SCP-3002-2

2015年12月15日(火)8:03pm、O5-1 (o5_1@foundation.scp) 文筆:

R.

彼女が戻って来たということなのか、それとも彼女の記憶の寄せ集めにすぎないのか私には分からない。思考? レテ・プロジェクトが予期せぬ副作用を有していた可能性があるということだろうか? 彼女が戻ってきて我々を害することがないようにしたい。本件には目を光らせておくように。

A・ヴェレス
O5司令部
o5_1@foundation.scp


文書執筆者: ダリル・ロイド博士
日付: 2015-12-13

警告: 以下の文書はクラスII情報災害(危険度少)を含んでいます。ミーム安全化プロトコルを実行しました。使用シードsX82hPkl4.

アイテム番号: SCP-3002

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-3002に関する唯一の報告書がサイト-41の異常文書保管庫に格納されています。試験は03/3002クリアランスを持つ職員3名以上によって行わなければなりません。被験者および活性CL-IIミーム対抗因子を持たない職員には実験後にクラスC記憶処理を施さなければなりません。SCP-3002に関する全ての文書は、クラス2情報災害を抑制可能なミーム対抗因子を有していなければなりません。また文書をSCP-3002研究エリアから持ち出すこと、ならびにSCP-3002プロジェクトと無関係の職員に見せることは禁止されています。

SCP-3002への曝露による長期的な研究および分析のため、最初にSCP-3002の影響が確認されたグループのうち1名だけを標準人型収容室に収容してください。

SCP-3002の被影響者が発見された場合、最初に汚染が確認された時期に応じてクラスCまたはクラスB記憶処理を施さなければなりません。現在、言語を用いた確認をせずともミーム的・物理的にSCP-3002の被影響者を判別できる手法を研究中です(暫定的にヴェセルカ・プロジェクトと命名)。このプロジェクトについてさらに情報を得たい場合はロイド博士に尋ねてください。

非緊急更新 - 2016/██/██: ヴェセルカ・プロジェクトは初期試験の段階でインタビューの必要なく被影響者を判別するという大きな成功を見せており、最終試験が始まっています。プロジェクトを適切に活用するための機材とマニュアルが財団サイト、ならびにイリノイの数ヶ所とインディアナに存在する工作員に届けられています。担当エージェントはまずインディアナポリスやシカゴなどの人口の多い地域から調査を始め、その後人口の少ない地域へと移るようにするべきです。

説明: SCP-3002は曝露対象の記憶に対してのみ効果を発揮するクラスII伝染性ミーム災害です。SCP-3002は対象の精神に記憶を挿入し、対象はこの記憶を自らのものであると認識します。SCP-3002はこの異常記憶について述べるあらゆる伝達形式(文書、発話を含む)により伝染します。

通常SCP-3002の記憶は対象の少年期に挿入されます。全ての報告には「最も親しい友人とみなしていた人物とともに地元の公園にいた」とする話が含まれています。全ての記憶には「その日は曇りであったがかなり暖かかった」、「学校の新入生のことで友人と口論になった」、「その新入生はリリー・ヴェセルカという名前のスロバキア人の移民(SCP-3002-1と呼称)であった」といった細かな共通点が存在します。時折、近くのベンチにリリーが座っていたという記憶やリリーから具体的な質問を受けたという記憶を想起する対象も存在します。それ以外の詳細な点は対象によって異なります。

SCP-3002-1はほとんどの場合「白みがかった金髪で血色のない外見」をしていると説明されます。対象は彼女から極めて具体的な質問を受けたことを思い出します。質問はたいてい彼女自身に関するものか、学校に関係していると推測されるプロジェクトに関するものです。

SCP-3002が最初に発見されたのは、インディアナ州南西のサウス・ロック刑務所に勤務していた心理学者が同一の記憶について多くの受刑者が言及したことに気付いた際のことです。財団の関与の結果、85%を超える受刑者が既にSCP-3002の影響下にあったと判断されました。SCP-3002は文書化され、低優先度の研究事項に認定されました。最初に文書化された当時、影響を受けた受刑者は完全な記憶を示しました。しかし影響下にある受刑者に対するインタビューと実験が進むにつれて異常記憶に関する想起は次第に詳細を欠いていきました。

事件3002-2: 2016/██/██、3名の職員が、適切なクリアランスを持たず、SCP-3002に関する十分な事前知識を有していないにも関わらずSCP-3002の文書へのアクセスを試みました。当時のアクセス記録を以下に示します。

時刻 ユーザー 役職 端末 行動
3:15 pm JBawes1 用務員(1/T) PF1408pc41-8 不適切なクリアランス、アクセス拒否
3:20 pm RKaid12 現役エージェント(2/████) PF1408pc41-92 不適切なクリアランス、アクセス拒否
3:40 pm VanderD8 上席研究員(4/L) PF1408pc41-29 アクセス承認、些細な編集を実行
6:25 pm RAISAWhit ████████ (█/█████) ██████████-█ 編集を差し戻し
6:35 pm VanderD8 上席研究員(4/L) PF1408pc41-8 アクセス承認、些細な編集を実行
6:40 pm RAISAWhit ████████ (█/█████) ██████████-█ 編集を差し戻し、ファイルをロック

RAISAの職員は3名全員とのインタビューと記憶処理を行いました。ヴァンダービルト研究員とのインタビュー記録は以下の通りです。

<記録開始>

RAISAオフィサーのワイトリーが尋問室に入る。ヴァンダービルト博士はRAISAの保安員により事前に入室させられていた。

RAISA・ワイトリー: ダミアン・ヴァンダービルト博士、私は記録情報セキュリティ管理室のオフィサーのワイトリーと申します。こうしてお話ししておりますのは、最近あなたがなさった、あるアノマリーの文書に対する編集について懸念があったためです。

ヴァンダービルト: (困惑した様子を見せる) 何の話をしてるのかよく分かりませんね、ワイト。

RAISA・ワイトリー: ヴァンダービルト博士、私のことはワイトリーかオフィサー・ワイトリーと呼んでいただきたく存じます。今お話ししておりますのはSCP-3002の文書のことです。昨日の夕方、あなたのアカウントと個人用端末から文書への編集がありました。

ヴァンダービルト: すみません、オフィサー。しかしそれがどのアノマリーなのかがまだ分かりません。今現在複数のプロジェクトに参加しておりまして。取り組んでいるファイルや報告書はいくつかありますが、どれも私の編集権限の範囲内です。

RAISAオフィサー・ワイトリーはブリーフケースを開き、1枚のファイルを取り出す。ファイルにはSCP-3002に関する紙媒体の文書が入っている。

ヴァンダービルト: ああ……なるほど、このアノマリーですね。些細な間違いを見かけたのを思い出したので、暇を見つけて修正を入れました。

RAISA・ワイトリー: 我々の記録によれば、あなたがSCP-3002の文書にアクセスしたのはこのときが初めてとされていますが。

ヴァンダービルト: 本当ですか? いや、確かに見たことはあるはずです。(数秒間沈黙する) あっ、待ってください! はっきり覚えています。昼食を食べに行く途中でロイドの背後から報告書が見えました。

RAISA・ワイトリー: それはありえません。SCP-3002の性質上、全ての情報と文書は制御された環境下でしかアクセスできません。本来は特製のミーム的ロックによってアクセスを防いでいるのですが、あなたは管理権限を用いてロックを回避しています。

ヴァンダービルト: いいでしょう。ですが私が行なったのは些細な文法的編集であるという事実に変わりはありません。

RAISA・ワイトリー: それも事実とは異なっているようです。確かに文法的な編集も行われてはいますが、「SCP-3002」というフレーズや同様の箇所が「リリー・ヴェセルカ」に編集されています。また集合記憶内の存在がスロバキア人であるという記述を削除してもいますね。

ヴァンダービルト: しかし彼女はスロバキア人ではありません。子供の頃から彼女のことは知っていますし、話す声に訛りがあることも分かっています。彼女はスロバキア人ではありません。我々の報告書は事実に基づいたものであるはずです。だから私は事実に則り……考えて見たら彼女がどこから来たかなんて覚えてない。

RAISA・ワイトリー: ご協力ありがとうございました、ヴァンダービルト博士。

<記録終了>

その後ヴァンダービルト博士はSCP-3002の影響下にあることが判明しました。彼はクラスB記憶処理を施され、サイト-726に再配置されました。ロイド博士がSCP文書を不適切に扱っていないか調査を行いましたが、ロイドは特定の研究エリアから一度もSCPファイルを持ち出しておらず、ヴァンダービルトはそのエリアにアクセスしていなかったことが確認されました。SCP-3002が彼に影響を及ぼすことができた理由は現時点では不明であり、感染媒体は一切確認できていません。


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