補遺1022-JP-02: 20██年8月、研究チーム1022-JP-αはSCP-1022-JP内部から採取された水にタイプ3N幻像実体の残滓と思われる霊的異常存在が含まれていることを確認しました(この実体はSCP-1022-JPの操縦者であったと見られ、現在SCP-1022-JP-Aに指定されています)。そこで霊的オブジェクト専門の研究チーム“李鉄拐”の協力の下SCP-1022-JPを精査した結果、いくつかの機器に[削除済]と類似するシステムが利用されていることが判明しました。その後の研究の末、いくつかの既知の手法を用いて情報端末を起動させることに成功しました。以下は端末に記録されていた文章の内容です。
浪潮16年波月13日
ついに出航の日がやってきた。我が国初の深陸調査チームのリーダーに任命されたことは、私にとって大変な名誉である。本揚陸艇は太平洋を離れ日本陸嶺を越えた後、中国大陸深部の調査を行うことになっている。長い航陸になるだろうが、臆しはしない。この調査によって西太平洋連邦共和国の陸上学は多大な進歩を遂げるであろう。何より、調査に同行する研究員2人は沸騰せんばかりの熱意に滾っている。この調査は、必ず成功するに違いない。 - 竜宮 次浪
14日
こんろん2200は西日本深海長谷に到達した。ここで艇体の最終点検を行い、明日はいよいよ中国大陸に向かう。ここから先は人類が未だ踏み行ったことのない深陸である。
15日
大陸深部へ向かう途中で、陸棲ヒト型実存生物の大規模なコロニーを発見した。日本陸嶺にある巨大コロニーと同様に泥のようなものを固めて作った大型の巣が多数存在しており、その内部に更に多数の実存生物が棲息しているようだ。浅海調査員はもうしばらくの間このコロニーの調査を行いたいと申し出てきた。私もその意見を支持する。ここは実に興味深い場所だ。
16日
コロニー周辺の気質調査を行った結果、数種類の珍しい化学物質を採取することに成功した。由来は分からないが、おそらく何らかの地質学的活動の産物であろうと思う。赤潮調査員の考えでは、このコロニーは海中で言う熱水噴出孔のようなものの上に作られたもので、この化学物質はそこから噴き出たものだ。
また、浅海調査員の提案でヒト型実存生物を1頭捕獲することにした。あまり大きすぎると格納庫に入りきらないだろうから、幼生と思われる小さな個体を捕獲することにする。
17日
コロニーを離れ、更なる深部を目指す。残念ながら捕獲した実存生物は死亡してしまったが、死体を調査するだけでも大きな成果が得られることを期待する。本国に持ち帰るのが楽しみだ。
18日
ラジオによると、会合市では土砂降りの雪だそうだ。帰ったらまず掃除から始めなくてはならないな。こちらでもグラウンドスノーが観測された。雪にもグラウンドスノーのように水溶性があれば楽なのだが。
19日
どうやらラジオの届く範囲を超えたようだ。今のところ、特に新たな成果は得られていない。航行速度を上げることにする。
20日
ヒト型生物の小規模なコロニーの調査を行っていたところ、生物の1頭が非実体化中の本艇を明らかに視認している様子を見せた。実存生物は非実体存在を認識することができないというのが科学海の定説であったが、どうやら例外もあるらしい。我々を認識したヒト型生物は混乱と恐怖の様子を示した後、慌てて逃げ去っていった。かわいそうなことをしてしまったな。
22日
本艇は敵性ヒト型実存生物から攻撃を受けている。現在全速力で撤退を図っているところだ。彼らは“強制実体化装置”ともいうべき何かを用いて、本艇を実存的干渉を受ける状態に置いた。実体化は未だ解除されていない。我々は陸棲生物に人類を傷つける力は無いと信じ込んでいた。それが世海の常識だった。だが、それは誤りだったのだ。彼らは我々と同等の力を持った存在だ。人類を脅かしうる存在なのだ。我々はなんとしてもこのことを本国に知らせなければならない。
22日
先ほどから本国との通信を試みているが、通信装置が機能しない。長い間海から離れていたせいかもしれない。
26日
そろそろ日本海に到着する頃だ。だが、不気味なことに推進装置が安定を欠いてきている。これほど長い間実体化を保つことは想定外だったのだから無理もないが。なんにせよ、海まで保ってくれることを祈るしかない。
記録されている日付と目撃情報から推定されるSCP-1022-JPの飛行速度から考えて、SCP-1022-JPが“攻撃”を受けたのは青海省周辺であると予想されています。この周辺ではGOI-███の活動が確認されており、現在関連性の調査が進められています。
また、本文書が示唆する太平洋の異常存在について、81地域ブロック所属の機動部隊-み3“ルルイエ使節団”主導で広範囲にわたる海中の調査を行うことが決定されました。