あいのさめのゆめ
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朝、いつものようにデスクの報告書達を見て、その瞬間、前原愛は固まった。財団ロゴが誤字を起こしていた。
誤字だけじゃない、内容もおかしなものになっていた。全てのファイルをひっくり返し確認した。全ておかしくなっていた。

報告書を投げ捨て、管理部門に内線でミームオブジェクトの収容違反が起きていないか確認した。
しかし、的を得た答えは得られなかった。というより、管理部門も影響された後だった。
内線を一方的に切り、数年ぶりに冷や汗をこめかみに感じながら、今度は旦那に外線を掛けた。
駄目だった。電話を持つ手が震えていた。

研究室を飛び出した前原博士は、すれ違う職員を捕まえては同じ質問を繰り返していった。
しかし、同じ答えしか得られなかった。
そしてカナヘビに会った。水槽にはカナヘビじゃなく、小さなトラザメが居た。
駆ける足が速まっていく。
どういう事だ、何故私だけ影響を受けていないんだ、私の知っている財団はどこに行ったのだ。
……いや、自分こそ認識災害オブジェクトに曝露したのかもしれない。
そう思った瞬間、前原博士は後頭部に衝撃を感じた。

空白
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空白
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気が付くと白い部屋だった。前原は椅子に拘束されていた。
眼前に、対ミーム装備と鋼鉄のナックル、仮面を着けた男が居た。
知っている、こいつは――

空白

――尋問が始まってどれくらい経っただろう、なんだかよく見えない。口の中で鉄の味がする。
その時、部屋に着ぐるみが飛び込んできたのが、ぼやける視界の端で見えた。
……待ってくだ……この前……次元……博士ではありま……
そして、前原は意識を手放した。

空白
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空白

自室のベッドで前原愛は目を覚ました。飛び起きて、下着姿の身体を見る、どこにも傷は無い。そして職員証の略字を確認、良く知っているアルファベットの並びがあった。
一瞬記憶を整理した。そして長い溜息が、深く出た。
汗が背を伝っていった。

空白

その日、誤植をしたエージェント速水は、前原博士にノックアウトされた。

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