内側/外側
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20██年10月18日、外部監視サーバによってSCP-2719実験データの次のような不正変更が記録されました。ログから得られた情報とサイト-81が成功裏に回復されたことから、ワトキンス博士は死後表彰されています。
ポインタ 結果
サイト-81 内側になった。
SCP-184 内側に入った。
内側 内側に入った。
内側 内側に入った。
内側 内側に入った。
データ破損 内側に入った。
サイト-81の人々 内側に入った。

一方、内側では……

ワトキンス博士は走った。自分が何かから逃げているのかどうか、どこかへ向かっているのかどうかも分からなかったが、彼は走った。他の人々は彼の下の天井を走っていた。ワトキンス博士の右の部屋から数十冊のガラスの本が落ち、人々の一人を直撃した。誰も立ち止まって倒れた男を助けようとはしなかったし、誰もその場所に到達することはできなかった。彼はそこにいたし、彼らはここにいた。その時、ここの全ては彼らの場所だった。ここからそこへ到達するにはかなりの離れ業が必要だった。

彼はさらに1時間走った。それとも10秒か。3年か。彼には分からなかった。ある時はぼやけたドアが何枚も通り過ぎ、ある時は廊下は無限に向けて伸びていた。どこかから呼び声がした。

「助けてくれ!動けない!」

ワトキンス博士は振り向いて声の出所を探ろうとした。「どこにいるんだ?」

「内側だ」

ワトキンス博士は頭の片隅で「内側って何だ」と尋ねようと思ったが、ドアを抜けて折り紙の錠前で満たされた部屋に踏み込んだ時点でそんな考えは吹き飛んだ。もちろん、声は内側だ。他のどこだって言うんだ?「大丈夫だ、今行くぞ」彼は叫んだ。彼は一枚のドアを開け、もう一つの同じ部屋へ入った。彼は振り向いて背後の部屋を見たが、それは新たな廊下に変わっていた。誰かがその先で動いていた。

ワトキンス博士は折り紙の部屋を離れ、廊下を走った。彼の頭上で、誰かが目を閉じて胡坐していた。ワトキンス博士は立ち止まり、彼を見上げた。「助けを呼んでいたのは君か?」

その誰かは片目を開き振り向いた。「いや。助けは必要ない。他の人は、私が内側になるのを制止するだろう。」目は再び閉じ、その誰かは沈黙した。我々は既に内側にいて、未だ内側にいる、とワトキンス博士が指摘しようとした時、1枚のドアが開いてその誰かは静かに転げ落ちていった。ワトキンス博士が追うにはドアはあまりにも高い位置にあったので、その誰かと話している時に目の前に現れたドアで我慢した。そして再び走り始めた。

ワトキンス博士が走るにつれて、廊下はあらゆる方向に捻れた。左に、右に、上に、下に、それ自体に戻る方向に。彼は目についたあらゆるドアを確認し、光を、この建物ではない場所を探した。鋼鉄の家具で満ちた部屋。サイトの休憩室に似ているが、全てが逆様になった部屋。隙間なく暖かなパテのブロックで埋め尽くされた部屋。博士は一瞬、自分が巨大な車輪の内側を走っており、それぞれのドアはパステルピンクの空の尋問室に繋がっていることを確信した。だが全ての部屋にそれ以上のドアはなく、行き止まりだった。

次のドアを開けたワトキンス博士は息を呑み、危うく眼前に広がる空に飛び込んでしまうところだった。彼は扉枠に掴まり、空が地面のように伸びていることに気付いた。部屋の向こうに別のドアがあった。出口ではなかったが、少なくとも進展ではあった。だが、どうやって空を横切ればいいっていうんだ?ワトキンス博士は腕時計を外して差し出し、ゆっくりと手から滑らせた。時計は軽い衝突音を立て、足元の空の上に落ちた。彼は蹲って時計の周りを手探りしたが、いずれにせよそれが落下することはなかった。手触りは暖かかった。プラスチックだ。空を映し出した巨大なディスプレイだ。ワトキンス博士は甲高く緊張した笑い声を上げ、部屋を走り抜け次のドアを潜った。

長い間走り続けた。幾つものドアを開き、幾つもの部屋を通り抜け、幾つもの廊下を歩いたが出口は無かった。出口は無かった。全く出口は無かった。外側はあるのか?そもそも、外側は本当に存在しているのか?そうではない可能性もあったが、ワトキンス博士は進み続けた。

博士の足取りは重くなり、荒い息を吐いた。彼は疲れ、喉が渇いていたが、止まるわけにはいかなかった。脱出より重要なことは存在しなかった。彼はノートでできた足場に乗り、水で満たされた部屋を瞬きもせずに横切った。外側がただ一つのゴールだった。外側より重要なものは存在しなかった。外側に出られたならば彼はこれを報告でき、内側にいる他の人々を救う方法が見つかるかもしれなかった。彼はただ外側を見つけなければならなかった。彼は足場から下り別の廊下へと進んだ。外側を見つける、内側から出る、内側を救う。中から外へ、外側に入る、裏返す。

ワトキンス博士はその場で急停止した。多分、それは答えではなかった。多分、あの誰かは正しかった。多分、彼は内側になる必要があった。多分、もっと外側であり、もっと内側でなければならなかった。多分、外側は内側だった。そうだ、それでいい。彼はただ、もっと内側であるだけでよかった。もっと内側。彼は数歩歩き、立ち止まって振り返り、反対方向に歩き戻った。外側がどこにあるか知らないならば、内側がどこにあるかどうしたら分かるだろう?内側はどこだ?もっと内側とは何だ?

もっと内側。

内側。

内……

内側?


ポインタ 結果
ワトキンス博士 内側になった。
内側 内側に入った。
SCP-184 外側。
ワトキンス博士 裏返し。
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