SCP財団

プロジェクト推進難度: コーラルホワイト ●

鮫科殴打ケイパビリティ: N/A or A/A

プロジェクト構成: SPC-CN-001は長期間に渡って実施されるべきプロジェクトであり、サメ殴りセンターの理念である「索鮫・殴打・粉砕」そのものでもあります。当プロジェクトの目的は、後述する変遷イベント-001を抑制することで、人類と鮫科の存続を維持することです。

SPC-CN-001は「索鮫・殴打・粉砕」という、センターの根本的な理念を構成に含みます。その詳細を以下に述べます。

索鮫:
変遷イベント-001の発生により、鮫科は人類の居住地区を離れる傾向にあります。変遷イベント-001を抑制するのに十分な殴打回数を確保するために、サメ殴りセンターの殴打エージェントは自発的に鮫科の居住地区を捜索し、鮫科の個体に非致死性の殴打を行います。それと並行して、変遷イベント-001によるものと思われる異常存在を回収し、研究または破壊します。

殴打:
サメ殴りセンターの殴打エージェントは、高レベルの戦闘訓練を経験した上で、「サメ殴りセンター標準殴打規定」を厳格に遵守した対鮫科殴打を実施します。これにより、変遷イベント-001を抑制するのに十分な殴打力と回数を確保します。殴打を実行する主体は人類でなければなりません。鮫科同士の殴打は、変遷イベント-001に抑制効果がないと実証されています。そのため、能力のある鮫科エージェントに対するアンニュイ・プロトコルを解除し、殴打エージェントとして徴用する提言は却下されました。

粉砕:
すべての鮫科、及び殆どの人類にアンニュイ・プロトコルを適用します。これにより、人類と鮫科の親睦関係を粉砕し、中立的または敵対的な関係を構築します。アンニュイ・プロトコル適用外の人類に対しては、U/Pアッパー＝パンチクラス記憶処理を実施し、変遷イベント-001に関するすべての記憶を消去した上で、鮫信奉者として活動させます。これにより、センターと鮫科の勢力均衡を維持し、過度な対鮫科殴打を抑制します。

変遷イベント-001概説: 変遷イベント-001は人類と鮫科に影響する一連の異常イベントの総称です。同イベントの最初の発生は紀元前2300年頃に記録されています。SPC-CN-001が完全に導入されるまで、同イベントは持続的に発生していたと見られます。

現在、変遷イベント-001は主に以下の現象を引き起こしています。

1. 人類の水中活動能力、並びに関連器官の完全消失
2. 鮫科の陸上活動能力、並びに関連器官の完全消失
3. 人類言語と鮫科言語との間の語義・発音の乖離
4. 鮫科の発声器官の完全消失
5. 鮫科の鰾器官の完全消失
6. 人類の発電器官・電気感覚器官の完全消失
7. 人類の貯水器官の完全消失
8. 人類と鮫科との間の倫理観の乖離
9. 人類と鮫科との間の生殖的隔離
10. 人類と鮫科の出生率の低下
11. 人類の体力・免疫力の慢性的な低下、並びに鮫科の知力の慢性的な低下および警戒心の上昇
12. 一部の人類・鮫科の凶暴化・異常化、および凶暴化・異常化を誘起する異常物品の大量発生

同イベントは初期において人類および鮫科の全体そのものには発現せず、一部の個体だけを対象に発現していました。そのため、偶然または一種の疾病として扱われることが多く、SPC-CN-001の発足までは、人類・鮫科に必要以上の注意を向けられることがありませんでした。しかしながら、同イベントの持続的な発生によって、SPC-CN-001の発足時に、既に約98.3％の人類と97.8％の鮫科が影響を受けていたと推測されています。その時点で、人類と鮫科の互恵的共生関係は既に完全に破壊されたと考えられています。変遷イベント-001の持続的な発生をこれ以上許した場合、人類と鮫科が完全に滅亡するSK-クラス: 支配シフトシナリオが引き起こされると見られています。現在、変遷イベント-001を抑制できる唯一の手段がSPC-CN-001です。

変遷イベント-001発見経緯: 1908年、フランスの歴史学者フレデリック・カロン氏がローマ史について考察した際に、各戦役の発生地周辺に「奇妙な病気」の発生例が少なかったことを初めて発見した。その後、1914年に勃発した第一次世界大戦で、ヨーロッパ全土の「奇妙な病気」の発生例が著しく減少したことで、カロン氏が証拠を得て、自著の『人類と鮫科の反目史』で自らの観点を述べた。最初は学界に受容されなかった観点だったが、1939年の第二次世界大戦の勃発後、「奇妙な病気」の発生例減少はヨーロッパだけでなく、アジアやアフリカでも観測されたため、同観点は信憑性を帯びることになった。

1962年、イギリス人医師ライマン・ダドリー氏は、ロンドン警視庁の公開する国内暴力事件の発生地分布が「奇妙な病気」の発生例の少ない地域の分布に一致していることを発見した。その後、8年に渡る被験鮫に対する比較実験を経て、同氏は「人類が鮫科に傷害を与えることで『奇妙な病気』の蔓延を抑制できる」という仮説を提唱し、当時の世界オカルト連合の注意を引いた。世界オカルト連合は調査検証の末、人類の鮫科に対する傷害行為は「奇妙な病気」の蔓延を食い止めるだけでなく、近年増加する傾向にある超脅威の発現への抑制効果も有していると実証した。慎重な討議の元、世界オカルト連合は特別排撃班“サメ殴り小隊”を設立した。同排撃班は、秘密裏に鮫科を殴打することにより、のちに変遷イベント-001と称される現象を抑制することを任務とする。同排撃班はのちに世界オカルト連合を離脱し、現在のサメ殴りセンターを結成した。

サメ殴りセンターによるその後の殴打と研究で、人類が鮫科を殴打する際に、特殊なEVEエネルギーが周囲に放出されることが判明した。放出されたエネルギー量は殴打の強さと回数に関連性があると見られ、人類か鮫科に吸収されなかった場合、無限遠点へ到達する。同エネルギーを一定以上吸収した人類または鮫科は、現実改変へのある程度の耐性を獲得すると考えられています。これは、変遷イベント-001がある種の現実改変イベントであると示唆しているが、カント計数機による観測ではヒューム値の変動が見られなかった。変遷イベント-001は、計数機の検知限界を超えた瞬時かつ局所的なヒューム値変動によるものであると仮定する説も挙げられているが、未だに確証ができない状態である。統計上における殴打による変遷イベント-001への抑制効果を鑑みて、サメ殴りセンターは殴打を長期間に渡って実行されるべきプロジェクトとして、SPC-CN-001に指定した上で、「索鮫・殴打・粉砕」の三原則を制定した。

子よ。ここまで読んで、さぞ困惑しているだろう。
我々は何だ？サメ殴りセンターだ。我々の理念は？索鮫、殴打、粉砕。軟骨野郎を潰せ！
だが、なぜ我々はそうしなければならない？なぜ、我々は鮫科存在だけを目の敵にする？より危険な生物でも、アノマリーでもなく？
ここで、「健常な」殴打エージェントは、鮫科存在への憎しみをあらわにするだろう。だが、それはあくまでアンニュイ・プロトコルによって作られた体裁でしかない。
クオリア抑制措置パターン714αは怒りの感情を除去する。落ち着いて、話を聞こうではないか。

すべての始まりは、既に4000年前のことである。あまりにもゆっくりとしたその現象に気づく時には、助け合い、支え合って豊かな生活を作っていた人類と鮫科との間は、もはや挽回できないほどの溝ができてしまった——そして、それはさらに悪化しつつある。
共に世界を制覇した親友は、今や陸と海と袂を分かち、
同じ言語で謳歌した姉妹は、今や意思疎通すら叶わぬ。
人と鮫の関係に罅が入り、文明も凋落するだろう。
ぬるま湯で茹でられたカエルは、温度の変化を知覚できず死亡する。だが、我々は座して死を待つ訳にはいかない。人と鮫は、危機に瀕しているのだ。
幸いなことに、我々にはまだ希望がある。例え、それが不条理に聞こえても。
我々に残された最後の活路は、鮫科存在あいぼうへの虐待などと、果たして誰が想像し得るだろうか？
人類と鮫科の友情は、もう二度と戻らないだろう。だが、数千年もの付き合いだ、これだけは覚えてくれ。

希望を索鮫さがせ、旧友を殴打なぐれ、運命を粉砕こえていくんだ。

……記憶処理を終えたら、君はこの件を忘れるだろう。

なに、ただの気晴らしだ。

また後でな。その時に、オレを思いっきり殴ってくれよ。

— 05-C、この"C"は"Cartilage"軟骨野郎の意。