ロケット・埴輪号
評価: +72+x

10体並んだ土人形の傍へ11体目の埴輪が転がり込んだ瞬間、不思議な現象が起った。埴輪達は互いの身体を融合させて、一つの巨大な飛行物へ変形し、飛行物はそのまま大きなエンジン音を響かせ、大空へ上昇した。

丁度稲作の世話をしていた弥生人はポカンと大きく口を開いて、発射していく円筒型のソレを見上げる。呆然とした人間たちにお構いなく「ロケット・埴輪号」はグングン大空を突き進んだ。高度100m、500m、1000m、2000m、3000m……大気圏を突き抜けて、埴輪号は宇宙へ邁進したのである。

埴輪号の宇宙冒険は、そう容易いものではなかった。隕石の衝突、太陽フレアの接触、宇宙人の乗った円盤からのレーザー攻撃で、そのボディはボロボロであった。ロケットの先端部分の埴輪は奇跡的に形状を保っていたが、最早限界だった。

飛行が不可能となる前に埴輪号が、安全を求め着陸を決めた場所は、かつて飛び出した地球であった。埴輪号は様々な宇宙空間の冒険をしている内に機体のコントロールは不可能になっていたが奇跡的に埴輪号は、細長い島にほとんど墜落する形で着陸した。着地の衝撃で先端の埴輪は砕け散ってしまった。

埴輪号が降り立った場所は人気のない山中である。埴輪号は墜落後、破損した機体を出来る限り修復した。場所が山中であった為、不自然に目立つ土色のボディはカモフラージュし、周りの植物の色を装った。真似たのは色だけではない、見た目もそっくりそのまま擬態したのである。

自身が降り立った場所が生まれ故郷だと知らない埴輪号の人間は、知的生命体に助けを求め、遭難信号を送った。半径10m程度しか届かない脆弱な光であったが、これしか方法がなかったのだ。

遭難信号を送ってどれぐらい時が過ぎたのだろう。一日や二日ではない。最早助けなど来ないのではないかと諦め出した頃、一人の老人が山中を訪れた。藪を押し進み、山中を練り歩く。その途中、老人は発光する埴輪号を見つけた。老人は首を傾げながら柄を強く握り、光り輝く埴輪号を一刀両断にした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後の竹取物語である。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。