Are We Cute Yet?
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「アイドル活動をいたしましょう!」

昼下がり、とある研究室にて。
机を勢いよく叩きながら、御先稲荷は立ちあがった。
同室の同机で昼食を取っていた三人は驚いたような表情を貼りつけて彼女を見たが、御先は三人の顔を見つめてはうんうんと頷くばかり。
仕方ないと言わんばかりに、この中では最も常識人と言える朝夕まづめが控えめに手を挙げた。

「あの、稲荷さん。アイドル活動とは?」
「よくぞ聞いてくださいましたまづめさん!今から二カ月後、財団にてこのような催しが行われるのです」

御先は巫女服の袖から折りたたまれた一枚の紙を取り出すと、全員が見渡せるような位置に広げる。
そこには大きく、「財団夏祭り」の文字が書かれていた。

「財団夏祭り、興味深いね。財団では毎年このような事を行っているのかい?」
「今回が初……だと思います。私の知る限りでは」

誰に向かってか投げかけられた茅野きさらの質問に、鳴蝉時雨が無機質な声で答える。
朝夕も夏祭りの存在は認知していなかったようで、「財団夏祭り」の資料に興味深そうに目を踊らせていた。
全員が目を通したタイミングを見計らい、御先は説明を続ける。

「この財団夏祭りなんですが、基本的にオブジェクトの収容違反など余程の事がない限りは、何をしても自由なんだそうです。そしてこの舞台となる、サイト-8181には演芸ステージが用意されているのです。つまり」

御先は数秒のタメを作った後、三人の顔を見て告げた。

「その一夜だけ、私たちアイドルに―――なってみませんか?」
「私帰りますね」

いち早く危険を察知したのか、御先が全てを言いきる前に鳴蝉は既にドアに手をかけていた。
しかしそのドアは鳴蝉の予想を越え、彼女がドアノブに力を入れる前に開いた。

「え……」
「逃げるのはめ、だよ。時雨ちゃん☆」

驚く鳴蝉を抱きかかえるようにして、何者かが室内に入ってくる。
その様子を満足げに見つめている御先の横で、鳴蝉を除いた二人はその人物の外見に圧倒されていた。
ウェーブがかったツインテールに、デフォルメされた悪魔の羽がついたワンピースを身に纏ったその姿は正に、

『……コスプレ?』
「そこはアイドルって言えよ☆殴るぞゴラ☆」

二人の言葉に笑顔で青筋を立て、拳を構える後醍醐勾であったが、「いけないいけない」とすぐに営業スマイルへと表情を一変させた。

「勾さん。ナイスタイミングです」
「稲荷ちゃん、ちゃんと理由から説明しないとダメだよ」

鳴蝉をもといた席に座らせながら、頬を膨らませて後醍醐は御先に抗議した。
御先はそれに軽く謝罪をしながら、改めて茅野の隣に座った後醍醐を含めた4人に向き直る。

「誤解をまず解いておきたいのですが、私は財団夏祭りで演芸ブースがあるからアイドル活動をしようと言っているわけではない事を理解して欲しいと思っています」
「では何故かな。余程の理由がない限り僕達はその意見には賛同できないよ」

茅野の意見にうんうんと頷く朝夕と鳴蝉。
そんな三人に御先は神妙な面持ちで問いかけた。

「皆さんは……最近、この財団で女性として扱われる事が少なくなってきたと……そう思う事はありませんか?」
『……?』

質問の意図を理解できず首をかしげる茅野達。しかし一人、後醍醐はにこにこと笑いながら御先の話を聞いている。

「考えてみてください。私たちはこの財団において、一職員として扱われる事は多々あると思います。しかし、一女性として扱われる事は非常に少ない。例えば……きさらさん」
「ぼ、僕かい?」
「ええ。貴方、確か前に言っていましたよね?『確かに僕はいつまでも少年のようでありたいとは言ったけれど、女性扱いをして欲しくないわけじゃない』って」

御先にそう問われた瞬間、茅野の脳内には一つの記憶が蘇った。
それは、とある昼下がり、オブジェクトの"鑑定"のためにSCP-███-JPの収容室へと彼女が赴いた時。
ドアを開けようとする一歩手前で、収容室の中の男性職員二人が話しているのが聞こえてきたのだ。

「茅野博士って……"鑑定"の時だけは本当に……なんつーか、美人だよな」
「"鑑定"の時だけはな……普段はなんかこう……トラブルメーカーっていうか……」
「なんかする度に財団の備品破壊したりしてるからな……正直怖い」
「実はあの人、人型オブジェクトなんじゃないかって常々思ってるわ」

人からの批評はあまり気にした事のない茅野であったが、「怖い」と言われたのは彼女なりに少しショックだったのかもしれない。
自分が芸術品を作成しようとするたびに、周りに"作品被害"が出てしまう事を、彼女は重々承知していた。だが大半の人間はその惨状を苦笑いを浮かべて見ているだけなので、形容していると思っていたのだ。
その日の"鑑定"は滞りなく終了はしたものの、彼女の頭の中には形容しがたいモヤモヤが募っていた。

「きさらさん。何を思い出しているのかは知りませんが、心当たりはおありでしょう?」
「……うん、そうだね。あまり僕は好きじゃない記憶だけど」

茅野はどこか遠くを見つめているような表情で自嘲気味に笑った。
その様子を見て満足げに頷いた御先は、次に朝夕に向き直った。

「他にもまづめさんだって、そういうのがお有り……といいますか、実は私、まづめさん本人に会うまでは……その、失礼なのですが、こう、ガタイがいいと言いますか、そういう女性だと思っておりまして」
「……ああ、なるほど……」

実は「怖い」と言われたのは茅野だけではなく、朝夕も同じだった。
もっとも彼女の場合は、異常性云々ではなく物理的な側面が強いのだが。
朝夕まづめという人間は天気によって髪の色と性格が変化する異常性を保持しているという理由から財団に雇用されたわけではなく、多くの体術や投擲術を取得しているその腕が財団に有用であると考えられた事から雇用されている人間である。
それは彼女が警備部で認められている事からも理解する事ができるだろう。
だがそのイメージが先行してなのか、彼女はよく初対面の人間に先ほど御先から言われた言葉のように感想を述べられる事が多いのだ。

曰く、「男性だと思っていた」
曰く、「もっと大きな方だと思っていた」

当然のことながらいくら物理的な面で強いといえども彼女は女性だ。そんな事を言われれば表面上では気にしていないフリをしていても、その実、内面では傷ついている。

「……」

茅野と同じように虚空を見つめる朝夕の表情はどこか、悲しげであった。
そして最後に御先は鳴蝉へと向き直る。
鳴蝉は自分には一体何が来るのかと身構えてはいるものの、別段彼女には思い当たるフシがないために、頭の中には「?」マークが浮かんでいた。
そんな彼女に御先は巫女服の袖からもう一枚、円グラフが印刷された紙を取り出した。

「……実はこの前。財団の男性職員の方々に『鳴蝉博士についてどう思うか』という無記名式のアンケートを取らせていただきまして。その結果がこちらになります」

御先から差し出されたそれを鳴蝉は受け取ると、すぐさま躊躇なく広げた。
そこに印字されていたのは―――

蝉:98% 不思議ちゃん:1% 判別不能:1%

「セ・ミ!!」

バンと机を叩き、御先は怒ったように叫んだ。

「女性研究員に対してのアンケートを取った結果、98%の方が『蝉』と答えるアンケートが一体どこにありますか!ここにありましたね!とにかく、これは由々しき事態である事は間違いありません。いいですかそもそも―――」

興奮し、熱弁を振るう御先の前で、鏡合わせのように鳴蝉は言葉を遮り言った。

「何故」
「はい?」
「何故、由々しき事態であるのでしょう。私自身、このように思われている事は非常に喜ばしい結果であると思っています」

無表情のまま、機械音声のような正確さで告げる鳴蝉にたじろぐ御先であったが負けじと反論を繰り出す。

「だって、時雨さんは女性なんですよ?女性である以上、男性からはこう、『可愛い』とか『美人』って見られたいと思いませんか?」
「いえ。特には」
「ぐ、ぐぬぬ……で、ではここにアンケートに答えてもらった方が更に鳴蝉博士について思う事を自由記述をしてもらった内容が描かれたメモがあります」

先ほどアンケート用紙を取り出した方の反対側の袖から、御先は更に狐のイラストがデザインされた表紙のメモ帳を引っ張り出し、読み上げて行く。

「『突然蝉を吐くのはやめてください。怖いです』」
「光栄です」
「『いきなり人の口の中に手を突っ込んで蝉を取り出してくるのはどうかと思うのですが』」
「ちょっとした悪戯です」
「『あの、蝉苦手なんで蝉を近づけるのやめてもらっていいですか……』」
「これから好きになっていただけるよう頑張ります」

矢継ぎ早に読み上げる御先に、淡々と返していく鳴蝉。
そんな二人の様子を見つめていた後醍醐は一つため息をつくと、ゆっくりと鳴蝉の元へと向かっていく。

「稲荷ちゃんストップ。時雨ちゃん、ちょっと耳貸して☆」
「はい、どうかしましたか?」
「えっと……ごにょごにょ」

後醍醐が何かを耳打ちすると、鳴蝉は一瞬虚空を見つめている朝夕検査員に眼をやり、しかしすぐさま目線を膝の上に戻し黙り込んでしまった。

「えっと……勾さん?一体何を時雨さんにおっしゃったのですか?」
「気にしない☆気にしない☆ちょーっと意地悪な事を言っちゃっただけだよ♡」

後醍醐はそう言って自分の席に戻った。
御先は一つ咳払いをして、全員の位置が見渡せる場所に移動すると、「というわけで」と続ける。

「皆様にもご理解していただけたと思います。そう、私たちはあまりこの財団内で女性扱いをしてもらえていないという現実を」

御先の言葉に朝夕と茅野が一回だけ首を縦に振る。鳴蝉は相変わらず黙ったまま動かない。

「そこで私は考えました。私たちが、改めて『可愛い女性』とまではいきませんが、『女性』である事を男性職員の皆さんに理解してもらうにはどうしたらいいのか」
「ああ、そこでアイドル活動に繋がるわけか」
「その通りです。まぁ要するに、私たちで一度あの人達を見返してやりましょう、という事ですね」

茅野、鳴蝉、朝夕、そして後醍醐、一人ひとりの顔を数秒見つめてから彼女は再び問いかけた。

「財団夏祭り、その一夜だけ……アイドルになって、みんなを見返してやりませんか?」

御先からの二回目の提案にまず手を挙げたのは後醍醐だった。

「はーい。もちろんコウは、言いだしっぺというか、前々から稲荷ちゃんと計画してたから参加するよ☆でもね、だからこそみんなに一言言っておきたいなって思って」

そう言って後醍醐は立ちあがり、御先の隣まで来るとにこにこと笑っていた顔を崩し、今まで話していたトーンを下げて告げた。

「二か月っていう時間はあるけれども、正直、私的には仕上げるのはギリギリのラインだし、元々の職務の間を縫って練習する事になるからかなりキツいと思う。それでも諦めないって人だけ着いてきて」

数秒の沈黙。
そしてまず手を挙げたのは朝夕であった。

「体力には自信があります。それに……イメージを払拭できるのなら、私、やってみたいです」
「……そうだね。アイドル活動というのも、芸術の一種じゃないかな。僕も参加するよ。もちろん、イメージの払拭もしたいしね」

続いて茅野が手を挙げる。残っているのは、微動だにしない鳴蝉のみ。

「……時雨さん」
「……まづめがやるのであれば、私も参加します。イメージの払拭はしないでもいいですが」

諦めたようにため息をついて言う鳴蝉、その様子に御先と後醍醐はハイタッチを交わした。

「ではでは、全員参加していただけるという事ですね?!」
「よかったね稲荷ちゃん☆コウも嬉しいよ☆と、いうわけで」

喜ぶ御先の横で、後醍醐が笑顔のまま

「じゃ、今からこのサイト内の敷地を走り込みに行こっか♡みんなの体力がどれぐらいあるか測っておきたいし♡」

と、提案した。

『……えっ』

その提案に、御先を含めた全員が絶句する。
ひきつった表情を浮かべる彼女らに、後醍醐は貼りつけたものではない、本来彼女が浮かべるような邪悪な笑みで告げる。

「だって、さっきも言ったけど仕上げるまでギリギリのラインなんだもん☆……言いたい事、わかるよね?」
『……』

そうして彼女たちの、ステージに向けての猛特訓が始まった。

「きさらさん!きさらさんしっかりしてください!まだ1kmですよ!?」
「ふふ……ここは僕に任せて先に行くといいさ稲荷さん……」
「勾さん!きさらさんが!」
「あー大丈夫☆大丈夫☆きさらちゃんには後で体力増強用の特訓メニューを考えておくから♡」
「……運動か……僕は……嫌いだな」
「きさらさーん!!」

一カ月、二か月と。

「……歌詞には是非『蝉』関連の単語等を」
「……流石のコウちゃんでもそれはきついかなー?」
「……『蝉』」
「し、時雨ちゃん」
「……『蝉』」
「わかった、わかったから☆だからじりじり蝉を手にしながら近づいてこないでっ!」

月日は流れて行き。

「ワン、ツー、スリー、フォー……」
「わざわざこんな遅くまで空き部屋を借りて練習だなんて、感心しないねまづめさん」
「あ……きさらさん」
「明日の業務に響くよ。……はいスポーツドリンク」
「ありがとうございます……あの、きさらさんはどうしてここに?」
「……言わせないでくれ。君と同じ目的だなんて、さ」
「……こっそり私もいますからね」
『時雨さん!?』

遂に当日。

「いいえ私、ここだけは勾さんが相手でも譲れませんから!」
「おーう上等だ☆御先、表出ろゴラ☆」
「ええ構いませんよ。こう見えても私まづめさんに一通りの護身術は学びましたからね!」
「護身術ごときでデビルコウちゃんが倒せると思うなよ☆」
「二人とも落ち着いてください……」

夏祭り三日目、午後7時少し前。

「何だか予想より沢山人が集まっていますね……」

演芸ステージの袖幕から観客席をちらりと覗いた御先はそう呟いた。
彼女はせいぜい観客席は半分埋まれば御の字と考えていたのだが、何故か観客席は満員。それどころか立ち見をしている人々も何人か確認できる。

「今頃になってビビってんじゃないぞ稲荷ちゃん☆すぐステージなんだから☆」

深呼吸を繰り返す御先に後醍醐はあくまでいつも通りの笑顔で言った。
しかし彼女を彩る衣装は、いつも通りの悪魔イメージのものではなく、この時のためだけに作り上げられた衣装となっていた。
パステルカラーを基調とした、清楚ドレスを彷彿とさせるミニスカートのアイドル衣装。背中にはデフォルメ化された天使の羽がついている。
それは皆も同じで、各々羽や髪飾りなど装飾の変化はあるものの、元となった衣装は全て同じだ。

「……あの、一言いいかな」
「なーにきさらちゃん?」
「……その、この短さだと……観客席から……ええと……見えたりしない……かな」

顔を赤らめながら茅野は衣装のスカートの裾を指で弄っている。
その様子をポカンと見つめた4人は、彼女はいつも「少年のようでありたいからさ」とパンツルックを好んで着ている事を思い出した。
要するに茅野がスカートを履く事は滅多にないのだ。

「……きさらちゃんに関してはスカートを履かせるだけで、もしかしたら怖いイメージは払拭できたかもしれませんね」
「どういう意味だいそれは」
「大丈夫☆大丈夫☆ちゃんと位置とかは決めたでしょ?あの位置なら見えないから☆」

未だに不安そうな顔をしている茅野の頭を軽く二回叩き、後醍醐は全員が見える位置に立った。

「それじゃあみんな。最後の確認。振付と歌詞は大丈夫?」

後醍醐からの問いかけに、4人は一斉に首を縦に振る。
各々の決意に満ちた表情を確認した彼女は、頷いてから更に続けた。

「なら今日は精一杯楽しもう☆年に一度、あるかないかのお祭りだからね!楽しんだものがちだよ!」

そう言って笑う後醍醐4人の前に手を差し出す。
4人は一つ、また一つとその手を後醍醐の手の上に重ねて行く。
その手の重なりが5つになった時、後醍醐はすうと息を吸い込んで言った。

「合言葉は―――」
『Are We Cute Yet?(私たち、可愛いでしょ?)』

重なりが空に弾けたと同時に、5人の声がこだました。
その声は、更なる声にかき消され、誰にも気づかれる事なく消えて行く。
そうして彼女たちの宴は始まったのだった。

「続きましてー。女性職員メンバー5人で構成されました『Are We Cute Yet?』によります、アイドルパフォーマンスです。では、張り切ってどうぞ」

「皆さんこんにちは☆『Are We Cute Yet?』でーす☆」
「せっかくの夏祭り、楽しんでいただけていますでしょうか?」
「……そんな皆様に、更に楽しんでいただきたいと思いまして」
「私たちで、このような催しを企画させていただきました」
「僕達の芸術作品、聞いていって損はないと思うよ」
「それでは聞いてください☆『Are We Cute Yet?』で、『恋の確保・収容・保護戦線!』」

「姉ちゃんもよくやるよな。わざわざ初心者ゾロゾロ引きつけて。やるならソロでやりゃあいいのによ」
「面白いと思ったらどれだけ手間暇をかけても実行する。姉さんらしいじゃないですか。と、いいますか」

「~♪」

「だったらわざわざ楽曲提供なんて、しなければよかったのではありませんか?」
「……一応、姉ちゃんが決めた事だからな」
「素直じゃありませんね」

『ある日突然、貴方を見つけたー♪』
『目が合うと、何故か胸がドキドキしてー♪』

色敷博士。来てたんっすね」
「ああ、君かなごむ君。たまには男性的な面も見せておかなければと思ってね」
「なるほど。おれもそんな感じっす」
「……あと、彼女の作品被害が発生しないか心配でね。ここには来てないが屋敷博士も気にしていたものだから」
「……気苦労が絶えないっすね、博士」

『高鳴った心はー天国に近づいたー♪』

「なんやお前さんも来てたんか軍師
「……いけませんか
「いや三国志関係ないのに来るなんて珍しいなと」
「……気まぐれというものです。それに関係ないとは限りませんよ。三国志の歴史の中にはあのような旅芸人がいてもおかしくないと某は前々から考えておりまして―――」
「はいはい。今は曲を聞いときーな」

杓子定規でも測れないー♪』
『僕の心は硝子のようさ♪』

「……お隣、よろしいですか?海野さん
「はい。貴方が来るとは珍しいですね。ルコさん
「アイドルという偶像を信仰する、それはつまり神様を信仰するのと同じ事だと私は思います」
「……なるほど。違いない。私も、己の拳を信仰しておりますから」

お城の向こう花火を見ながらー♪』
闇の中で貴方を思い出して♪』

「……(無言でサイリウムを振る)」
「……(無言でサイリウムを振る)」
「……(無言でサイリウムを振る)」
「(ペンギンハト唐揚げがサイリウム振ってる……唐揚げに関してはどうなってんだあれ……)」

『もしかして認識災害?それとも精神汚染?』
『ううん、この気持ちはきっと[編集済]だよー!』

「なかなか美しいではないですか。ま、この五月蠅には敵いませんがね!」
「五月蠅さんは何を競っているんですか……」
「ま、ロロさんにもいつか分かる日が来ますよ。美しいとありたい気持ちが」
「そうですか……」

『ねぇ、偶像でも恋していいですか?』

「みんな行くよー!せーのっ!」
「なんでハルちゃんは初めて聞く曲にコールを入れようとしているんですか?!」

『恋の確保・収容・保護戦線!』
『収容違反は逃さーない!』

「俺の名を言ってみろ」
「私の後ろで何をしているんですかヤマトモさん
「暗いからテンション上がってよ。そういうお前は何をしてるんだ?天見
「……たまには眩しい物を、見たくなりまして」
「眩しい物……ああ、そうだな。俺らには眩しすぎるな」
「ええ、本当に」

『この恋まだSafe?でもJokeじゃつまらない!』
『止められないKeter!』

「最っ高にハイな気分だ!このまま俺はステージに上がってスピードにな―――」
「落ちつきなさい速水
「ごふっ……ま、前原博士……」
「全く……というかなんで私に声をかけてくれなかったのよ……」

『恋の確保・収容・保護戦線!』
『ミーム汚染も止まらーない!』

ねこです。ねこはいます。よろしくおねがいします」
あかしけ……」
「あれ、止まるって……あれ、なんだっけ
「オイ誰だ今の!?」

『Apollyon1でも構わない!Thaumiel2で包みたい!』
『Juggernaut3で伝えたいのー!』

「……(大量の冷や汗)」
カナヘビさん?どういたしました?」
「……████ちゃん、今すぐクラスA記憶処理の準備して。ここにいる全員分」
「流石に無茶がありますよ!?」
「いいから早く!」
「は、はいー!!」

『みなさーん!ありがとうございましたー!』
『僕達の歌で、みんなが楽しめたなら嬉しいよ』
『……ありがとうございました』
『し、時雨ちゃんまだ、まだですよ!あ、ありがとうございましたー!』
『各メンバーのグッズとCDは演芸ステージ入口にて絶賛発売中だから、みんな買ってねー☆』
『え゛っ』

時は流れ季節は秋、いつかの研究室。
『Are We Cute Yet?』のメンバーが再び集まっている様子がそこにあった。
御先は手にしていた大量の手紙が入った段ボール箱を机の上に降ろした。

「みなさん、見てください!」
「それは……なんだい?」
「ファンレターですよ!ファンレター!作戦は大成功です!」

茅野の質問に答え、御先は箱の中から手紙を取り出しては嬉々として3人に配っていく。
そのどれもが、大方、男性職員からのものであった。

「『茅野博士ってあんなに可愛かったんですね!』……な、何だか改めて言われると恥ずかしいな」
「『鳴蝉博士のファンになります』……なんですかこれ」
「『朝夕検査員~』……こ、これだけですか?!あ、でもこっちには……『朝夕検査員結婚してください』……え、えへへ。照れちゃいます……あーっ、し、時雨さん何をするんですか!?」

朝夕が読み上げたファンレターを強引に奪取し、ばらばらに引き裂く鳴蝉。
そんな3人が騒がしくファンレターに目を通している様子を、ただ一人部屋の端から見つめている人物がいた。

「お疲れ様でした。そしてありがとうございました。勾さん」
「うん、稲荷ちゃんお疲れー☆」

相変わらず上っ面だけの笑顔を浮かべてはいるものの、後醍醐はどこか満足げに見える。

「まさかグッズまで用意していたなんて驚きですよ。それが本当の目的だったんですか?」
「……さー、どうだろうね?」
「相変わらずわからない人です。……そうだ、勾さんにもファンレター、届いていますよ」
「ありがと♡……ファンレター、か。久しぶりに、もらったファンレター全部読み返してみるのもいいかもな……」

御先が手渡した手紙を受け取った後醍醐の呟きは、誰にも聞こえる事もなく、御先も混じって行った4人の喧噪のなかに消えて行った。
しかし瞬間、更に大きな喧噪が近づいてくるのを、御先と後醍醐は感じ取った。
それは、例えるならば足音の波―――

「すいません!『Are We Cute Yet?』の活動拠点はここでよろしかったでしょうかっ!」

勢いよく扉が開き、一人の女性が入ってくる。
御先と同じように頭部から突出した狐の耳が特徴的な女性であった。

日野博士……?どうして貴方がここにいるんですか?」

彼女と面識のあった鳴蝉博士が口を開くと同時、日野博士は急に涙目になって叫ぶのだった。

「何故……何故私を誘ってくださらなかったのですかー!?」
「……なんで誘わなかったの?稲荷ちゃん☆」
「えっ、私ですか?!」
「だってメンバー選定は稲荷ちゃんに一任してたじゃん☆」
「どうして、どうして誘ってくださらなかったのですか御先さん!」

御先の肩をつかみ、何度も上下左右に揺らす日野。
目を回しながら御先はしどろもどろに答えた。

「ええっとですね、ほら、ケモミミ要因が何人も入るのは、その、バランス悪いかなーと思いましてー!」
「だったら私たちでケモミミユニットを組みましょう!」

そう言いながら次に研究室に突入してきたのはエージェント・猫宮だった。自慢の付け耳を揺らしながら彼女は日野の手をつかみ、御先と日野の二人の顔を見つめた。

「……やりましょう、日野さん、御先さん」
「幸子ちゃん……」
「あの、私はあくまで『Are We Cute Yet?』のメンバーですので、脱退する気はないと言いますか」

突如として現れた二人の侵入者の様子を呆然と見ている3人。しかし後醍醐だけは「まー、こうなるよね」と言わんばかりの表情で獣耳三人娘を見つめていた。更に侵入者はそれだけに留まらない。一人、また一人と研究室にはいつしか数十人を超える女性職員の姿があった。

「お、押さないでください……わぷっ」
「時雨さん私につかまってください」
「な、何が起きているんだい一体……」
「はーい☆みなさんお静かにお願いしまーす☆」

おしくらまんじゅうのようになってしまい、混乱する研究室の真ん中。椅子ステージの上に立った後醍醐は手元にマイクがあるかのように大多数の観客を見下ろした。

「みなさんのご希望は分かりました。もうハッキリ言っちゃいますけど、私たちもアイドルになってチヤホヤされたい☆そうですね?」

彼女の言葉に数人がこくりと頷いた。残り数十人は押し黙ったまま動かない。その頬には気恥ずかしさからか、朱の色が差し込んでいる。

「恥ずかしがらないでいいです!コウたち『Are We Cute Yet?』もそのようにして生まれましたから。しかし、こんなに入隊希望者がいるとなりますと、正直めんどくさ……いいえ、コウたちも困ってしまいます☆で、す、の、で」

後醍醐の数秒のタメにより、研究室内は沈黙に包まれる。
全員が黙ったことを確認し、後醍醐は不敵な笑みを浮かべて宣言するのだった。

「ただいまより……『次のAre We Cute Yet?は貴方だ!特別オーディションを開催したいと思いまーす!!』」

このオーディションの後に、『SCP48』や『日本偶像創研』などの多数の女性職員によるアイドルグループが生まれ、男性職員の慰問部隊として活躍するのはまた別の話である。

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