財団経理課
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「ああ、くそっ、今日も請求書の整理かよ 毎日毎日、頭がおかしくなりそうだ」
彼は新任の経理係。苛立っている理由は配属されてからというもの、毎日大量の請求書の仕分けをし続けているからだ。
財団のDクラス以外の職員はエリート階級だ。おそらく、人類が考えうる限りのあらゆる技術と物資と頭脳がここに結集している。
ここには国家も思想も北も南も無い。あるのはただ三つの言葉だけだ。すなわち、Secure(確保).Contain(収容).Protect(保護)。
だがいかに優秀な科学者や、屈強なエージェントや卓越した技術者達が集まった所でそれだけでは組織は機能しない。
円滑に組織を回していくには縁の下で働くものたちが必要なのだ。世界の縁の下のそのまた下で働く。結構なことだ。
しかし実際にやっている事といえばつまり巨大で危険な動物園の飼育係りだ。動物たちはとても種類が多い上にみなグルメで気位が高い。
だからそれぞれに固有の餌や飼育施設が必要になる。唯一の救いは税金対策に頭を悩ませる必要がない事くらいだ。
財団から税金を取るわけには行かない。財団は存在しないのだから。

そして彼は今日もまた、手押しカートいっぱいに積まれた備品申請書の束と格闘するのだ。
「先輩、この猫の餌・・・「サイエンス・キャット・パートナー 徳用4kg」って何に使うんですかね?」
『そいつはSCP-012-JPと222-JP用だ。 許可。』
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「先輩、クラス4バイオハザードスーツ12着ってのは何ですか?」
『知らないほうが良い。12着は多いな、シフトを考えても8着ですむはずだ、要調査。』
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「先輩、アクセサリー用のクロスってこれ絶対私物を申請してますよね?」
『いや、SCP-016-JPに必要だ。許可。』
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「先輩。」
『なんだ?』
「いえ、なんでもないです・・・・。」
『疲れてるのか?カウンセリングを手配してやるぞ。』

「先輩、このうまい棒12本とチョークっていうのは・・・? SCP-085-JPに関する事項だと書かれています。」
『サインは誰だ?』
「エージェント・餅月とあります。」
『却下しろ。』
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「ポリエステルの古着・・・ 古着? 有機リン系殺虫剤「スーパーコンバット・PRO」20t・・・ 農業でもするんですかね。」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「ぺヤング焼きそば大 4カートン・・・。サインはエージェントカナヘビです。」
『却下。ハエでも食べてろ。』
「仕出弁当五人前。SCP-105-JP捜索に使用・・・。」
『却下。』
「ですよね。」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「500円硬貨50枚。いったいなんのつもりなんですかね、却っ」
『おいおい、許可だ許可。そいつは無いと爆発するやつが居るんだ。』
「爆発ですって?」
『そうだ、爆発だ。』
「先輩・・・ 僕、もういやになってきました。頭がおかしくなりそうだ・・・」
『まだサイト-8102と8161の分しか終わっていないぞ、残業になりたくなかったらさっさとやれ。』
「はい・・・。」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。

「砂礫20トン・・・ なんですかこれ?」
『穴を埋めるんだよ。』
「穴…?」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「せ、先輩、この█████とか███ってのは一体何に使うんですか?」
『モントークだ。』
「…?」
『モントークだよ。██████████するのさ。…どうした、顔色が悪いぞ。』
「…」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。
「ええと、次は前原博士…」
『却下しろ。』
「え?」
『却下だ、お前の名前でな。』
「はい…」
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。

「先輩、僕にはもう無理です…。世界の平和を守る仕事って聞いてたのに、こんなのあんまりですよ!」
『何を言ってる、大事な仕事だぞ。』
「すいません先輩、僕はもうダメです…やっぱり、辞めさせていただきます…。」
『…そうか、じゃぁ手続きをしてやるからK-27の執務室に先に行ってろ、俺はコレを済ませてから行く。』
「すいません、すいません先輩…」
『あやまる事じゃないさ。』

新米経理が部屋を出て行くのを見届け、男は大きくため息をつき無意識の内に胸ポケットをまさぐっていた。
『禁煙だったな。』
男はひとりごつとスマートフォンを取り出した。
『あー、もしもし、賭けは俺の負けだ。思ったより早かったぜ、くそっ。 対象はk-27職務室だ、そう、記憶処置を頼む。』
男はスマートフォンを置く。
『世界の平和は守られましたとさ。』
書類にはんこを押し、所定のボックスへ入れる。

了。

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