千年九尾狐
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千年九尾狐

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SCP-953 (看守達),
KTE-1208-Yellow-Burrhus-Kewpie (焚書者達),
"女狐"あるいは"かの大奸の女狐"


(これは朝鮮半島の手によって書かれたものである)

概観

汝如余余弗如汝 なれは余のようで、然し余は汝のようでない
汝不人余卽人也 汝が人に非ざる故に、然し余が人である故に
不詐血性或者曰 ある者曰く、血は決して偽らないと、
余亦不人唯狐也 故に余は人に非ずと、汝のように狐に過ぎぬと。
余問何使人為人 余は問う、人の人たる所以は何ぞ?
余当證余為人也 章章と、余は余が人たらんを示そう。
二百年之靭惡緣 この二百も続く不吉の血脈、
余唯望是割斷也 それを断ち切るその時を、余はただ待つのみ。

朴椒姬パク・チョヒ 1795年1

イラストレーション

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知識

特徴: この実体の実際の本質は狐ではあるものの、他者からは黒髪の朝鮮人女性に見えるようです。彼女は人々の彼女についての認識を改変する能力を保有するため、外見が異なって認識され得ます。これは妖狐の血統としての特徴です。

性質: 千年九尾狐は妖狐の中でも悪名高い実体です。妖狐は赤狐(Vulpes vulpes)の亜種です。妖狐は通常の赤狐と生物学的に同一ですが、実際のところ彼らは人間と交配可能な亜人種です2。妖狐は近絶滅種であり、現在では個体数は僅かです。妖狐の性質は遺伝性のX染色体連鎖劣性です。男子はこれらの性質を示さない代わりにキャリアになります。男性と女性双方ともにキャリアである人間が子を成す場合、彼らの娘は25%の確率で妖狐である可能性があります3

妖狐は受動的に他者を人間の女性として認識させる精神影響操作力場を形成します。彼女らはこの力場を操作することで他者に知覚される姿を変化させます;またこの行動は「遁甲」と呼ばれます。遁甲のみならず彼女らは通常の人間や狐よりも優れた身体能力、そして局所的な現実改変能力を有します。彼女らが他の能力を発揮する際は、狐の耳あるいは尾が出現し、目が赤くなるでしょう。これは他の能力の使用が精神影響操作力場を阻害し、精神操作が彼女らの末端部位から徐々に無効化されるためです4

妖狐の突出した能力は、精神影響操作力場の範囲内にいる特定の実体への対人マインドコントロールです。これは「魅了」と呼ばれるものです。妖狐が誰かを魅了した場合、彼女の能力は被害者に集中し、彼らは彼女の狐耳や尾を見ることができなくなります。その間、第三者は彼女の末端部位が狐のそれに変わっているのを目撃できます。この魅了は非常に強力なマインドコントロールで、妖狐は魅了された者に彼女の命令したことを強いることができ、そして記憶を捏造することさえ可能です。非常に強力な妖狐は、魅了された者の精神を壊して狂わせることができます。

妖狐は先天的に魔法の才能を持つ種族ですが、どれほどの鍛錬が行われたかによって才能の良し悪しは変わり得ます。この「鍛錬」を飛び越える最も簡単な方法は、性交によって人間(男性あるいは女性)から精気を集めることです。精気は口から口へと運ばれ、まさにガラスのビーズのように見える透明で不定形の球体に凝縮されます5。凝縮された球体は「狐精」あるいは「狐玉」と呼ばれます。口内に玉を持つ妖狐は、魔法の才能を5倍から10倍に増幅することができます。

妖狐の寿命は人間のそれに比べるとはるかに長大です。妖狐は生まれたときには1本の尾を持ち、100年経つごとに尾の数を増やします。故に妖狐の年齢は尾の数を数えることで大まかに推測することができます。高頻度に記録された妖狐達の物語のおおよそが九尾の狐であることから、彼女らは800年以上は生きているように見られており、しかし彼女らが自然死するまでに何年生きるかは知られていません。9本が尾の最大数であり、それ以上増えることはありません。全ての記録事例では妖狐は戦闘あるいは事故で死亡しており、自然死の記録はありません。

妖狐は他の全ての食物より人間の肝臓を好みますが、それは全く味の好みのためのようです。彼女らは生命維持のためにあらゆる動物を餌にできます。遭遇される妖狐のほとんどは敵対的でした。そのため妖狐と人間は、妖狐の生息地である近代以前の東アジアにて生存競争を繰り広げる関係にありました。

魔法の驚異の一つである妖狐が事実上絶滅してしまったことは悲嘆すべきことです。しかしながら彼女らの絶滅を東アジアに住む知的存在が喜んでいることを我々は否定できません6

歴史と関連組織: 朝鮮の蛇の手の象徴的創設者である「羽士」田禹治チョン・ウチ老士7は1515年に初めて千年九尾狐と遭遇しました8。その際、狐は自身を千年狐と呼称しました。彼女とチョン老士が邂逅した際には彼女は9本の尾を有していたため、1515年の時点で少なくとも彼女は800歳でした。それ以降長い年月が経ったにもかかわらず、この九尾の狐は自身が1000歳であると主張していました。現時点で彼女は1000歳以上ではありますが、彼女は「千年九尾狐」あるいは「千年狐」として知られています。

1568年の血戦ののち、チョン老士は「武陵桃源」と呼ばれるポケットディメンションに九尾の狐をどうにか閉じ込め、そして負傷の前に息を引き取りました。200年もの間、女狐は武陵桃源に閉じ込められ、暴れ続けていました。彼女が囚われている間に不幸にも武陵桃源に侵入した者は、誰であれ女狐の手によって死んだものと考えられました。1795年に彼女はついに逃げ失せ、そして1795年の惨禍(乙卯禍變)を引き起こしました。

女狐はチョン老士によって、彼らが邂逅を果たした1515年に玉を奪われていました。それ以降、彼女の力は1515年以前の5分の1となりました。仮に彼女が玉を持っていたならなどと考えないに越したことはないでしょう。

1795年の惨禍を引き起こしたのち、彼女は姿を消しました。看守達が朝鮮半島に初めて上陸し、彼女と遭遇した1945年まで彼女の痕跡は見つかりませんでした。看守達は多数の死傷者を出しながらもどうにか再び彼女を閉じ込めました。しかしながら女狐は監禁されてからこれまでに6回逃亡しています。いつ彼女が再び逃亡を試みるかを知る者はいません。

我々は1795年以降の彼女の足跡を追っていますが、いまだ追跡を終えていません。ですが、我々は彼女が関わるいくつかのエピソードを見つけることができました。そのうちの一つが、彼女の人格を良く表しています。1969年、彼女がアメリカに移送される前、彼女は青松郡(訳注: 大韓民国の地名)に住む老婆を殺害し、その犠牲者に成り代わりました。ある日、殺害された老婆の幼い孫息子が屋敷に滞在しました。その日から1週間、女狐は彼女の「孫息子」を大事に扱いました。朝には共に小川や山で戯れ、夜には「古いおとぎ話」を聴かせて寝かしつけました。7日目、彼女は彼を魅了し、本性を現しました。その日の午後に、彼の両親が彼を家に連れ帰るために訪れました。彼らが家に入るや否や、少年は闇に包まれた家の中に身をかがめ、たちまち自らの両親を突き刺しました。少年は3件の殺人事件で逮捕されました。我々のエージェントが少年院にて彼にインタビューをした際、彼が女狐に対して憤っている様子は見られませんでした。

接触: 妖狐にとって、ヒトを含む知的存在、つまり「他の生物種」は単なる餌か玩具にすぎません。よって件の千年妖婆に対して我々が取るべき最善の手は、あの極悪にして人食いの連続殺人鬼を看守達に任せたままにすることです。彼女と接触するべきではありません。

仮に彼女が看守達から逃れた場合、我々は成せる限り彼女を避けなければなりません。適切な備え無しには、何人も直ちに魅了されます。そして自身を守るに十分な力を持っていないのならば、逃走こそが唯一可能なことにしてすべきことです。

観察と物語

このパートは書きたくなかったし、他のパートとかみたいに他の人に書いてもらいたかったんだけどさ。嫌々ながらだけど書き切った。

看守どもからは953、ある者からは「かの大奸の女狐」と呼ばれる千年狐は……。クソッ。彼女は私の母。私は1516年にチョン老士との間に生まれた娘910

ヒトと妖狐が子を成したとして、もしヒトの男がキャリアじゃなければ、彼らの子はキャリアとして生まれる。ヒトの男がキャリアならば、彼らの息子はキャリアとして生まれ、娘は妖狐として生まれる。

私は特殊な例。私の父、チョン老士は明らかにキャリアじゃあない。だけど、それにもかかわらず私は妖狐として生まれたんだ。これは、父が1515年に母の玉を飲み込んだからだと思う。玉は父に魔法の才能をもたらし、そしてたぶん、どうにかして彼の身体を遺伝子レベルで作り替えたんだろうね。そうでもなければ、私の存在を説明できない。

父は玉を吸収して狐魔法に目覚め、たぶん人間よりも狐に近い実体になった。遺体も、当然骨も残っていないし、私たちはこの仮説を検証できない。私は、父は史上初の男性の妖狐になったのではと疑っている。

これは私個人の仮説。だけどね、この仮説は私の人生観を変えたんだ。言いたくもないけど、でも私の母は怪物。(彼女が言うには)千年も無数の人々を虐殺し捕食した。彼女は娯楽として人々を魅了し、彼らの人生を無為に破滅させることを楽しむ真正のサディスト。だけど自分とヒトは違う種だから、それら残酷な行為はもっともなものであると彼女は言うかもしれないね。彼女は獣にとってのそれと同じように、ヒトは肉であると唱えるかもしれない。いいや、かもじゃないね。絶対に、だ。

だけど、私の父は人間として生き、人間として死んだ……何かになった後も。彼は私にとって良き父ではなかったけど、私は彼の生き方を尊敬してる。多分。

「母ちゃんか父ちゃん、どちらの道を選ぶんだ?」花潭先生11が私に問いかけた質問。彼に答えるには、その時の私は幼すぎた。「母の道」そして「父の道」、その意味さえ私は知らなかった。だけど、私は500年間ずっと人として(正確には人ね)生きてきたし、今も人として生きようとしてる。ある時はいくらかの人々が恐怖(あのクソ忌々しい1795年の事件のこと)から私を迫害したし、そしてさらに、私はたくさんの人間による残虐行為を見てきた。けど、そんな経験をした私を人道から背かせまいと、そして彼らの内に在らせようと私を支えてくれたのもまた人間だったわ。

ああ。確かに私は妖狐の血と能力を生まれもってきたけど、私は人間だと信じてる。これは別に人間になりたいという意味じゃない、それは私が最初から人間であると信じているということ。そして私は、人間であるおかげで私が持ち得る人間らしさというものに惚れ込んだんだ。他の人々の気高き可能性を感じることができるという事実にもな。それが私の人生観。私を狐と呼ぶ奴らをぶちのめしたのもそういう理由さ。悪いけど謝らないぞ。

~ H.12

疑念

  1. 看守どもはあの女狐を効果的に閉じ込めてるの?奴らを信じられる?
    • 彼女は既に6回逃亡し捕縛されていて、その度に大虐殺を引き起こしてる。だけどあの女狐の収容の取り組みは2000年代後半から特段変わっていない。
    • もし看守どもがうまく彼女を閉じ込めて永久に収容されるんだとしたら、その時は一安心。だけど奴らの彼女を「収容する」能力は疑わしい。
    • 彼女が再び脱出した場合の介入の必要性について議論する必要がある。
  2. もしも介入するとして、そう万が一女狐が看守どもから逃げおおせるとして、介入はどのくらいのレベルに留めるべき?
    • これは悪意ある知的実体について手が永らく続けている哲学的議論に関連する。
    • 現在のところ、H.は女狐の完全な終了を目的としなければならないと断固主張している。
  3. あの女狐と我らが隊長以外に生きている妖狐はいないの?
    • 私達は生まれたばかりの妖狐の捜索プログラムを実行している。だけど、今のところは進展が無い。
    • 上記の通り、出現因子はX性染色体の劣性形質。東アジアにおいて多くの保因者や彼らとの間で生まれた他の妖狐の実体の赤子がいるはずだけど、現代において、H.とあの女狐を除けば、目撃された他の妖狐の報告は無い。
    • この問題について、私達はいくつかの仮説を持ってる。最も合理的なものは、世界中に新生した妖狐はいるものの、彼女らが自身の本当の正体を知らず、人間として生きているというもの。捜索プログラムはこの仮説の検証の試み。そしてもしもこれが正しいのなら、私達はどう動くべきでしょうか?
    • H.はこのプログラムに非常に懐疑的。だけど今のところ、彼女はそれに強く反対してはいない13
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