かくて世界は滅びたり
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 かくて財団は滅びし。

 理由はわからない。誰も知らない。
 しかし財団は今日の日、全ての収容対象に敗北した。
 彼らが『SCP』と呼んでいた全てに対して、『SCP』である事を維持させられなかった。
 そして『SCP』はただの『怪物』となり、『脅威』となって人類に牙を向いた。

 強酸の檻から解放された強壮なる大蜥蜴は唸り声をあげる。
 自らを封じ込め続けた財団に復讐を。忌々しい矮小な存在達を殺し尽してやる。
 爪を振り上げ、牙を剥いて大蜥蜴は咆哮した。

 大蜥蜴に限らず、怪物達は皆陽の下へと躍り出た。
 奴らは歓喜の勢いで暴れ、殺し、壊し、滅ぼした。

 青い肌の細身の人型の顔を見る者は最早一人もいなくなったし、腐敗した老人は狩りを存分に楽しんだ。
 棺から現れる殺人者は殺戮と戦いを尽くし、熊のぬいぐるみはたくさん仲間を増やした。

 沢山の人間が死んだ。沢山の人間が殺された。

 緋色の鳥は幻覚の荒野から解き放たれたし、模造の恐竜は際限なく大きくなった。

 多くの人間は死に絶え、残った人間にも希望はなかった。
 怪物達は、地球を我が物のように扱った。

 ある日、大蜥蜴はその足の裏に違和を感じた。

 ……それは地蔵だった。いつの間にか地面からびっしりと生えた地蔵が、大蜥蜴の体を持ち上げていたのだ。
 煩わしげに地蔵を薙ぎ払おうとした次の瞬間、

 増殖するケーキの群れが大蜥蜴を呑み込んで、

 そしてその上から老人の死体の波が積み重なり、

 更に無数のジャガイモがそれを押し流し、

 最後に大量の水が全てを沈めていった。

 そうして怪物達は、地球と一緒に潰れてしまったとさ。

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