Hiccup Jacet
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とんだお笑いぐさじゃねえか。財団なんかのために命を投げ出す必要はねえ、そんな役は他の奴らにやらせろって、俺はいつも部下に言ってた。なのに俺はここにいる。口先だけもいいとこだ。けど、まあいい。俺が普通に引退するなんて、どうせ誰も思ってなかっただろうしな。

奴らが扉を破るまで、あと10分ってところか。で、一番近い位置にいる味方のところまでは15マイル。バーンズがそこまでたどり着くのは……間に合うわけねえな。おいバーンズ、まだ聞こえてるか? いいから遠慮しねえで行けよ、わかったな?

ここはもうすぐ爆発で吹っ飛ぶ。プラントのセキュリティは死ぬほど厳重だが、俺は技術屋だからな。何をどうすればヤバいことを起こせるかはよく知ってる。あとどれくらいか、正確なタイミングはわからねえが、じきにのどかな田舎の風景が丸ごと消し飛ぶことになるはずだ。だから、それまでは誰もこっちに来るんじゃねえぞ。どうせ俺のところまで来られる時間はねえ。ここの連中は一人も生かして帰さねえから心配するな、俺に任せろ。弾は残り一発だが、こいつを奴らにくれてやるまでもねえさ。

これを聞いてる奴がいるのかどうか、俺にはわからねえ。受信設備は奴らにぶっ壊されちまった。けど、送信側はまだ生きてるはずだ。だから、お前らに伝えたいことだけ言っとく。

世界を守ってるのは俺たちだ。科学者じゃねえ、上の連中でも、他の誰でもねえ。俺たちだ。俺たちが唯一の、そして最後の砦なんだ。そいつを忘れるな。財団のために死ぬんじゃねえ。財団のために戦うんじゃねえ。俺たちがやらなきゃ明日を迎えることもできねえ、60億人のために戦うんだ。それでこそ命をかける意味があるってもんだ。年寄りどもをスキップと遊ばせてやるためじゃねえ。

お前たちは機械じゃねえ。ブリキの兵隊のおもちゃじゃねえ。人間だ。他の誰にもできねえことをしてる人間だ。人間には自分の意思ってもんがある。同じ仕事をするにしたって、上に言われたからするのと、やらなきゃならねえことがあるからするのとじゃ大違いだ。たとえやってること自体は変わらねえとしても、そんなこと関係ねえ。とにかく違うんだ。そうでなかったら、一体俺たちは何のために戦ってるっていうんだ?

それから、覚えとけ。お前たちは独りじゃない。わかるか? 俺たちは独りじゃないんだ。みんな一緒だ。お前たちの背中はいつだって、他のみんなが守ってくれる。たとえ何が起こっても、俺たちは仲間だ。聖人君子でもアホでも関係ねえ。みんな仲間なんだ。お前たちの後ろには大勢の仲間がついてて、ヤバくなったら必ず手を伸ばしてくれるんだ。そいつを忘れるな。

たとえ周りに誰もいなくても、それでもお前たちは独りじゃねえ。これまでエージェントだった奴らが、これからエージェントになる奴らが、お前たちと一緒にいる。同じ訓練を受けてきた奴らが、背中を守ってくれた奴らが、メシのときにグチグチ文句を言ってきた奴らが、お前たちと一緒にいる。それを忘れない限り、お前たちは絶対に独りじゃねえ。お前たちも、他の奴らを独りにするんじゃねえぞ。俺たちには、自分が独りじゃないってことを知りながら死ぬ権利がある。どんなことがあっても、俺たちはいつも一緒だ。

あと一つだけだ。俺はお前たちのことを誇りに思ってる。一緒に仕事をしたことがある奴全員だ。俺がお前たちに何を言ってたとしても、それでも俺は、お前たちを誇りに思ってる。会ったこともない奴だって、この仕事をしてる奴のことはみんな、俺は誇りに思ってる。みんな、俺の自慢の仲間だ。

じゃあな、楽しかったぜ。それと……もし後で生き残ってる奴らを見つけたら、まとめて地獄に送ってやってくれ。俺も向こうで遊び相手が欲しいんでな。

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