押収文章1129-JP-B(あるいはトンガラシ翁の日記)
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押収文章1129-JP-B: 20██/██/██、SCP-1129-JP-Aから██冊の書物が押収されました。書物の内容からSCP-1129-JPの飼い主本人によって執筆された日記と推測されています。以下はその内容を一部抜粋したものです。

長い命を得る儀式のために、カワウソを仕入れてきた。本当なら河童を用意したかったが、監視の目が厳しく断念せざるを得なかった。
だが悔やんでも仕方がない。私はカワウソに知能向上の術を施した。しかし疲れたので教育は明日からにしよう。

早速、例のカワウソに言葉を教え始めた。最初は手こずっていたが、私が簡単に教えてやると直ぐに理解したようだ。
この調子なら予想より早く次のステップに進めそうだ。しかしカワウソというのも呼びづらいな、アヒージョの材料として連れてきたので、その名にしよう。うん、それでいいか。

もう█日、アヒージョの学習能力は著しいものがある。もう幼児が使うような言葉を使用しているではないか。
これでこの為だけに用意した教材が無駄にならずに済んだな。███ユーロもしたんだ、良い食材になってくれよ。

あれから█週間も経ったが、予想以上に物覚えがいいカワウソだ。タイピングによる意思疎通も既に人間の学生のものと変わりない。
そろそろアヒージョに航空機の操縦も教え始めても大丈夫であろう。

やはりアヒージョは予想以上に優秀だ。航空機の操縦の手順を少し教えただけで、すぐさま乗りこなすようになった。
中古品を改造したものとはいえ、高い金を払ったんだ。これぐらい出来て貰わないと困る。この調子なら調理した時の効果も期待できよう。楽しみだ。

アヒージョが事故を起こした。慣れ始めが事故を起こしやすいと聞いたが、まさかアヒージョが起こすなんてな。
おかげで治療用の魔術アイテムを使うはめになったが、ここで死なれたら困るからな、仕方がない。暫くは操縦の練習は中断だな。

一時期アクシデントがあったが、もう一流の飛行士と変わりがない操縦技術だ。それに言葉の理解度も一般的な人間と区別が付かない。
あとは好きに飛ばして成熟させるだけだ。近い内に門限付きでの自由飛行を許そう。

アヒージョのやつが門限に遅れて帰ってきた。理由も理由だ。何が「空を飛ぶのが楽しくて」だ。
つい怒りでハリッサの瓶を投げ付けてしまったが、食材ごときが言い付けを守らず言い訳をするからだ。今日はもう疲れた。寝よう。

アヒージョのやつが門限を過ぎても帰って来ない。遠望の術を施した望遠鏡で辺りを見回してみたが、姿形も見えない。
あいつめ、自分の立場というものが解っていないのか。明日はもっと捜索範囲を広げよう。

あれから█日、アヒージョの姿は依然として見つからない。一体何処で何をしている。
このままでは、長命の存在になるという夢が潰えてしまう。何としてでも見付けなければ。

バルセロナ周辺だけでなくスペイン全域を覗いてみたが、姿形も見えはしない。早くしなければ███年も続けてきた長命の儀式が台無しになってしまう。
見つけたら罰を与えなければならないな、くそったれカワウソめ。

欧州中も捜索してみたが、アヒージョの姿は依然として見つからない。
もしや何者かに捕らえられたか……いや、そんなことはない。
あの航空機には不可視の術をかけてあるのだ。そうそう捕まるはずがないのだ。きっと何処かに不時着してるはずだ。

何日も見つからないとなれば、海にでも墜落したか。高い金を掛けたというのに……あのクソカワウソが。
仕方がない。また新たなカワウソを作るとしよう。

今回の食材は失敗だ。言葉こそ理解はしているが、航空機の操縦はからっきしダメだ。何度教えても上達しない。
私が必要としているのは、空を飛ぶカワウソだ。飛べないカワウソなど不要だ。最初は処分してやろうとも思ったが、後始末は面倒だ。なので闇市で売ってやった。
結果としてどこぞの東洋人に高く売れた。ありがたいが、物好きな奴も居たもんだ。この金で新たなカワウソを仕入れよう。

今回も失敗した。知能向上の術を施したら喧しい鳴き声を上げながら死んだ。
小型の種類を選んだのが間違いだったか。死体は山の中に棄てた。次は大型の種類……オオカワウソにしてみるのはどうだろうか。

術をかけたら突然襲い掛かってきたので、手に持っていた杖で殴り殺してしまった。
今回も失敗した。何故あれ以降成功しない。手順は変えてない筈だ。

何故失敗する。どうして成功しない。まさかアヒージョこそが最高傑作だというのか。
幾度も続くカワウソの購入で貯金が尽きた。再びアヒージョを探すしかないようだ。[罵倒]。

アフリカ、アジア、オセアニア、南北アメリカの確認を忘れていた。まずはアジアあたりを覗いてみたが、やはりアヒージョの姿は見えなかった。次はアフリカあたりを探してみよう。

今日はアフリカあたりを見てみたが、いつも通りの光景であった。
相変わらずあの大陸は混沌としている。そこにもアヒージョは居なかったが。次は南米だ。

南米にも居なかった。他に書くことがあるとしたら、治安はどうにかならないのか。
アヒージョは北米かオセアニアの方に居るのか。今日はもう遅いので明日、確かめよう。

北米でも発見は出来なかった。残るはオセアニアだけか。
南極の可能性も考えたが、あのような過酷な環境ではアヒージョが生きられる筈がない。

オセアニアにも居なかった。まさか南極に居るのか?

南極にも居なかった。どこか見落としているのか……また欧州から確認するべきか?

居ない。

見つからない。

アヒージョは何処にいる!何故世界のどこにも居ない!
あのくそったれカワウソめ!もしや私の計画に気が付いたのか!おのれ!おのれ![以後、罵倒が████字も続く]

何故だ、何故私がこのような目に会わねばならぬ! こんなところで私の長命への[血痕により解読不可、おそらく吐血によるものと推測される]

もう儀式の手順はとうに続行できない。█████も食べ尽くしてしまった。乳牛ももう全部死んだ。
これもアヒージョが逃げ出したせいだ。見つけたら足をもぎ、少しずつ腹を引き裂いてやる。あいつは楽に殺さん、恐怖と絶望を与えてやる。

とうとう儀式用の食材が尽きた。これで私の夢も潰えたか。いや、せめてアヒージョさえ見付かれば少しは命を長らえさせることはできよう。アヒージョさえ見つければ……アヒージョは何処にいる。

今日もアヒージョの姿は見えず……それどころか、ピーターの姿が見えた気がする。
いや、そんな筈はない。ピーターは既に食べ尽くたんだ……おそらく疲れからくる幻覚だろう。くそったれめ。

ピーターどころか、イシュケンベやパエリアの姿も見つけてしまった。これは幻覚だ。
これもアヒージョが見つからない苛立ちによるものだろう。きっとそうだ。

起きたらピーターが見ていた。とっさに手を振り払ったら消えた。
昨日は血を沢山吐いた。空腹も収まらない。幻覚も酷くなってきている。

暗闇からイシュケンベが覗いている。ピーターが窓から見ている。パエリアが身体にまとわり付いてくる。
こんな幻覚を頻繁に見ている。いや、幻覚なのか? 幻覚に違いない。そうだ。幻覚だ。

アヒージョが帰って来た。私は早速アヒージョを殺して食べた。
中々の美味であったが、どうしてか空腹は満たされなかった。相変わらずあいつらはこちらを見ている。

食べたはずのアヒージョがまた帰って来た。また殺して食べた。
そしたらアヒージョがまた帰って来たので、また殺して食べた。まだ空腹だ。

アヒージョを何度食べても空腹は満たされない。だからアヒージョをまた殺して食べた。
アヒージョは相変わらず美味だ。腹はまだ満たされない。

今日もアヒージョを殺して食べた。空腹。

アヒージョを食べた。あいつらはまだ見てる。

また食べた。残りのアヒージョは明日食べよう。

沢山のアヒージョが見てる。

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