朝日が昇るよ
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「さぁ検数係さん、おいらのバナナを数えておくれ。朝日が昇るよ、ウチに帰りたいんだ。Day, me say day, me say day, me say day, me say day, me say day-ay-o。朝日が昇るよ、ウチに帰りたいんだ…」

少女は震えて毛布を近くへと引き寄せた。歌えば時には気が晴れるものだったが、今日はいつもより孤独さが増すばかりだ。

太陽が恋しかった。正直なところ、少女はあらゆるものが恋しい気分だった。お母さん、お父さん、お兄ちゃん…

階段を上るのをあの人に引き留められるべきじゃなかった、」 少女は独り言を呟いた。

多分、今日はもう一度出口を見つけ出そうという挑戦もできるはず…

少女は頭を振った。馬鹿げた考えだ、特に今日は。彼女の持っていた最後の懐中電灯は、少し前にとうとうバッテリーを使い切ってしまった。手元には食事も何も無いし、すぐに何かしら見つけられるとは思えない。結局、これまで試みた時の少女は何一つ手に入れられなかった。いつだってそこにはひたすら階段が続くばかり、上にも階段、下にも階段、かつてはドアがあったはずの場所にすら階段が…

「あー、うん、ホント汚いわ、このコンクリートの壁。それらしい物は無いわね。いや、待って、丁度ここがちょっとべたついてる。」

少女はパッと顔を跳ね上げた ― 何も見えないと分かっているにも拘らず。誰かが入ってきた! やった、良かった! 座っている床と同じぐらい幅の広い笑みが彼女の顔中に広がった。

「ねぇ! お願い、お願い私を助けて! 怖いわ、ここから連れ出して! 早く!」

少女は息の続く限り叫び、希い、間もなく支離滅裂にべそをかき始めた。一瞬が過ぎるごとに、彼女は闇がますます濃くなってゆくのを感じていた。泣いている合間に、少女は階段に木霊するゆっくりとした、しかし着実な足音を耳にしていた。

それが何時間も過ぎ去った頃、劈くような絶叫が少女の啜り泣きを止めた。

あの人に見つかったんだ。

足音の均等なリズムは、バタバタという必死の駆け足と叫びに変わっていた。何者かが徐々に近づいてくるのを聞きながら、少女はまた泣いて懇願し始めた。跳ねまわる光が、走り逃げる女性の前に、出鱈目に継ぎ合わせられた階段を照らしていた。泣き続ける少女の前についに降り付いた時、彼女は肩越しに後ろを振り返ろうとしている所だった。

少女は一本の刃が生えた指を伸ばし、その女の頭を綺麗に切り落とした。それを特徴の無い顔の怪物が手でキャッチし、少女が投光ランプを拾い上げて獲物を吟味している間、じっと見つめていた。美味しそうだし、肉付きもいい。彼女は彼に向かって頷き、彼はランプを叩き壊した。

「ホントにありがとね、おじさん。あなたがいなかったら私、どうやって生きていけばいいか分からないもの。」

顔は頷くような素振りを見せると、闇の中へひっそり帰っていった。少女の目はまだ光に合っている状態だったが、なにしろお腹がペコペコだったので、視界が不明瞭なのも構わず、右手々のうちの1つを使って死体を手当たり次第部位ごとに切り分け始めた。最初は腕。お次は足。そして残り。続く数週間分の食事を準備しながら、少女はずっと、ずぅっと前にここに降りてきたちっぽけな人類から教わった歌を歌い続けていた。

「六房、七房、八房のバナナ…」

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