クラス・オメガ
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 昨日、また医者に診てもらった。彼らに言われたのは、覚えている中で興味深いことや身の回りで起きた奇妙なことを書き留めておけということだ。次に診てもらうときに、それを見せる予定になっている。内容を知ることが、俺の治療の助けになるんだそうだ。これが問題だ、俺はほとんどなにも覚えていない。教えてもらったところによると、俺はIED(手製の爆弾)に輸送車を吹っ飛ばされるまで、22年間、陸軍に勤務していたんだそうだ。命を拾ったのはラッキーだったなと言われたよ。もしかしたらそうなのかもしれないが、頭を強く打ちすぎたので、そのころのことは覚えていない。例外は、たまにちょっとしたことを思い出すってことだ。変な話なんだが、それが軍隊での経験だったとは思えないんだよ……銃をぶら下げていたのにな。でも、それがなんだったのかはわからないんだ。このあいだ、俺はコミックブックの店に行った。俺はコミックが好きだった……読むのが簡単だし、なにが起きているのか絵でよくわかるからな。そのコミックのタイトルは『ワイアード・サイエンス・ファンタジー』、ぱらぱらと店で立ち読みした。すべては突然だった。俺はコミックの中のそれを見て叫んだ、「SCP-1841! 去年収容したはずなのに!」。完全に興奮していたから、店員の男にいったいだれと話しているのか尋ねられた。俺は説明しようとしたが、うまくできなかったので、店員は俺のことを漫画と現実を混同するイカレ野郎と思ったようだ。店員は"SCP"とは何を指すのか聞いてきたが、俺にはそれがなにかわからなかった。突然、その言葉が俺の頭に飛び込んできたんだ。それが「ちょっとした記憶」の仕組みだった。店員にはわけのわからない馬鹿野郎と思われてしまったが、コミックを大量に買い込んだので追い出されることはなかった。

 俺はもうコミックブックからなにかを見つけることはなかった。もしそうなったら、俺が本当に大丈夫なのか怪しくなる。俺はいま、大きな倉庫の警備員をしている。退院後、彼らが仕事を世話してくれた。サウスウェスタン・クリプトバイオティック・プロダクツ! スペルを間違わないのは、配っているチラシにそう書いてあるからだ。もしだれかが来て、キーカードを持っていなかったら、「まだみなさんにお見せするものはありません」と説明して、お引き取り願うことになっている。変なところだよ、まったく。俺にはカードキーをくれないし、倉庫の中でなにをやってるのか見たこともない。食べ物を長期間保存するためのなにかと、チラシには書かれている。それだけでこんな大きな秘密が必要なんだろうか。

 俺はかつて銃を携行していたが、いまではバスに乗る生活をしている。バスは変わった連中で溢れている。人はろくでもないものをバスに持ち込むもんだ。今朝、15番通りで男たちが乗ってきて、古い壊れた乳母車を持ち込んだ。ビニール袋で覆われていたので、中がなにかはわからなかった。まっとうじゃない、どんな角度から見てもおかしかった。男が右隣に来ると、俺は緊張し、思った、「なんてこった、あれは Keter かもしれない!」。Keter? Keterってどういう意味だ? バスに持ち込んではならないモノ、だとは思う。二度、俺はどうにかしようとして、もう持ってない銃に手を伸ばした。去年は、どうすればいいかわかっていた。だが、いまはもうそうじゃない。あの男と乳母車は36番通りで下りた。俺が知る必要のないことだ。Keterやらなにかが持ち込まれたときのために訓練するのは、バスの運転手の仕事だ。

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被験者 K-1215-B
氏名: アンドリュー・ジェームズ・スターク

年齢: 45歳

経歴: 実戦エージェント(所属機動部隊: [編集済み])として22年間。[編集済み]と、[編集済み]の失敗の後、クラス・オメガ記憶療法に戻され、監視の下、配置転換。被験者は現場の知識を消去されたが、重要でない任務を実行可能である。

採用時のIQ: 139
療法後のIQ: 82

現在の任務: サウスウェスタン・クリプトバイオティック・プロダクツ、サイト87の偽装組織。セキュリティ・クリアランス0。

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2012年5月11日: 被験者はクラス・オメガ療法のパラメーター範囲内で活動を続けている。機密情報に触れる可能性のあるフラッシュバックを経験しているが、普段の言動と、考えをはっきり表現できないことから見て、機密性の高い事実を漏らすことはなさそうである。


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