不死の爬虫類
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財団が終了試験に遅れたことは一度も無かった。

毎月の22日、15:00きっかりに682の収容室のドアは開かれた。警報が鳴り響き、サイトが標準的な封鎖体制に入り、そしてショーが幕を開ける。後に続くのは、技術者の一団が総力を挙げて設計した危険極まりない装置に対する、682の華々しい5時間だ。

単調な収容生活の中から蜥蜴が得られる唯一つの変化だった。大したものではないが、それでも気晴らしには違いない。それは682に希望を抱かせてくれた。財団はいつの日か大失敗を犯し、自分は遂に田舎を放浪しながら得意分野に精を出せるのではないか — 虐殺に。

ところが今日に限って、財団は遅刻した。今まで決して遅延など無かったにも拘らず。蜥蜴はドアを睨みつけた。開く様子は無かった。


日付: 2020/9/22

From: ██████博士

To: SCP-682収容職員、SCP-682終了職員

件名: ΩK

本文:

ようやくSCP-682のX線スキャンを入手しました。予想どおり、スキャン画像は、非異常性の爬虫類と同様にSCP-682にも脳があることを示しています。そしてΩK-クラスシナリオに関する最近の研究で、脳を有するあらゆる存在は不死性の呪縛/祝福を受けていると判明しています。仮にあのトカゲがかつては殺し得ない生物ではなかったとしても、今は間違いなく殺せません。

これは即ち、SCP-682終了試行の継続が無益であるという意味です。我々がネズミ1匹すら殺せないような状況ではトカゲなど話にもならない。従ってSCP-682の終了は無期限に中止します。この研究方針に直接取り組んでいる全職員は翌週中に配置転換されます。これによってSCP-682に対する現行のプロトコルは単純化されるので、収容職員は注意を心掛けてください。

今まで良くやってくれました。


SCP-682収容記録 (2020/9/22)

15:00 - 対象の定期終了試験の予定がキャンセルされる。活動は見られない。

15:16 - 塩酸タンクに波紋が現れる。職員が行動を起こすのに十分な動きとは見做されない。

15:27 - SCP-682が身動きを試みる。落ち着き無くもがいているように見受けられる。電気ショックが塩酸に加えられ、身動きが停止する。

15:44 - SCP-682が身動きを試みる。先程よりも劇的かつ大袈裟な挙動。塩酸タンクの壁から検出される負荷は、過去のSCP-682の収容違反で計測された負荷を顕著に下回っている。これは繰り返される殴打の正確さが欠けていることに起因する。電気ショックが塩酸に加えられるが、身動きを停止させることができない。

15:47 - 怒りの叫びが収容室の壁のマイクに検出される。急激な気温の変動が収容環境に加えられ、身動きを鈍化させる。

15:52 - SCP-682は再び、より激しさを増してもがき始める。SCP-682の発言は収容室内のマイクで記録される。先程の収容テクニックが収容環境に再適用される。タンク壁は現在の負荷に持ち堪えられると予想される。

16:23 - タンク壁の負荷が劇的に上昇。打撃は北側の壁に集中し始める。SCP-682は散発的に脅し文句を叫んでいる。タンク壁は持ち堪えられると予想されるが、差し迫った収容違反の可能性が職員に通知される。SCP-682再収容プロトコルの準備が開始される。

17:03 - SCP-682の動きが鈍化する。この変化は環境に追加された収容措置のいずれとも関連していない。

17:04 - SCP-682がタンク内に沈む。

17:05 - 身動きが収まる。SCP-682再収容プロトコルが取り消される。職員が持ち場に帰還する。


財団は姿を見せなくなり、足を向ける予定も立てなくなった。SCP-682は翌週、毎日15:00になると暴れた。新しい生活を受け入れるまでには長い時間がかかった。そこには蜥蜴と酸だけがある。タンクは窮屈だったが、なお悪いことに — 退屈だった。


特別収容プロトコル: SCP-682はできるだけ早く破壊しなければなりません。


蜥蜴は己の死を願った。

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