SCP-CN-830-J
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アイテム番号: SCP-CN-830-J

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-CN-830-Jはサイト-CN-91の男子トイレの個室に閉じ込められており、その異常性がサイト職員に害をなすことは実質的に不可能なため、現時点ではSCP-CN-830-Jをトイレに封じ込める以外の収容措置は一切必要ありません。SCP-CN-830-Jに対する実験は、少なくとも1名のレベル3以上の職員の許可が必要となります。綿密に実験を計画していない限り、対象には要求されたものを提供しないでください。

201█/█/██補足: サイト-CN-91のトイレの混雑解消のため、SCP-CN-830-Jの位置する男子トイレの異常性のない個室はサイト職員に開放されています。当トイレを使用するサイト職員は、対象の望んだ形で排泄器官の汚れを清拭するためのものを提供すべきではないことに注意してください。また、対象と会話する場合には、対象の処遇を理由に笑ったり、揶揄したりしないでください。対象の極めて脆弱なメンタルは崩壊しかねません。

201█/█/██補足: インシデント830-J-1後、対象の要求は変化しましたが、潜在的な危険性を鑑み対象の要求は満たされません。

説明: SCP-CN-830-Jは、サイト-CN-91地下1階研究区画Cブロックに位置する男子トイレの、3番目の個室に存在する非実体です。複数の職員や清掃スタッフが「男子トイレには個室に閉じこもっているやかましいオバケがいる」ことを報告したことで対象は発見されましたが、対象がいつからそこに出現したのかはまだ判明していません。

未知の原因により、SCP-CN-830-Jはトイレの個室から離れることができませんが、人間から排泄後の汚れを清拭するための紙類を焼却することにより提供されれば、その場を離れることができると主張しています1

SCP-CN-830-Jが位置するトイレの個室は、いかなる手段を持ってしても開放することができません。上下の隙間から個室内をカメラで撮影する試みは、対象の激しい反応をもたらします。しかし、撮影された映像の中では、個室内の設備はすべて原位置のままであり、画面には原因不明のひずみやぼやけが観察されるものの、いかなる異常も確認されませんでした。また、個室から離れないものの、対象には個室のドアを激しく叩いたり、相当大きい声量で叫ぶなどの挙動をとる能力が備わっているようです。これらの挙動は、周囲にいる人間に紙類を提供してもらい、早めに個室から離れるためのものだと考えられています2

人間が当トイレに進入した場合、対象は成人男性のような切迫した声で進入者に声をかけ、「トイレの紙がない」などといった日常生活では時折発生する状況を偽った会話によって、十分の紙類を要求してきます。しかし対象は通常、紙類を焼却することを希望するため、すぐに見破られることが多いです。要求が断られると、対象は前述の現象を発生させたり、または言葉で進入者を恫喝したりしますが、対象のメンタル面は極めて脆弱であると多くの実験で確認されており、恫喝行為が数分間続いても相手が折れなかった場合、その態度は一転し懇願するようになり、また泣き出すこともあります。

インシデント830-J-1以降、SCP-CN-830-Jが紙類を要求することはなくなりましたが、要求する内容以外は変化が確認されませんでした。詳しくは補遺830-J-2を参照してください。

実験記録

実験1
提供される物品3: 無し、会話のみ。
結果: SCP-CN-830-Jはしばらくの間、実験担当者を恫喝したが、すぐメンタルが崩壊し、自身の置かれる状況と長時間しゃがんだことによって痺れた足について泣きながら訴えた。

実験2
提供される物品: 紙やすり #80
結果: SCP-CN-830-Jはひどく憤り、個室のドアを激しく叩きながら怒鳴った。しばらくすると、怒鳴る声が段々と弱まった。それからの1日間、対象はいかなる進入者にも反応を示さなかった。

実験3
提供される物品: 2枚重ねのティッシュペーパーから剥がした薄い紙1枚
結果: SCP-CN-830-Jはしばらくの間、言い淀むような反応を示した。数分間の沈黙の後、対象は急に「畜生![罵倒削除]手についてしまった![罵倒削除]の紙なんざ無いも同然じゃねえか!」と叫びだした。

実験4
提供される物品: 新品のA4用紙
結果: SCP-CN-830-Jは「ふー、これは使えるかもな……やっべえ手が切られた。やっぱいいわ」と発言。

実験5
提供される物品: 面積、厚さともに十分なティッシュペーパー。ただし焼却するのではなく、対象に自らそれを手に取るようにと要求した。
結果: SCP-CN-830-Jは実験担当者との約1時間に及ぶ口論の末に妥協したが、実験担当者に「なるべくティッシュを個室下の隙間に近づけてほしい」と希望した。約3分後、隙間から半透明の手が突き出され、非常に骨を折る様子で紙を取った4。しかし、SCP-CN-830-Jはすぐさま「[罵倒削除]!便器に落としてしまった!」と叫んだ。

実験6
提供される物品: 伝統的には死者を弔う際に使用する、特定の形に切り抜いた黄色の紙。5
結果: SCP-CN-830-Jは異常なほどに不満を示し、「こんなことしてユーモアとでも思ってんのか?ああ?」と怒鳴った。

SCP-CN-830-Jに対するインタビューログ:

インタビュア: エージェント・アスリエル

<記録開始>

SCP-CN-830-J: 誰か?おーい、誰かいんのか?

エージェント・アスリエル: こんにちは、私はエージェント・アスリ……

SCP-CN-830-J: (切迫した声で遮る)そんなことどうだっていい。紙が必要なんだ、一枚でもいい。紙やすりとかA4用紙とかじゃなく、トイレで使うようなものをくれ。もう長い間こんなところでしゃがみっぱなしなんだ、もう足がしびれてしょうがねえ。一枚だけでもいい、とにかく紙をくれ。俺を楽にさせてくれ。

エージェント・アスリエル: 恐れ入りますが、貴方はどのような目的で紙を要求するのですか?

SCP-CN-830-J: バカなことを言うんじゃねえ!てめえだってクソする時にゃ使うだろうが!

トイレ待ちの職員: そんなこと言ったって、旦那はユーレイじゃねえか。

隣の個室を使用中の職員: 紙を切らしたせいで収容違反で死んだってのに、なんでまだこんなこと気にすんのかよ。

トイレ待ちの職員: いやお前は黙ってクソでもしろ。俺は漏れそうなんだからよ。このままじゃトイレのオバケの仲間入りだぞ?

エージェント・アスリエル: 収容違反?待ってください、対象は貴方達に自分のことを話していたのですか?

隣の個室を使用中の職員: そうなんだよ。この前の夜大をしてた時、ちょうどこっちも紙切らしててさあ。あいつが紙をくれとかキャーキャーうるさかったけど、俺も持ってなかったからよ……その流れで、まあ暇も暇だし、ちょっとお話してな。

SCP-CN-830-J: おい待て、インタビューの対象は俺のはずだ。

エージェント・アスリエル: 続けてください。

隣の個室を使用中の職員: なにも「昔はお前のような財団職員だったのだが……ある日の夜トイレに入ったら、紙を切らしてしまってな」だったっけ。

SCP-CN-830-J: いや待て!お前に話したのは境遇が同じからで、言いふらしてほしいというわけじゃねえぞ!

隣の個室を使用中の職員: それでね、あいつが所持品を確認してたら、まだ電子化されてない、整理が終わったばかりの実験データと、休暇の申請書類と、あと本質的には紙やすりであるSCP-CN-██の実例しかなかったわけ。

トイレ待ちの職員: 厚さを考えると、俺だったら紙やすりを使うぜ。財団用紙の厚さは若干ホラーなんだからよ。しかも紙の縁があんなに鋭くもなると……うええええ。

エージェント・アスリエル: アノマリーで拭くのはどうかと思いますが……

もう一人のトイレ待ちの職員: パンツを犠牲にする選択肢だってあるのだろう?まさかパンツも穿いてな……

SCP-CN-830-J: 事実無根のことをしゃべるんじゃねえ!風評被害だぞ!!

以降、トイレにいる職員は未知の理由により、トイレの紙を切らしたらどうするかという問題について口論になった。SCP-CN-830-Jは何回も話題の中断を試みたが、いずれも失敗に終わったため、メンタルが崩壊しインタビューの続行を拒否した。

インシデント830-J-1: 20██/█/██、サイト-CN-██からサイト-CN-91に新しく転勤した研究員が、SCP-CN-830-Jを紙を切らして個室に閉じ込められた一般職員と勘違いしました。当研究員は、対象の要求を疑問に思ったため6、ティッシュペーパーを1枚だけ、個室ドア下の隙間付近に置きました。その後、実験のミスにより引き起こされたボヤにより、ティッシュペーパーは意外にも引火されました。しかし、SCP-CN-830-Jの要求が満たされたものの、不明の理由により対象のこれ以上の行動は観測されませんでした。

補遺830-J-2: 前述のボヤに対処した研究員は、SCP-CN-830-Jの存在するトイレから下記の物音がしたと報告しています。

SCP-CN-830-J: おおお!ついに!

(衣服がこすれる音、チャックを閉める音)

SCP-CN-830-J: ふー、足がしびれRU!

(トイレを流す音)

(個室のドアロックを解錠する音)

(個室のドアロックを解錠する音)

SCP-CN-830-J: ん?

(個室のドアロックを強く解錠する音)

(個室のドアロックをより強く解錠する音)

(個室のドアを強く引っ張る音)

SCP-CN-830-J: クソ!ドアが開かねえ!!

当インシデント以降、SCP-CN-830-Jの要求は「引っかかった個室のドアを開けること」に変化しました。しかし、当個室はいかなる手段をもってしても開放することができないため、SCP-CN-830-Jに道具類を提供することでしかドアは開放しないと推測されています。

████研究員のシミュレーションによると、普通の研究員が自力で個室のドアを取り外すためには、バールやハイドロプライヤーなどの金属製道具が必要です。これらの道具は明らかに焼却での提供は難しいため、対象の収容違反の可能性は極めて低いと考えられています。現在、研究区画Cブロックの職員は対象を完全に無視し、対象が存在するトイレの他の個室を通常のトイレとして使用することが推奨されています。

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