ぜんまい仕掛けの時間
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そのファベルジェの庶子は激怒していた。道具が飛び、ドアがバタンと閉まり、壁と床板がガタガタと揺れる。その間ずっと、彼はあまりにも口汚い罵詈雑言を吐き散らし、既に色褪せている塗料はそれによって剥がれることを迫られる。拒絶されたのだ。彼は。彼は。世界で最も誉れの高い宝石商の継承者、夢の中でしか見られることのないような奇跡の作り手の継承者は、まるで乞食のように門前払いを食らった。おまけに、それは哀れな、疲弊し切った愚か者の召使いによってなされ、彼の奉納の品は皇帝の目の端に留まることすらしなかった。

彼は金槌を壁の中へと埋め込んでしまうのに十分なほどの強さをもって放り投げ、硫酸の如く苛烈な憤激の中で腸を煮え繰り返らせ涎を垂らす。彼の卵、若き皇子らや皇女らに伝えられた伝説的なファベルジェの卵を完璧に再現した一つの、が粉々に砕け散り、床に積もった細かい埃の中に横たわる。それは創り出すのに丸一年近くを要したものであった。彼個人の財産、人間関係、そして神経のかなり多くを犠牲にして。キラキラと光り輝く金色のそれには、隅から隅までバーバ・ヤーガと不死身のコシチェイ、透き通ったダイヤモンドでできた冷たい瞳たち、軟らかな真珠でできた怯えた子供たちのミニチュアの光景と物語が彫り込まれていた。

バーバ・ヤーガの棲んでいる鶏の足の上に建つ小屋の絵の中に隠されたごく小さな罠の後ろ、そこで一つのごく小さなぜんまい仕掛けの恐怖の野外劇が開かれる。とても小さな、繊細な両開き式の扉が揺れて開くと同時に、英雄と悪漢、螺子が巻かれておらず煌びやかで透明な顔をした若者と永遠なる老人のコシチェイ、の闘争が始まる。陰惨なものであったが、しかしそれが血の気の多い少年、最も若き皇子のような、にうってつけのものであったことはよく知られていた。この全ては粉々に打ち砕かれた。なぜならどこかの役立たずの相談役が「気分を害し」、そして「うら若き君主の繊細な感受性を揺さぶってしまう」などとのたまってこれをどうしても受け取ろうとしなかったからだ。臆病な豚野郎、奴は門の外で衛兵に自分を素晴らしく厳重に護衛させやがる尊大さを持っていた。

彼の怒りは次第に衰え、彼は頭がズキズキと痛む中肩を落として壁へと寄りかかった。作業場と住居を兼ねた空間は滅茶苦茶な状態になっており、一番高い所にある棚たちだけが多少の無傷な部分を残していた。彼は喘ぎ、静かに啜り泣き始め、自身の無価値な両手に目を落とした。それは彼の最高傑作であり、そして彼は自身がそれと同じものを決して再び作れないであろうことを知っていた。彼の眼差しはぐるりと屋根の垂木たちへ移り、上の空でそのうちの最も頑丈な、最も彼の体重に耐える可能性が高そうな一つを探し求めた。突然、彼の目はその高所の角で眠っているそのぜんまい仕掛けの薔薇に落ち着いた。ひとたび螺子を巻けば、それは花開き、それから自身を折り畳んで一羽のさえずる小鳥となるのだ。彼は凝視した、泣き腫らして赤くなり熱を帯びた目玉で、一つのアイデアをゆっくりと捻り出し始めながら。

彼は立ち上がり、薔薇を降ろし、それの螺子を巻いてその変化のバレエを観劇した。それはいつも見る者を楽しませてくれる変化だ。秘密の展開だ。卵たち、外側に一緒にいる、はほとんど無視され、内側で繰り広げられる秘密の狩りが心を奪う。秘密。変化。彼はゆっくりと微笑んだ、自身の痩せこけた厳めしい顔に病的な表現を用いて。彼は彼らを組み合わせて一つの奇跡、世界がかつて一度も見たことがなく、そして二度と見ることがないであろうような奇跡として作り上げたいと思った。彼は皇帝らが死に、去り、忘れられた後も保存され後世に語り継がれることになるであろう財宝を生み出したいと思った。

彼はまず破壊された時計たちから始めた。作業場とゴミの山から這い出し、彼は探し出せる限り全ての玩具、道具、あるいは時計を集め、沢山のそれらをそれの中の歯車の歯にした。彼の作業場はすぐに満たされた、歯車、伝動ベルト、弾み車、バネからなる山で。その全てが整理整頓され屋根の垂木の所まで積み上げられた山で。彼の設計図はよく増殖していった、二枚から五枚へ、それから八枚へ、それから二十枚へと。程なくして、彼は壁たちに略図を書き留め、歯車たちの間にある狭い通路たちの床にメモを殴り書きしていくようになった。

数少ない友人の全てと彼は話し始めていたのだろう。彼はどうしようもないほどよりげっそりと痩せ衰えてよりやつれた顔をし、目を血走らせ、そしてほとんどブツブツと不明瞭な呟きばかりを口にするようになっていた。彼の様子を見に立ち寄った少数の者たちは彼のドアの内側に押し入ることがほとんどできず、そしてすぐさま油と錆の臭いによって窒息させられた。彼の既に限られていた宝石とぜんまい仕掛けの制作は完全に止まった、自身の収入とともに。彼は家具を、服を、彼が必要とするごくわずかの食料を買うことに繋げられる何もかもを売り払う手段を取った。取り憑く悪魔と暗い芸術作品群の囁きが彼を追いかけ始めた。

忌避されることは彼にとっては何も新しいことではなく、そしてある意味では最早歓迎されていた。しつこく付き纏って交流しようとしてくるあまりにも親切で、あまりにも開放的で、あまりにも誠実な人々はこの仕事の進行を遅らせる、そう彼は疑っていた。軽薄な睡眠を捨てて以来、彼はより一層多くの時間をこの仕事に捧げるようになっており、夜に響き渡る騒音に対する近所の者たちのけちな苦情は彼の厳しい視線によって沈黙させられていた。組み立ては形を成し始め、山となっていた何百万もの部品は彼の小さな部屋の大部分を占領しているその成長中の塊へと移動し始めた。彼はそれの心臓が打つ静かな鼓動の中でうとうととし、それまでの数週間で初めての眠りへと落ちかけ、そしてその幻のようなカチカチという産声を聴いた。

彼は自身が持っていたもの全てを、自身であったもの全てをその作品に注ぎ込んだ。彼はそれに話しかけ、甘い言葉でおだて、悪態をつき、囁き、叫んだ。彼は自身の肉を削ぎ落としてボルトたちを滑らせ、すると突然歯車の歯たちが連動した。彼は血と膿を鑿、千枚通し、ドライバーに浴びせ、それと同時に彼の両手は裂け、火膨れを起こし、治癒し、それから再び裂けた。彼はその塊に、それのゆっくりと成形しつつある木製の肌についての意見を尋ねた。ここにはこの窓を置くべきか、それとも塔を置くべきか? この木の後ろにいるべきは兎か、鼠か? 最初にそれを始めた時、ガチャガチャという音やガタガタという音が屋根から埃を降り注がせ、彼はその木と金属でできた恐怖を抱擁しキスをした。彼がそれまでの人生で女性に見せてきたよりも激しい情熱をもって。

最終的に、それは準備が出来た。その大きさは彼が壁を叩き壊さなければならないと思われるほどであり、その重さはそれが自身を持ち上げるのに三十人の逞しい男たちを要すると思われるほどであり、彼は一人の父が新たな子の小さな小さな指に触れる時の思いやりと崇敬の全てをもってそれに触れた。それは単なる贈り物、権力者への奉納物を遥かに凌駕するものとなっていた。それは彼がそれまでに決して知らなかった全てであった。恋人、子、母。彼は疲れ切っていた。彼の萎びた心が手にした、この美しく、恐ろしき創造物の全てに。


そのパレードは盛大な行事であったが、しかし退屈であった。一人の痩せこけた厳めしい男が装飾卵を持ちながら追い払われてから五年の間、その皇帝と彼の家族はほとんど変化していなかった。ひょっとしたら君主と后はもう少し太り、皇子らの顔立ちはもう少し堅くなり、皇女の体つきはいくらかの挑発的な曲線を描くようになっていたかもしれない、だがその他の点では同一の肖像のままであった。その誕生日パレードにおいてさえも同じ疲れた山車たち、同じ金ぴかの馬車たちが練り歩いていた。その行進が一つの巨大な形と一つの痩せ衰えた恐怖によって塞がれた道へとやってきた時、皇女は実際につつかれて軽いうたた寝から目を覚まさなければならなかった。

その狂ったファベルジェは埃まみれの防水布で覆われた丘の前に立っていた。彼はこの数年を無為にぶらぶらと過ごしてはいなかった。彼の手足は案山子の如く細く、筋肉は下で捩れている細径ケーブル群のようだった。彼の頭はいくらかの表情をたたえた縮み上がった頭蓋骨であり、彼の微笑は危うく皇后をショックで気絶させるところだった。その擦り切れた、ボロボロの衣服は彼から一つのずだ袋のように吊り下がっており、彼が深くお辞儀をするのと同時に空気で膨れて揺れた。彼の声は彼が口を開くと同時に一つの甲高い、やすりがけのような耳障りな音として響いた: 「我が君主よ、この素晴らしき日に、私の贈り物を進呈致します」

防水布が剥がれ落ち、そして方陣全体が息を呑んだ。一つのおとぎ話のような王国がその通りの中心に芽吹いていたのだ。土台の周りには小さな木々や低木が植わっており、はしゃぎ回る妖精とゴブリンの群れでごった返している。とても小さな小川や湖は光を反射してキラキラと輝く人魚たちと微笑む魚たちを抱いている。より深い所では、一つのとても小さなノームの村がガリバー旅行記のリリパット人の住むような山並みに寄りかかっており、そこにいる人々は仕事と遊びに凍り付いている。鳴き鳥たちとドラゴンたちは高い所に心地良く横たわっており、そして暗い、示唆的な形たちは洞窟や小動物の隠れ穴の中で待ち伏せしている。

この全ては、しかしながら、その城の前では霞んで見えた。二十フィート近くある尖塔群を空中に聳え立たせながら、それは別の世界の景色のように輝いている。二つの大きな、どっしりとした門が開かれており、鎧を着て羽飾り付きの兜を被った騎士団が道を守っている。バルコニー群はこの世のものとは思えぬほど美しい女性たちを抱いており、彼女たちの求婚者たちは献身的な愛情の中で片膝をつくか、彼女たちを人間の見る最も暗い夢から生まれた恐怖の数々から庇うかしている。舞踏会たちと饗宴たちは内部のホール群に凍り付いており、王は顔から権力を発しながら裁判の司会をしている。堀は獣の群れで埋め尽くされ、全ての頂点はありとあらゆる種類の翼たちの止まり木の役を演じている。

言葉を発することは不可能だった。隅から隅までが宝石と金箔でキラキラと光り輝いている。水晶はあらゆる表面に沿って虹を放射し、真珠と金は一つの夢のように煌めいている。その創造者は路地で腰を屈めて一匹の汚らしい犬を誘い出すと、優しくそれを押しやって幽かに光る銀色の歩道を進ませて左の城門の中へと入れた。彼はその門を閉じ、それから銀色の茸たちの作り出した一つの妖精の輪を跨いだ。それの中にはとても小さな彫像たちが配置されており、彼はそのうちの一つを持ち上げると、それを輪の上にある小さな石造りの祭壇に嵌め込んだ。彼はそれから一つの磨き上げられた真鍮製の鍵をその石の下にある細長く小さな穴に挿し込み、そして回した。

突然、王国が生命を宿した。方陣全体、今に至るまで驚いて物が言えなくなっていた、は思わず大喜びで叫び声を上げそうになった。魚が泳ぎ、鳥が歌い、騎士が行進し、ノームが掘る。あらゆる所に動き、音、光が満ちる。木々がそよぎ、ドラゴンが卵を抱き、地下牢の奥深くから一つの小さな、身も凍るような呻き声が来る。王が宮殿を抱き判決を言い渡す、皇帝と彼の家族が歓喜の中で拍手喝采をしながら見守るのと同時に。その世界は突然再び凍り付き、そしてその案山子男は左の城門を開き、それが空っぽであることを明らかにした。彼は悪戯っぽく微笑み、それから右の城門を開くと、とても小さな純白の鳩の群れを解放して一斉に飛び立たせた。

男と機械は大急ぎで宮廷へと連れ帰られた。彼の嫌悪を催させる、最早悪魔のような風貌はほとんど瞬時に忘れ去られた、この新たなる娯楽の中で洗濯されて。一つの舞踏室が一掃され、壁が徹底的に破壊されるとともに建て直されてその巨大な作品を受け入れた。道具が見つけられ、置かれ、生まれ変わった。想像を超える不思議の数々が最も一般的な物体群から生まれ出でた。キラキラと輝く糸たちが石から、ぜんまい仕掛けの子猫たちが古時計から、ぷるぷると揺れるゼリー、どんなに虐げられても破裂させられることも引き裂かれることもできない、が質素な陶器の水差しから。

若き皇子は二度止められなければならなかった、王室で飼われている猫たちのうちの一匹を抱えて運ぶことを。物たちは片方の門から入ると、もう片方の門から出、そして二度と彼らの元の形には戻り得なかったからだ。だがそれでも、一羽のカナリアが目的のために犠牲となり、そして一羽の完璧なミニチュアの孔雀が現れ出でた。皇帝は言葉で言い表せないほど感激し、その装置の創造者であるその強い悪臭を放つ恐ろしい廃人をまるで兄弟のように抱擁した。連日の晩餐が計画され、部屋群が用意され、そしてその出来損ないのファベルジェの邪悪な心の中で異質ながら真の、本物の喜びの感情が湧き上がった。


二つの小さな姿がその舞踏室の中へと滑り込んだのはその夜が白み始めた頃だった。片方は男性用のナイトシャツに、もう片方は白く柔らかな女性用のナイトガウンに身を包み、その二つの姿はそのおとぎ話の城の方へ向かって静かにコソコソと暗闇を通った。ナイトシャツの人影、その若き皇子は、囁きそして指先でつねり、その皇女をその城の門へ駆り立てた。彼はその夜彼女の耳に意地悪なことを囁き、そしてもし彼女が彼に同行して彼の言う通りのことをしなければ彼らの両親に二つの不愉快な秘密をばらすぞと脅していたのだ。

彼は真に意地悪な少年ではなかった、普通の若い少年がそうであるのと同じように。彼に蛙たちを彼の妹の玩具箱の中へ入れさせたのと、蛇たちを手に持って彼女を追いかけ回させたのと、夕食の時に彼女の向こう脛を蹴らせたのと全く変わらない衝動が、同様に彼に、その城の中で彼女に何が起こるのかを目の当たりにするように仕向けたのだった。皇女は門の前で嘆願し、自身をベッドへ戻らせてくれるよう囁き声で自身の兄に乞うた。彼はより強く押し冷たく笑った、彼らの父のお気に入りの服たちが台無しになってしまった本当の理由を彼らの父に教えるぞと脅しながら。彼女は顔を蒼くし、震え上がり、そして黙って門の中へと足を踏み入れ、冷たい静寂の中で涙を流した。

彼は門を引いて閉じ、彼の小さく愛らしい悪魔の心は行儀の悪い笑みを浮かべて踊った。彼は輪へと飛び移り、ほとんど押し殺されていないクスクス笑いをしながらその蛙を選んだ。彼は鍵を回すと同時に、自身の妹の叩いていた無駄口、彼女の利口な発言と非難の多くを終わらせて彼女を大人しくさせた。城が歌いガチャガチャという音を鳴らすと同時に、皇子は恐ろしくなった。もし万が一誰かが目を覚ますようなことがあれば、彼は確実に責められるだろう。彼は像たちが踊るのと同時に一つのぼんやりとした嘘をでっち上げ始め、半分眠っているような瞬きと、最初の一人が到着するほんの少し前に目が覚めたという話の練習をした。城が動きを止めそして彼がもう片方の門を開いた時、彼は依然として練習をしていた。

その絶叫はまず最初に皇帝と彼の妻を目覚めさせた、たとえ彼らのいた部屋がその舞踏室から遠く遠く離れていたとしても。親として、彼らは子供たちが危険に晒されたことを確かに知ったようだった。彼らは召使いたちと眠たげな従僕たちの傍を通り過ぎ、皇帝は青白いローブを着た険しい顔の幽霊となった。彼は舞踏室の扉を突き破り、召使いたちは素早い動きで後に続き、扉はこじ開けられた力でその後ろにある石膏をひび割れさせた。若き皇子は短い歩幅で城から離れて縮こまっており、泣きじゃくって訳の分からないことを口走っており、ひどい熱でも出しているかのように激しく震えていた。皇帝は自身の若き息子のもとへ行ったと同時に、その城から一つの音を聞いた。彼は目をやり、そして彼の息子は忘れられた。

地獄はおとぎ話の森の中で生まれていた。一つの泣き喚く、身悶えする塊が木々を掻き分けようとあがき、それが這いつくばって進むと同時に歯たちのように見えるものの硬く尖った先端たちがボロボロと廃棄されてゆく。かつて目であったかもしれない二つの滲出液の水溜りからはシュウシュウと音を立てる膿が垂れ流れており、膨れ上がった傷のような口は柔らかな恐怖の中で動いている。ずぶ濡れの、液を滴らせている肢たちは輝く地面を引っ張って捕らえようとし、管たちと紐たちは荒い息を吐く背中に沿って波打っている。それは集まった男たちと女たちに向かってキーキーと鳴き声を上げた、皇女のそのずたずたになったナイトガウンの切れ端を未だにぶら下げ、自身の肉の襞たちの中に閉じ込められ、小さく愛らしいティアラを鼻に空いた虚ろな穴の近くに沈めながら。召使いたちは口がきけないほど驚き、どの者も感情を湧き上がらせることすらせずただただ恐怖に凍り付き、同時に皇帝の妻は卒倒し、重いドスンという音を立てて床に体を打ち付けた。皇帝は立ち上がった、ゆっくりと、ショックのあまり怖気付くことを忘れて、そして娘を楽にしてやりに行った。

皇女は死ぬまでに数時間を要した。彼女の部屋は封印され、出入口は漆喰で塗り込められた。その中にある体は埋葬するにはあまりにも捻れすぎそして歪みすぎていたからだ。若き皇子は壊れ、心を持たぬ殻となった。彼の発話能力は数ヶ月間にわたって失われ、それからもう少し経った後最終的に一人のよろよろと歩く幽霊が、窓や壁を何時間もじっと見つめ続けるようになった。皇帝はそれよりわずかにましであるに過ぎなかった。彼は彷徨い、折に触れて自身の玉座を凝視した、あたかもそれが何であるかわかっていないかのように、そしてよく突然発作的に咽び泣いたり烈火の如く怒ったりするようになった。民はほとんど何も教えられず、あの地獄のような夜に付き添った召使いたちは真実をほんの少しでも口に出せば殺すと脅された。

狂ったファベルジェは全ての者の中で最も憂き目に遭った。皇女と並んで。彼は自身のベッドから六人の衛兵によって追い出され、彼の頭には鞄が投げつけられ、彼の腹には鎧を着けた握り拳が打ち込まれた。彼は地下貯蔵庫へ投げ込まれて放置された、縛られ袋に詰められた状態で、丸一日。汚れそして疲れ果て、彼は引き出され袋を取り去られた、ただその凶暴な、躁病に罹った皇帝の凝視と対面するためだけに。狂ったファベルジェは言葉を話すための時間がほとんどなく、そしてその皇帝の拳が彼の既にひび割れていた歯たちを打ち砕き、彼らに彼の舌をギザギザに切り裂かせた時に、発話はいずれにせよ不可能なものとなった。皇帝は彼を二日間近くにわたって断続的に痛めつけた。最終的には皇帝はその男の指無しの両手のひらを切り落とし、彼の残っていた片目を抉り取り、そして彼を最も深い、最も暗い穴の中へと閉じ込めて腐敗させた。

そのおとぎ話の宮殿は取り除かれた。皇帝の赫怒にもかかわらず、彼はそれをどうしても破壊することができなかった。それが目に映ることそのものは彼を圧倒し、それについての言及をすることは彼を身震いさせ片頭痛を起こさせるのに十分だった。それは宮廷の使用されなくなった翼廊の地下室へと痛々しく移され、そして忘れ去られた。時間とともに、金箔は剥がされ、宝石たちは解放され、彫像たちは盗まれた。さらに年月が過ぎると、その今や裸の木製の殻は歳と季節を重ねてゆっくりとたわみ裂けていった。それは移動され、それから再び移動され、最終的にはその権力者の別荘の中で静止し、他の知られておらず世話する者のない財宝たちと一緒に隠された。

その木製の森と城の周りで一つの伝説が生まれた。その遥か昔に死んだ皇帝の曾孫たちが互いをそれについての話で怖がらせ合い、大胆にもそのじめじめした、暗い物置へ互いを忍び込ませてそれに触れさせることさえした。やがて一人の耄碌した、朽ちかけの執事がとうとうその物語の年老いて色褪せたコピーを漏らし、美味しいスキャンダルが何日も続けて酒場や下宿屋を駆け巡った。しかし、他の関心事が優先し、そして反乱やその他の騒動の中で、その夏の大邸宅は焼失してしまった。それは多くの素晴らしい芸術作品を道連れにし、そしてその捻れ、たわんだ木製の宮殿と森の殻をも道連れにした。それの上にある燃えさしたちが冷めると同時に、瓦礫の奥深くに埋まったその古び、黒焦げになったぜんまい仕掛けは誰にも気付かれずそして知られずに葬られた。


その学者はそのぜんまい仕掛けを一冊の本の中で発見した。一人の召使いの忘れられた日記群、大学の記録保管所の中で放置して腐らせられていた、がエステートセールで売りに出された一山の商品の一部として獲得されたのだ。彼はそれの真実を決して疑わなかった、彼が自身の提言を発表して教授陣の嘲笑の的となった時でさえも。彼は自分自身で資金を捻出し、他の合法的な様々なレベルの資源を利用し、そしてそれを見つけるための旅へと出発した。捜索と掘削が始まって八週間後、学者は立った、汗でぐっしょりと濡れ汚れた身で、その掘り出された一人の皇帝の悲しみを傍で見下ろして。

さらに二週間が輸送の計画を立てることに捧げられた。その装置は分解することが不可能であり、そして学者はその装置が既に受けている以上のダメージを与えるリスクを冒すことを望まなかった。それは穴からそっくりそのまま持ち上げられ、愛情を込めて箱に入れられ詰め物がされ、そして学者の家へと最大限の費用をかけて空路で連れ帰られた。そこでは、二つの部屋が壁だけを残して壊されくり抜かれ、そしてその怪物のような金属製の廃船がその場所へ移された。

何週間にもわたって、学者はそのぜんまい仕掛けの塊を覗き込んで精査した……しかし何も推測することはできなかった。躊躇いがちな、安全な実験はすぐにより大規模かつよりよく練られていない理論に道を譲り、それと同時に彼は大きなパネルをその破壊されて久しいパネルの上にぴったりと合わせて張った、それに書かれたより遥かに単純で直接的な表記法と一緒に。彼がそれまで取り組んできた授業や他の研究プロジェクトは苦痛となり、そして無視された。彼はますますよく探求をしよく支離滅裂な理論を爆発させるようになった、常にブツブツと「もう少しで解明できそうなんだ」という言葉を呟きながら。

他の人々は彼から離れていった、あたかも彼が自分たちに感染しうる疫病を運ぶとでもいうかのように。学者は自身が忌避されていることを無視し、最初の懲戒処分を約する手紙を無視し、それからついには解雇通告を無視した。いつも、いつも、その鍵の次の回転がそのパズルの最後の一片を与えてくれると思われ、そして歴史の中に彼の場所を築いてくれると思われた……いつもその次の一つ、その次の花瓶、その次の犬、その次の織物……その次の一つが最終的にパターンを示してくれると。そしてしかしそれはそうならず、それからその一つ後もそうならなかった。その次の一つも、必ず。

彼は衰弱した、最初は強迫観念によって、次には憤怒によって内部から蝕まれて。彼はその原因をその金属製の廃船から引きずり降ろしたいと思った、彼がそれまでにそれのために注いできた全ての痛みを返してくると思われるそれから。何とかして。

警察は彼をほとんど偶然に発見した。三人の娼婦がその先週に失踪を遂げており、二人の巡査が彼女たちが見つかる望みも興味もほとんどない状態で巡回していたのだ。ドアは彼らがノックすると静かに揺れて開き、内部にあるその静寂は彼らを吸い込み、銃はホルスターから引き抜かれた。彼らは彼を台所で、頑丈なロープで首を吊った状態で見つけた。彼の胸には一つのメモ書きがピン留めされていた:

私は神の手に触れてしまいました
そしてそれが悪魔と同じである事に気が付きました
地獄は私達の全てを取り巻いています
私がしてしまった事をお赦し下さい。

その二人の巡査は応援を呼ぶと同時にその家を徹底的に捜索したが、あらゆる自殺の過程において抱かれた退屈で麻痺した後悔の念以外のものが見つかることはほとんど期待していなかった。その地下室で見つかったものが正確には何であったのかを知る者は誰もいなかった。二人の警官のうちのただ一人が上へ戻ったが、彼が自身のそれからの短い余生の中で再び言葉を話すことは決してなかった。それが何であれ彼の顔一面には多数の奇妙な、突然襲われて付けられたような傷痕が残されており、そして彼の全身の骨はガラスの如く脆くなっていた。要請に応じた他の警官隊曰く、その家は彼らが到着した時には既に燃えており、確かに電線のショートか、あるいは一人の錯乱した自殺者によって放置されたストーブがそれを引き起こしたのだという。その火の根元から上がっていたようであったその呻き声と泡立つ嘆きの声は、間違いなくただのガスの漏れる音か金属のたわむ音であったという。

彼らは瓦礫が一掃されたことで姿を現したその黒焦げになったぜんまい仕掛けの塊をどうしたらいいか判断がつきかねた。連邦捜査局所属の捜査官らが訪れると、彼らはみなあまりにも安堵して捜査官らにそれを引き渡した。彼らに相手の人々が提示したIDカードをあまりに長い時間見ることも、事件をその後あまりに注意深く追跡調査することもさせなかったのはその安堵だったのかもしれない。その上物語は色褪せ、ストレスによって自殺した一人の専門家が引き起こした単なるもう一つの悲劇的な火災事故へと置き換えられた。


財団はこの上なく喜んだ、自分たちがそのアイテムを奪取したのがマーシャル・カーター&ダークよりもわずか数時間先んじてのことであったという事実を知って尚更に。

今彼らは座り、この摩訶不思議な狂気を慎重な、管理された孤独の中でつつきそしてつつき、物思いに耽っている。彼らはますます多くのことを学び、そして彼らがそうするにつれて、彼らの理解することは少なくなってゆく。彼らは混乱に陥りそしてよりゆっくりと憤り、その狂気は多くの者に均等に広がってゆく……だがそれでもなお彼らは滑らせる。彼らは押しそしてつつく、狂気に無理矢理意味を持たせようとして。

一つの子供の玩具から宇宙の秘密の数々を見破ろうとして。

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