コグはかせと、プラスチックの幻想
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ある日、コグ博士は研究室をてくてくと歩いていました(科学者だったりしたのです)、するとクロウ博士がかまって欲しそうにしているのに気が付きました。クロウ博士の思惑はすんなり通りました、だってコグ博士はとても退屈していて、クロウ博士は喋れる犬だったからです。

「これは見ておかないとダメだよ。」
クロウ博士は言い張って、すこし興奮している様子でした。
「これは本当に興味深いんだ。」

「はい、私には今のところ進行中の研究はありません、ですから、案内して下さい。」
コグ博士はいつもの一本調子で答えました。

2人は、色んな廊下を歩いて、色んなエレベーターに乗って(クロウ博士は上手に階段をのぼれません)、また、二足歩行の博士は所々でかけられる世間話をさけていました。

「何か興味深い仮説は?」
クロウ博士はたずねてみたいと思いました。
「爆発するカニか、自己認識をしているパイプの迷路で、何か研究の成果は出た?」
コグ博士は咳払いをして、え〜っと言うだけでした。でもこれは全部この博士に任せられていた仕事でした。

とても多くの角と下り坂をこえた後、2人は暗い展望室につきました。大きな一枚の窓の向こうには男の子がいました。たぶん10才ぐらいの男の子です。

「これは何であると仮定されていますか?」

「これはね、」
クロウ博士は、前足をはためかせながら、男の子を指し示していました。
「この小さな男の子はプラスチックだけを食べるんだ、それにこの年の平均的な子供よりも、およそ三倍強い。」

「興味深い。特に危険ではありません。鎮静剤を投与して、四ヶ月間一連のテストを行いましょう、そして何らかの障害がないならば、破壊予定アイテムに指定します。」

「あのね、コグ、僕達はずっと友達だっただろう。少なく見ても研究パートナーだった。君は、僕なんかには想像できないほど変なものを沢山見てきたんだろうけど、結局僕にはわからないんだ。なんで君は、コレみたいなものを、そう簡単に仕分けできるの。」

「例えば?」

「例えば、メガネを掛けた犬が小さな子供を『現状の課題』であるからって殺そうって頼んでいることとかさ。」

もうコグ博士は部屋を出ていこうとしていました。そして答えました。
「別のものが、また明日には出てくるからです。」

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