“原初
与える者の使節あり
その数九百万九千九百九余り
各使は一域を主とし
各域に必ず一使あり
宇内の命に秩序あり
[1]
ECO出版社は並行世界の出版会社です。一般的な情報媒体(紙やディスク、レコード等)を利用して、異常な物品を生産する能力を有しています。時空的な問題から、財団はECO出版社が属する世界の文化風俗、地理環境、空間構造等の情報に関して、殆ど知り得ていないのが現状です。ECO出版社も同様に、財団が所在する宇宙に対して、信頼できる観測手段を欠いており、特定の物品を通してのみ、限られた範囲での観測を可能にしているようです。
ECO出版社は中国語をコミュニケーションの主体としています。一部の構成員は熟練した英語や漢文を行使することが可能であり、財団宇宙における同名の言語と比べても、言語学的な差異は見られません。実験および交流ログの内容から、ECO出版社の宇宙は財団宇宙とほぼ同一の歴史プロセスを経ていることが判明していますが、歴史の乖離度を確認することはできていません。
当組織によって生産された製品が持つ異常性の大部分は、肉体に直接的な損傷を与えるものではありません。また、その殆どが強い精神影響作用を伴っているものの、通常、これらの作用が人員の死傷を招くことはありません。現在入手している情報によると、ECO出版社は財団宇宙との敵対を望んでおらず、むしろ探究しようとする意思を示しているほか、財団が接触した他の並行世界に対しても、強い興味を抱いています。
ディエゴ 博士
職位: 上級研究員/ECO出版社関連オブジェクト担当主任
プロフィール: モンゴロイドの男性。20▇▇年からサイト-CN-▇▇に勤務。SCP-CN-608に起因するインシデントの後、ECO出版社に関連する全てのオブジェクトと共に、サイト-CN-05に異動。SCP-CN-608のインシデント中、際立った活躍を見せ、[データ削除]したことから、ECO出版社が関わるオブジェクトの担当主任に昇格する。
ディエゴ博士自身はあまり主張しないものの、フレンドリーな性格であり、人助けを進んで引き受けている。仕事の合間には、サイト内の職員とTRPG『World Of Darkness』を通したレクリエーションに興じている。ディエゴ博士は傑出した論理分析能力と知識を備えているが、戦闘能力はあまり有していない。
[データ削除]を鑑みるに、ディエゴ博士は現在、ECO出版社の"思想実験"系オブジェクトを対処できる唯一の職員と考えられている。オブジェクトの処理にあたる際は、レベル4のセキュリティクリアランスを持った職員として扱われることになっている。
- SCP-CN-608に起因するインシデントの後、ディエゴ博士は概念上、人間とその他の知的生命体との区別がつかなくなっている。しかし、外見の特徴を通じて見分けることは可能。
- SCP-CN-638の実験A-638-α-1407の後、ディエゴ博士は発音のアクセントを調整する能力を喪失した。
- SCP-CN-648の無力化から72時間後、ディエゴ博士は他人に対し、言葉を用いて「助けを求める」ことができなくなった。ただし、文字を用いての表現については問題ない。
ジェファソン・ベルルスコーニ
職位: ECO出版社上席編集長/思想実験オブジェクト担当主任
プロフィール: ヨーロッパ系の男性。20██年にECO出版社へ入社。悪辣な観察眼と鋭い評論能力が受けたことにより、優秀なベストセラー作家として何度も抜擢されている。その傑出した活躍が元となり、ECO出版社の社長が自ら企画する"異世界原稿"系オブジェクトの管理を任されている。
融通の効かない性格のように見えるが、実際は非常に臨機応変な対応力を持っている。しかし、彼がこうした能力を完全に仕事へと注ぎ込んだ場合、その間、他者とのコミュニケーションをおざなりにしてしまう。
"思想実験"オブジェクトはECO出版社が財団宇宙に対して特別に投入しているもので、目的は当宇宙におけるECO出版社の評判を急速に高めることにある。
- ジェファソン・ベルルスコーニには7年以上連れ添う妻がいる。両者の性格は全く異なるものの、不和はあまり生じていない。
- "思想実験"オブジェクトはECO出版社の社長が命名したものだが、計画・実行権はすべてジェファソンの手中にある。
- ジェファソンはSCP-CN-608に起因するインシデントにより、ECO出版社社長から処分を受けている。しかし、人員に死傷者を出さなかったことから、辞職は免れている。ECO出版社社長は現在、財団へ対するお詫びとして、物品の贈呈を検討している。
著者や読者、絵師、コーダーの皆様、初めまして。このページを開いたということは、あなた方は恐らく、ECO出版社にちょっぴり関心をお持ちなのでしょう。私は何人かの友人と話し合い、当GOIに関する情報をQ&A形式を用いて、出来るだけ詳しく紹介することにしました。理解の一助にして頂ければ幸いです。
Q:ECO出版社とは何か?
A:ECO出版社はSan Diego 555という新参者がSCP-CN-618を執筆した際に思いついた並行世界の組織で、(618が皆様からの歓迎を受けたために、)当記事の記述をベースとして練り上げられた、出来立てホヤホヤの要注意団体です。
大前提として、ECO出版社は並行世界に存在する組織であり、「並行世界」とはまさに、ECO出版社の核心部分となっています:第一に、彼らの宇宙は、財団からしてみれば"遥か彼方"に位置する並行世界です。ECO出版社は並行世界の探索に熱中しており、特ダネを仕入れたり、並行世界に事業を展開するため、支社を開設したりします。彼らは異世界を繋ぐ架け橋、中継ステーションであり、多くの世界の盛衰を見届けると共に、様々な異常物品を制作しては、他の世界に提供してきました。
次に、ECO出版社は風刺性のある組織です。彼らが作り出したブツは、主に何かを風刺するためにあります。彼らは時事問題を皮肉ったり、時代の悪弊を批判したり、流行りのネタで遊んだりすることがあります。しかし、大まかに言えば、彼らはゲーマーズ・アゲインスト・ウィードのような、流行をピッタリと追いかけるような組織ではなく、もっぱら忘れ去られた事物を掘り返して、あれこれとスクープするような組織であると考えられます。
また、ECO出版社には方針があります。ご存知の通り、彼らは企業です。彼らは利益のために行動しますーーたとえ、この"利益"が我々の想像する所とはやや違ったとしても:ECO出版社は並行世界でのネタ探しに力を入れています。彼らが財団宇宙に注目している理由は、そこに並行世界の品々が数多く存在していることにあります。できることなら、彼らはまた別の宇宙に支社を設置して、ネタ探しをより円滑に行おうとするでしょう。
これらを反映してか、ECO出版社が製造する異常物品は通常、人に死傷をもたらすものではありません。言い換えると、彼らが出品するオブジェクトは基本的に、無害であるか、正しく使用すれば危害を及ぼさないものばかりです。結局の所、ECO出版社は企業であるため、彼らの目には、他の並行世界は全て、潜在的な取引先として映っています。長期的なビジョンを持つ商人は、目先の利益を貪るような真似はしません。ましてや、危険な製品を作ってしまっては、事業発展に多大な損害を与えかねないのです。
最後に、ECOは出版社です。これは、彼ら自身が生み出すアノマリーは通常、出版社が生産する製品に沿ったものであることを意味します。言い換えると、ECO出版社が生産する物品は皆、物質的な情報媒体(紙やディスク、カセットテープ等)であり、異常性も通常、媒体内に含まれる情報に関係しているということです。
Q:ECO出版社の宇宙には、異常を収容/破壊する超常組織は存在するの?
A:ECO出版社の宇宙では、彼ら自身が異常物品を生産・収容・破壊する組織となっています。彼らは危険な異常物品を収容し、救いようのないものについては破壊し、有用なものは利用するでしょう。こうした業務はすべて、並行世界の情報を収集する目的の下に行われています。
他の超常組織については、ECO出版社に吸収されたか、潰されたかしており、8~9割が消滅しています。つまる所、ECO出版社は当宇宙のアノマリートラストを形成しています。
その他、ECO出版社は自社の方針に基づき、異世界由来のアノマリーもいくらか収容しています。これらのアノマリーは当然ながら、ECO出版社が独自に出品しているアノマリーの特徴と符合しません(言い換えれば、これこそがECO出版社に時折、場違いなブツが存在する理由なのです)。
Q:ECO出版社は財団宇宙に対し、植民や邪魔をしようと考えていますか?
A:基本的には考えていません。実際の所、事業拡大を妨げることとなるので、ECO出版社は他の並行世界にいかなる植民活動も行っていません。
また、彼らにとって財団宇宙の価値は、他の並行世界からの来訪者や物品が存在する点にあり、宇宙自体の価値については、これらに遠く及ばないものとして扱われている可能性があります。
しかし、機が熟した時には、彼らは財団宇宙に支社的なものを開くかもしれません。
Q:ECO出版社が所在する宇宙の科学技術や社会構造、生活環境はどのようなものですか?
A:基本的に、財団宇宙と同一の科学水準を保持しています。社会構造も似通っていますが、各国の真の最高指導者は政府首脳ではなく、各国にあるECO出版社の取締役となっています。ーーそうです、ECO出版社の宇宙において、政府はすべて企業国家と化しており、政府のバックに付いている企業は、ECO出版社ただ1社のみとなっています。その一方で、政府とECO出版社は通常、独立性を保ちながら発展しており、特殊な状況下でのみ(非常時になると、ECO出版社の社員が優先権を獲得します)、ようやく連携をとるようになります。
その他の面における、ECO宇宙と財団宇宙の最大の差異は、東西世界が地理的に反転しているという点です:古代中華帝国はアジア=アフリカ=ヨーロッパに跨る巨大な領域を支配し、地中海を自らのバスタブとしていました。太陽神ラーを崇めるエジプトは、ガンジス川において農作に励み、東アジア一帯では、ローマ王朝が崩壊・分裂し、後継国家が乱立していました。ECO出版社の本社が所在するイタリアは、東アジア沿岸部から黄土高原にかけての地域に位置しています。しかし、これらの点を除けば、歴史の大まかな流れや人物、事件は財団宇宙と一致しています。
また、国家自体はそのまま存在するものの、言語に関しては、地理に基づく変化が生じています。例として、ECO出版社の宇宙における中国は、簡略化されたラテン語を使用しており、純粋な中国語はイタリアにおいて使用されています。
Q:Freedom KOO博士の創世学講座に照らし合わせると、ECO出版社の宇宙規模はどのくらいありますか?
A:ECO出版社の宇宙規模はとても小さいものです。地球を除いて、当宇宙には文明がほとんど存在しません。これについては、そうした考えが今までさほど重要視されなかったことも理由にあります。
しかし、ECO出版社自体の規模は相対的に大きなものとなっています。上述の通り、ECO出版社の目的は"並行世界の情報を探求する"ことにあります。財団宇宙は彼らが初めて接触した並行世界ではありませんし、最後に接触した世界でもないでしょう。言い換えれば、無数の並行世界で起きた物語も、ECO出版社の一部分になり得るということです。
Q:ECO出版社は何ではないか?
今の所、ECO出版社のSCP記事やTaleで低評価削除されたものはありません。また、Jellyfish氏を除いて、ECO出版社に関するTaleを執筆した方はいません。したがって、私もECOが何ではないかについては、あまりはっきり言えないのが現状です。
結局、あなたはどんなものを書きたいのですか?
ご存知の通り、ECO出版社のオブジェクトの多くは、Q&Aにおいて説明したように、並行世界の情報を入手するために製造された、風刺性のある出版物です。それらは通常、人に危害を与えませんが、一部例外が混じっている場合もあります。
こうしたブツを執筆するのは容易ではありません。つまる所、こうしたオブジェクトの多くは、私の個人的な作風が詰まったものです。この手の作品を書きたくない/あまり向かないと感じても、気にする必要はありません。あなたにはまた別の選択肢が存在します。
先ほど書いたように、ECO出版社の本質は「並行世界を探索する」組織であり、当然のことながら、あなたはこうした「並行世界」のオブジェクトについて執筆することができます。この場合、ECO出版社の自社製品よりも制約が少ないものとなるでしょう。しかし今度は、別の角度からより良い記事を書く力が求められてきます。
「オブジェクトはどのようにして財団宇宙に流れ着いた?」「彼/彼女/それが属する世界には、どういった特徴が存在する?」「財団がオブジェクトを収容する際、ECO出版社はどのような役割を果たした?」
並行世界系の物語に触れたことのない方にとっては、こうした問題は大変難解なものとなるでしょう。ここではいくつかの例を挙げて、詳しく説明していきます。
オブジェクトはどのようにして財団宇宙に流れ着いた?:偶然・唐突に転移してきた/財団宇宙へ意図的に送り込まれた/オブジェクト自身が元いた世界から逃れ、財団宇宙に辿り着いた
彼/彼女/それが属する世界には、どういった特徴が存在する?:元の世界の財団は消滅しているが、新たな組織が財団の遺骸を元に、秩序を再建しようとしている世界/アノマリーが1つしか存在しない世界、住民はそれを道具として使用してきた/財団宇宙より後の時間軸に位置する近未来世界。それ以外に差異は見られない
財団がオブジェクトを収容する際、ECO出版社はどのような役割を果たした?:ECO出版社は並行世界のネタをさらに仕入れるため、当オブジェクトを財団宇宙に送り込んだ/ECO出版社は当オブジェクトを収容していた/当オブジェクトはECO出版社の並行世界移動装置を使用した
この中からいくつかを組み合わせることで、そこそこ良い感じなアイデアを練り出すことができます:
SCP-CN-XXXは財団が消滅したものの、「モスの物見櫓」と呼ばれる組織が、財団の遺骸を下に世界を再建している宇宙よりやってきた。当オブジェクトは組織のコントロールから逃れるため、ECO出版社が当宇宙に残した並行世界移動装置を用いて、財団宇宙に辿り着いた。
もちろん、上記は個人的に挙げた一例に過ぎません。皆さんは自身の観点から、自身に適った異世界の物語を書くこともできます。
つまり、あなたは何を言いたいのです?
実のところ、執筆ガイドは上記ですべて終了しました。以下のものは全部、個人的な意見となります。
私個人としては、誰が書こうと、どのように書こうと、物語にはすべて出発点が存在すると考えています。言い換えれば「あなたはこの作品を元にして、何を言いたいか」ということです。
ECO出版社は目下、風刺(あるいは告発)を主体としています。しかし、これは私自身の作風が原因となっています(私は他の方がこうしたイメージを変えられるような作品を書き上げるを歓迎しています)。618は"名著"、638は"家族愛"をテーマにしていますが、あなたはどんなものを書いても構いません。これらは完全に個人的なものです。
しかし裏を返すと、もしあなたがこうした出発点に欠いていたら、つまり、あなたの執筆する作品が、単に「超絶クールなアイデアだと思って、絶対に書き上げて皆に見せないといけない」という動機で書いたものであるとすれば、大抵の場合、失敗に終わるでしょう(もちろん、中には特例も存在します。しかし、特例が特例たる所以は、それらが滅多に見られない稀有な例であることにあります)。言いたいことは何か、何を読者に伝えたいのかについて、きちんと整理してみてください。そうすれば、あなたの記事が生き残れる保証はできませんが、少なくとも……記事についてのファイナルアンサーが得られると思います。
何はともあれ、頑張ってください。
…………
Diego 純粹探尋者已然無多。
Wang Xingrui 知其道途者已然無多。
Jefferson Berlusconi 了然其処者已然無多。
而知其然者。
知其所以然者。
幾多猶記足下本心?
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…………
逢試608其一,惑吾言者,万般自若。
逢試638其二,恕吾行者,諸事無牽。
逢試648其三,誨吾知者,川流不息。
逢試███其四,予汝能者,安可捨得。
███試終峰壑,鏡中端倪,前路何従?
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…………