音声記録:実験終了直後のD241-11の証言
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[録音開始]

ええと、さっき見た変な幻について説明するんでしたね。はい、事前に説明された通り座ってすぐ、気づいたらおかしな幻を見ていました。それもホントに変な感じだったんで……上手く説明できるかな……。

(5秒ほどの沈黙)

そうですね……一番変だったのは自分の恰好でした。ガウンコートみたいに足先まで丈が伸びた服で、和服みたいな感じだったけど……和服じゃあないんです。なんだろう、他のアジア系の服っぽい感じがしました。幻の中じゃ気にも止めてなかったのでよく見てませんでしたけど、他に帽子のようなものを被ってたと思います。それにずっと手に団扇みたいなモノを持ってたんですよ。団扇じゃなくて羽で出来てる奴なんですけど。何枚も羽を重ねた扇みたいな……それをずっと握ったまま、教師が黒板にやったりするみたいにそれを差し向けて周囲に指示を出したりしてたんです。はい、その扇は視界の中にずっと入ってたのでハッキリわかります。

そうそう、周りには他に何人もいて……入れ替わり立ち代わり、10人以上は間違いなくいました。その人達に何か指示を出していたんだと思います。みんな灰色の作業着で、自分だけどう見ても場違いな恰好をしてるのに、特に変には思われてなかったみたいです。何を指示してたんだか、僕自身よく分かりません。目に見えた範囲でいうと配電工事みたいで、壁の中の一部を崩してケーブルを繋げたりしてたと思います……ああ、場所は屋内でした。ノートパソコンに映ってる図面らしいものを何度も確認しながら細かく指示してたんですけど、配電工事というにはやってることが随分大がかりだった感じはします――今思い出しても、どういう作業なんだかさっぱりです。電源がどうの、電圧がどうとか、幻の中の自分には分かっていたみたいなんですけど……何分、夢の中みたいな感じで現実とは全く違う思考をしてた感じなんです。

あとは……これこそ印象でしかないんですけど、幻を見ている間、ずっと自信に満ち溢れていた感じがしました。指示とは無関係なことも喋っていたんですけど、喋るたんびにとても満足そうでした。喋っていたのは……故事かな。どこそこの何かによれば、なんとかと言って……みたいな感じで。それも3回ぐらい。内容はよく覚えてません……僕、そういうのあまり詳しくなくって。幻の中の話ですから、適当なこと言ってただけかもしれませんけど……。

でも本当に不思議な感覚です。意識はハッキリしてたのに、現実の自分と全然違う考え方をしていたから思い出そうとしても良く分からないことばっかりなんですよ。それでもさっき言ったように、とても自信があったことはよく覚えてるんです。自己肯定感?って奴なんでしょうか。ベラベラと自信満々に好きなことを喋ることに、なんの躊躇も抵抗がない。ひょっとして、現実じゃ自分に自信を持てないからそういう幻を見た、って奴なんでしょうか?……すいません、なんだかすごく曖昧な話になってしまって。でもそれが幻の中で一番実感できたことだったもんで。

でもホントに変な幻覚だったんですけど、こんな内容を記録して、何か役に立ったりするんですか……?

[録音終了]

 

実験記録241-11 - 日付2███/██/██

対象: D241-11 3█才。日本人。男性。
結果: 1時間30分後に解放。大規模な電気設備工事を監督する技術者の幻。当人がアジア系と推定する特異な服装をしていた。
備考: D241-11は工学的な専門教育を受けたことがなく、その素養も欠いています。異装の趣味もありませんでした。服装の詳細をD241-11と照合した結果、中国の古典的な羽扇と道士服だったと推定されています。

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