俺はスピード
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俺はスピード。
乾いた地面が拡がる赤き原野をひたすらに飛び続ける。
背後で狙い続ける赤い赤いアイツに、追いつかれないよう必死に奔り続ける。
『今からする処置で、あんたの心と体を切り離す。そしたらすぐ、走りなさい、いつも通りに。あの鳥を、振り切るくらい』
尊敬していた先輩の、そして彼ら全ての願いを胸に、俺は加速し続ける。

精神のみが飛び立った、横たわる青年の体躯の傍で行われた男女の会話。
「・・・りよ、まだたたぬ・・・くそっ、あたしもそろそろ終わりか。神山、これで上手くいくと思う?」
「・・・これは可能性の一つでしかありません。荒廃した認識の次元に於いて彼という要素のみ引き継がれるとするならば、あるいはそれを中心として、宇宙が元通りに再構成されうるという」
「あは、まるで現実改変者じゃない。・・・・・・上手くやんなさいよ、速水」


日本が沈み、地球が太陽に呑み込まれ、宇宙が一つ熱量死を迎えてなお、俺は走り続ける。
後ろのアイツはもういない。どうして追われていたかも・・・忘れた。
加速する度に魂から邪魔な物を切り捨てる、知識、記憶、感情。
最早加速と同義になった俺を、ビッグバンの閃光が包み、
宇宙が生まれる、
地球が生まれる、
最初の“それ”が生まれる、
三つの誓いが生まれる、
そして、
・・・・・・気がつくと俺は、高速道路に立っていた。数人の男達が騒がしく立ち回っている。
膨大な“なにか”が脳味噌を駆け抜けていく感触に、思わずよろめく。
随分長い間走っていた気がするが、何だか記憶が曖昧だ。
「おい新人、ぼさっと突っ立ってんじゃねえ!さっさと名前と所属を言え!」
怒鳴り付けた中年男へ、自分が誰かも分からないのに、俺は口走っていた。
「俺はスピード・・・財団最速の男、ゴッド・スピードさ」
唖然とする男の前で、俺はにやりと笑う。
そうだ、俺はスピード、速水神一郎。

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