最高のラーメンを求めて
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俺は鈩場、エージェント・鈩場。何を隠そう、財団のフィールドエージェントだ。いや隠してるんだけど。
現在俺はフリーである。要するに休暇中だ。よって財団フロント企業の作業着じゃなく、普通のジャンパーを着ている。ズボンは擦り切れたジーンズだ。持ってる鞄にも装備なんかは入ってない。一応、カバンの二重底に財団用の端末は用意してあるが。
それで、俺が何をしているか。それは食べ歩きだ。俺はラーメンには目が無いんだ。以前長期休暇が取れた際には本場博多で豚骨ラーメンを食い尽くしたほどだ。財布の中身も食い尽くされたがね。
今日はどこか新店舗を発掘したいと考えている。出会いを求めているんだ、俺の舌がな。
数刻ほど歩き回り、良さげな店舗をいくつかピックアップする。クク、オブジェクトを探す時よりも真剣なんじゃないか? 何たってそうさ、オブジェクトと違ってどいつもこいつも主張してくるからな。店構え、行列具合、漂う臭いと看板メニュー。総合して決めなければ。
そして、ターゲットは決定した。木造風の外観なラーメン屋だ。看板メニューは豚骨ラーメン。客足は現在16時なので判断し辛いが、そこは賭けである。
暖簾を潜り、カウンター席を陣取る。店の中は清潔そうである。水はセルフのようなので、注文してから取りに行こう。メニューは、どうやら壁掛けのお品書きのみのようだ。特殊なものを頼む気は毛頭ないが、取り敢えずざっと見渡す。ラーメン、チャーシューメン、ワンタンメン……
と、ここで気付いてしまった。

「……が、頑固親父のバリカタラーメン」

報告書を見た事がある。間違いない、アレはそうだ。

SCP-254-JPだ。

何でも注文するととんでもない化物ラーメンを食わされるとか何とか。水銀ラーメンなんか冗談じゃないぞ。食い物ですらないじゃねぇか。
しかし妙だ。アレは現在財団が管理している筈。収容こそできていないが、特定の地域に限定されている。この店舗はその領域の範囲外の筈だ。まさかKeterクラス故の拡散力でまた勢力拡大なんて事じゃないだろうな。
落ち着け、取り敢えずアレを頼まなければ良い。その後で報告だ。全く、休暇だというのにこんな事になるとはな。

……ちょっと待て。

俺は大変な事実を思い出してしまった。そうだ、あの報告書に書かれていた。憶えている、俺は憶えているぞ。
そう、あのオブジェクト。条件が良ければ絶品ラーメンを食わせてくれると書いてあったのだ。
条件とは値段。大慌てで店のお品書きを確認する。書かれていた値段は800円。
報告書の絶品ラーメンも、確か800円。
思わず唾を飲んだ。これは、チャンスだ。オブジェクトなんか一介のエージェントである俺には扱えない代物である。ここで食わなければ二度とチャンスは訪れないと思っていいだろう。しかし、危険は伴う。まともな値段だから安心できるなんて保証はどこにもない。何よりこのオブジェクト、食い終ったら消失する。
気付けば、店の親父が怪訝そうな目で俺を見ていた。いかん、悩みすぎているか。ここは決断せねばなるまい。財団エージェントとして、やらなければならない時もある。そう男ならスパッと。

「頑固親父のバリカタラーメンを。大盛りで」

 


201█/██/██にエージェント・鈩場よりSCP-254-JPが新たに発見されたと報告されましたが、誤りであったことが分かりました。
報告を受けた機動部隊が店舗を調査した所、お品書きは「頑固"オヤジ"のバリカタラーメン」ではなく「頑固"親父"のバリカタラーメン」であり、元々この店のメニューに存在することが明らかとなりました。
エージェント・鈩場は「オブジェクトじゃなくて残念……いや何よりだ。絶品だったよ」と報告しています。結果として問題は無かったものの、個人の独断により収容違反を招く恐れのある行動をとったため、厳重注意が言い渡されました。

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