ぴったりの最期
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財団は毎日、葬式を営んでいるわけではない。まれに、高潔なエージェント、または職員は、ささやかな式典とともに、サイト19に埋められる。だが、しょっちゅうではない。彼らの家族は身の回り品や、慰めの手紙を受け取る事は許されるが、それでも、遺体は決して渡さない。たいてい、それは望まれないだろう。また、ことD-クラスにおいては、月末の終了プロシージャーしかされない。

こんなに人が来るなんて前例のないことだった。上席スタッフの葬儀でも、アルト・H・クレフ博士の葬儀だとしても。サイトの保安維持に必要でない者は全員そこにいた。思うに、何人かは、参列しなければクレフに祟られると恐れて、そこに居るのだろう。弔辞はありきたりなの物で、シニアスタッフの一部や、O5の数人から読まれた。昔の任務を懐かしんだり、故人の業績を褒めちぎる、みたいなことだった。大部分はいい格好するためにだろう。だって、クレフみたいな男に心から弔い述べるなんて出来なかろうよ。

だから私は、皆がみなしてドライアイなのが、とりわけ不思議だと思わなかった。クレフは人としてよりも、職員として貴重であった。彼は危険で、予測できない。当然正気の沙汰でなく、数百万の損害賠償を引き起こしては、膨大な人員の死を引き起こしつつも、辛うじて、いくつかのXKイベントを回避させていた。しかし、何件もの回収成功に貢献してきたのも、彼であったし、いくつかの危機的な解雇デコミッションも成功させてきたのだから、控えめに言っても、何かの価値はあった。確かに、死の瀬戸際でのユーモアに富んだ彼のジョークを、もう聞くことは出来ないといったことや、彼の正体不明性や、その筋の通っぷりを、悲しむ者がいるだろうことは認めるが、大抵はアイツの事を個人的に好きじゃなかった。クレフの葬式で、故人の紹介は、”月間優秀職員"の額面が紹介されるのと、何ら変わりなかった。

しかしそれでも、全員総立ちする見どころがあった。財団列伝にクレフを並び連ねさせるための、最後の儀式のことだった。モニターに移されている、シルエットのO5-█は、弔辞を述べ終わった後、咳払いして、発表した。

「クレフ博士の最期の願いに従いまして、彼のご遺体は、SCP-1543-Jによって発射することに致しましょう。」

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