いきものたち
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俺はヤツらには慣れていた。その脚。あんたはヤツらの脚の数がどれくらいなのか考えたことはないだろう。どうやってヤツらが肌や体毛を掴むのか。どうやって身体に容易くしがみつくのか。今じゃほとんどこそばゆいよ。ほとんど。

そのにおい。今じゃほとんどにおわない。最初の頃は、それは…それはかなり酷かったよ。俺はよく吐き戻した。そんで俺が飯にしようとしていた時にヤツらは俺の口に潜り込み始めやがった…だがその時俺は、俺がヤツらを食おうとしてもヤツらは気にしないということに気付いたんだ。俺がそれを受け入れ始めたのはその時だったと思う。最初は美味くなかった。だがそのうち…バリッ。虫ってのは独自の食感がある。濃くて、甘くて、いっぱいの…何なのか分からないが。それは俺が食べてきたものの中で最高のようだった。そしてヤツらは気にさえしてなかった。手を伸ばすだけで食えるものがそこには大量にあった…。

思うにヤツらは歌を歌って俺を寝かすのが好きなんだ。耳に入られるとそれを無視しがたい。まぁ、他のどこでもそうなんだが。どの生き物も常にチューチュー鳴いて動き回っているんだ。途切れることのない騒音さ。というか、夏の間はもっとうるさくなるんだ。もっとな。ただ俺は自分自身気にしてはいないと思う、ヤツらは単に歌うのが好きなんだ。ほとんど音楽のようなものさ。

…奴らが俺を見ているのが分かる。這いまわってる生き物じゃない、ちがう、人間だ。あんたが俺をどう見てるのか分かる。世界に忘れられたおかしな奴らが住む場所の中でさえ。奴らがそっぽ向いてさえ。俺は奴らが眼中で俺を憐れんでいるのが分かる。それかただ完全に気分が悪いのか。嫌悪しているのか。あんたもさ。あんたが俺の目を見ようとしているのが分かる。俺の髪でもない。歯でもない。そんな感じに見られたことがある。そうしたくないが、見つめずにはいられないってやつだ。やめられないだろう。誰だってできやしない。

まぁそれはいいんだ…いやいや、気にしないでくれ。あぁ、大丈夫だ。あんた、目が潤んでるぞ。少し席を外した方が良い。水でも飲んでくれ。腹の中も良くなるだろう。

ヤツらを洗い落とすのは諦めた。シャワーやバスタブだと大きさも足りないし、洗い落とすには水の量が不十分だ。試さなかった訳じゃない、その規模ではただ失敗に終わったんだ。というか、まだ強くごしごし洗った痕があるんだ。それで俺はヤツらを溺れさせるために水泳を始めた。ハーメルンの笛吹きの話みたいにな。ほら、彼はネズミどもを連れ出して川に溺れさせただろう。俺はいつだって水泳が好きだった、それがあの清潔な呼吸を僅かに与えてくれるより前でさえな。そしたら…そしたらヒルどもが俺を見つけやがった。

ヒルはともかく…アリが最悪だった。ヤツらはとにかく小さい。ヤツらは俺の髪、鼻そして耳、目の中…どこにでもたかりやがる。何千匹ものアリ、それは…それはただ…無理だ…言い表すことさえできない。とにかく想像してくれ、あんたの身体が隅から隅まで覆ーーいや忘れてくれ。悪かった。悪かった…。

…ネズミのことを話してさえなかったな。いつもとにかく,多い…。だが思うにヤツらはそこまで…。少なくともヤツらは暖かい。寒い中ヤツらが俺を温めてくれることも多い。毛羽立ったブランケットみたいにな。人々はネズミをペットとして飼う、そうだろ?それと変わらないんだ。みんなペットが好きだし…俺だってペットたちが好きだ。みんな愛してるよ…。

…俺は独りになることはないんだ…。

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