バグ
評価: +3+x

球の表面に連続的ベクトル場が存在する場合、ベクトルが0に等しいフィールドにも最低1ヶ所の点が無ければならない。

別な言い方をすりゃ、アンタが毛で覆われた球を持ってるとしたら、そいつを全て真っ平らに梳かすことは不可能だ。毛が収束してそそり立つ点が必ずあるからな。コンピュータ関連の仕事をしてると山ほどそういう事がある。ゲームをしてて、モデルの一つの端っこギリギリまで近付いた状態で眺めたりとか、或いはアンタが気付きゃしないだろうと決め込んで開発者がこっそり隠そうとした場所なんかに入った時、テクスチャの種類が一点まで縮小してるのを見た事があるだろ? あれも多かれ少なかれ同じ原理だ。

これは何もグラフィックだけで起こることじゃない。場合によっては、物理システムを実装しようとすると、時々コーディングする領域の端に全部の数値が収束する。バージョン1では、それがあったのは球の両極だった。誰も気付きゃしないだろうと俺は仮定した、だって極には何の価値もありゃしないし(敢えてそういう風に作った)、そのうえ寒くて荒涼としてるからな。

ところが奴らは極をチェックしようと決めた。おかげでデカいシステムクラッシュが起きて、俺は一切合切をリセットするだけでなく、数週間かけてこんがらがった物理システムを取り除く努力をする羽目になっちまったよ。

それに失敗した俺は、バージョン2で次善の策に出た。そいつを移動させたんだ。ちょちょいっと微調整して、外側に繰り返し芝生のテクスチャを貼っ付けて、周りの縁を縫い合わせたから、外から見ても分かりゃしない。

ちっとも楽しくなかったかって言うと嘘になる。俺は暫く、幾つかの物をこしらえて、不具合がそれにどう影響するかを見て遊んでた。俺は小さな不具合の町を作って、小さな不具合の人たちを住まわせて、連中がどう対処するかを観察した。

連中は対処しなかった。

そのうち、不具合はちょっとした実験場になった。時々、何か新しい物を実装する前、俺はそいつをそこに落として、極端な物理状況の下でどのぐらい上手く持ち堪えられるかを見る。幾つかはダメになっちまうけど、まぁかなりの有害環境だからな。連中のことは責められんさ。俺はただそいつらを他の場所に配置して、通常の状況ではどう反応するのかを観察する。ちょっとおかしな奴らだ。幾つかの歯車。動く石像。巨大なトカゲの怪物。

こいつらと遊ぶのはホントに楽しくてな。たまには俺が以前に設定した物をぶち壊すこともあるが、どうもこのプログラムは自己修復機能がかなり優れてるらしいんだ。俺は大抵関数を少しオーバーライドしなきゃならないんだが、理解できないもんを投げ込まれた残りの奴らがどういう反応を示すかが見られるってだけでも、間違いなくその手間の価値はある。

誰も気付きゃしないさ。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。