鳴り響く鐘の音
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今、カフェエリアは異様な空気に包まれていた。
屈強なる戦士たちが集い、その時を待ち・・・
その中心には、メイド、ドレス姿の女、サンタ服の少女が資料片手に真剣な顔をしながら慎重に話し合いを進めている・・・
・・・ってかなり異様な光景ですよねコレ。
「どしたの空ちゃん?ボーっとして」
余計な思考が混じったのを察したサンタ服の少女・・・もといエージェント餅月が顔を覗き込んでくる・・・下から。
「いえ、別に・・・それから前線部隊編成はこのような形で考えているのですが・・・」
んー・・・と唸りつつ、私が考えた部隊編成表に目を通したエージェント餅月は・・・
「これじゃちょっとバランス悪いかなー」
ちょっと変えていい?と聞いてきた彼女にそのまま部隊編成を任せることに・・・私は本職ではないので分からないこともあるでしょうし・・・
「それで、どこまで使っていいの?」
「病院送りまでで済ませるためにゴム弾を使用してください。・・・対人制圧用兵装は全て使用可です。ただしあまり派手にしない様に」
了解、と答えながら武装のチェックに戻った前原博士。
私は手元の端末で最新情報を収集しながらも、周囲からの質問に答え、情報の収集、中継の要であるバックアップチームの準備に忙しく動き回っている・・・
まるで大がかりな作戦の前のように・・・

何故このような状況になっているのかと問われれば・・・


数十分前のこと。
ある意味で静寂に包まれていたカフェエリアに、素敵なBGMが流れ、私は慌てて端末を見る。
そこにはある意味で今一番かかってきてほしくない番号からの着信が表示されていた。
流石に出ないわけにもいかないので・・・
「はい、長夜です」
「さて、何が言いたいかは分かっているね?」
いつも通りの重苦しい声・・・そう、このサイト-8181の長である。
「粛清活動の事なら、そちらとの取り決め通り行っています」
「うむ、それは分かっているよ」
「では問題ないはずです」
「ああ、そうだな・・・と言うと思ってるのかな?」
残念ながらサラッと流して・・・というわけにはいかないようだ。
「とはいえ、今日は忘年会だ。無礼講な場ではある」
おや、小言だけでセーフ・・・?
「だが、物事には限度がある」
そうもいかず。
「・・・標的が逃げるのはいつもの事ですし、想定の範囲内であるべきでは?」
「限度がある、と今言ったはずだが?」
「・・・逃げてる最中に起こした騒動までは責任を負いかねます」
「原因は君だろう?」
・・・なかなか面倒な事態に・・・おのれエージェント差前!
「このバカ騒ぎを収めるように努力したまえ、以上だ」
あれ、なんか行けそうな雰囲気。
「・・・失礼ながら、この先の会話は録音させていただきます」
「構わんよ」
「では確認します、この騒ぎを収拾出来るように行動すればよろしいのですね?」
「そうだ」
「手段の範疇は?」
「君との取り決め通りだ」
「粛清行動はカフェエリア内のみ?」
「そうだ」
「捕縛までは許可していただきたいのですが」
「・・・それで収まるのかね?」
「はい。」
「・・・許可しよう」
「ありがとうございます」

そこからはかなり速足で事をすすめた。
まずは機動部隊な-1224"メイドさんのお手伝い"として行動していた面々に電子掲示板を通してカフェエリア集合するように指示を出しました。
そして、バラバラに動いていた部隊を再編制しようとしていたところにエージェント餅月と前原博士がやってきたので、三人で分担して作業を進め・・・


今に至る・・・というわけです。

「編成できたよー」
「チェックと装備の配布終わったわよ」
二人からの報告を受けている間に、周りの戦士たちが整列する。
男女合わせて総勢40名・・・とはいえ、その戦士たちの中にも酒の入ってる方もそれなりに居ますが・・・
「5人の6チーム編成で、ぼくと愛で3チームずつってことにしたから」
「わかりました、バックアップAはエージェント餅月側、Bは前原博士側のサポートについてください」
「かなりの混成チームね・・・大丈夫?」
横から編成表を覗きこんだ前原博士が尋ねる。
「もとからかなり混成ぎみだったし、そのまま活かしたんだけど・・・」
「この様な場ですから、普段から顔なじみでない方がいいかと思いましたので」
と、一応な理由を答えたのですが・・・
「ふーん・・・で、実際のところは?」
・・・前原博士には見抜かれていた様子・・・
「相手はエージェント差前と阿藤博士ですから、何をするか分かりません。通常の部隊編成よりかは混成の方が対応範囲が広がるかと」
なるほどね、と言いながら前原博士は自分の部隊の下へ。
「でもこれだけいると・・・報酬どうなるの?」
「それは今から言いますよ」
あ、そうなんだ。と言いながらエージェント餅月も自分の部隊の下へ。
そして、私は壇上に上がった・・・

「ここに集ってくれた皆さん。そしてここに集まっていなくても、私たちの「目」として電子掲示板に情報を提供してくれている皆さん。私は今、とても感謝しています」
私はそこで一度言葉を切り、戦士の顔を見渡す。そこには、赤ら顔ではあっても確かな光が灯った目があった。
「ですが、私たちはいまだに彼を・・・いえ、彼らを捕まえることが出来ていません。
もちろんこれは余興・・・と言ってもいいものです、真剣にやるものではない・・・と思ってる方も居るでしょう。
しかし、今ここにお集まりの戦士の皆さんは・・・本気で捕まえようとしている、そう信じています」
戦士たちの目の光が燃える。それらは私怨混じりのものもある、だがそれでも確かな光を放った。
「そしてその本気に私も答えるつもりです・・・成功した場合、今ここに居る部隊全員に食堂、カフェの3割引券を配布します。この成功は、3名全員を確保することです。それ以外に成功はありません」
戦士たちの目の光が強くなる。実働部隊にとって豪華な食事というものはなかなかに魅力的なのだ。
「何か質問はありますか?」
私は戦士たちを見渡し・・・「はい!」手を挙げているエージェント餅月を見た。
「ひきわたした時の報酬はー?」
「そちらもちゃんとお渡しします・・・ですが、それが原因でチーム内で諍いを起こさないでくださいね?・・・他には?」
「引き渡す前に個人的に殴るのはありなの?」
「出来ればすぐに私に引き渡して欲しいところですが・・・そうですね、捕縛中に暴れることはあるでしょうから、その時に鎮圧目的でする分は気にしませんよ」
私の分は残しておいてくださいね、と付け加えて前原博士の質問に答え・・・周りを見渡す・・・どうやら他は大丈夫なようだ。
「後はエージェント餅月、前原博士及び各部隊長にお任せします。それでは皆さんの健闘を祈ります」
そう言って一礼し、私は高らかに宣言した。

「オペレーション"Turkey Hunt!"開始します!!」

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