礎になるという事
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「初めまして、東です。」
「新入りかい?昇格おめでとう。よろしくね。」

3年間功績を積み重ね、レベル2に昇格した。その喜びをそのままに研究室を訪れた青年を迎えたのは、不健康そうな男だった。

「あたしは紅屋、この班の長だ。まぁ堅苦しい事は抜きにしてさ、早速だけど見学していきなさいよ。これから実験するんだ。」
「あ、ありがとうございます!」

財団が危険な職務だと事は十分理解している。だが人類の礎になる事に、意志は揺るがなかった。だからこその3年、そしてレベル2だ。

「そうだ、これ。イヤーマフ。防音用の。付けといてね。」
「はい、分かりました。…あの、これは…ミーム対策とかの?」
「うん、そう。便利よ。」

初めて間近に見る、異常に立ち向かう者達の姿。青年を唾を飲む。男は手を挙げて、実験の合図をした。

「よし、時間だ。機材は良いな?被検体は万全?よし、始めよう。」

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「教授。収容手順の決定稿です。」
「有難う。見てみようかな。」

1年後、男のオフィスにて。

「マゴットセラピーの施術環境も整いました。」
「感慨深いねぇ…これで、こいつもようやくセーフだ。」

その年は大きな躍進の年となった。SCP-113-JPの治療法が出来たのだ。それは前任者を含めれば、実に50年越しの悲願だった。青年にとっても。

「感慨深いと言えば…」

青年が呟く。書類をめくる手を止め、男は尋ねた。

「何がだい?」
「…いえ。最初の実験もこいつだったな、と。」
「うん、君も成長したよねぇ。来てくれてから万事トントン拍子だ。」
「先輩方のおかげですよ。」
「ふふん。よし。今日は奢るよ、久しぶりに肉食べに行こうよ。」
「えぇ、是非!」

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感慨深いと思う。防音イヤーマフ越し。虫に全身を蝕まれた者の悲鳴を聞き続けている気がする。

いやだ。たすけて。ゆるしてくれ。かぞくに、かぞくに。あああああ。

感慨深いと、思う。

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…先輩は誰も、耳当てを付けてなど居なかった。

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