵えの良い服を身に纏った姿を見せた。予想通り、彼は自分がどうして生きているのかは記憶に無いと答えた。彼はマース博士からマッサージのオーダーを受けると、大変満足の行く成果を成し、マース博士は「今まで受けた中でマジ最高の揉みほぐし、背中の痛みがかき消えた。」との事だった。

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