インタビューログ769-43
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あんたが、あんたのやった事が原因だって、今なら分かる。

俺は自分が人殺しだったって言われた。被害者の事はもう覚えていない。俺は自分が投獄される前は、二人の子を持つ誇りある父親だったって言われた。写真を見せられたが、見知らぬ顔だった。俺がこんななのは、部屋に連れて行かれてあの杯から飲めって言われたからだ。それが今なら分かる。

あんたは俺に、武器の事とか推進力だとか冶金技術とか訊いてくる。俺にはそういった事は話せない。あんたは要らない情報だっていう、彼らが作った文化だけ話せる。支配者の事、彼らの歴史、彼らが戦った長きに渡る戦争の数々、彼らが認め得た、より尊い者へ捧げた生贄達、俺はそういった事について何日もあんたらに話せた。無視されてたんだろうけどな。

あんたは自分自身を滅ぼすんだろうな。分かるよ。その目の中に恐怖が、自分の知識からやってきた恐怖が見える。あの支配者達もそういう恐怖を抱えてて、それが遂には自分達の都市を焼き、同胞を殺し、灰に塩を撒いた。彼らはあんたよりは良い人達だったし、そしてその敵は劣らず酷い。

ふと思うんだよ、もしいつか、また俺みたいになるだろう奴が、それも『あんたの』歴史を物語る奴が居たらって。『そいつを』捕まえた奴等はうんざりしきってるだろうに、無駄にも説明しようとするんだ。それってここからどれだけ遠いのかって思うんだよ、失敗と成功の歴史を守ろうとするには恐ろしく絶望的になるまでに、どれだけの時間が過ぎるんだろうなって。

兵器を探すとか、あんたがそこまでバカだなんて驚嘆するよ。この歴史を作ったあの社会を、今知ってるあの社会の文化を、何よりもまず重んじるべきなんだ。もしも彼らに兵器があったって、敵対した奴らから守っちゃくれなかったし、あんたの物になったってそうだろう。勿論あんたは認めようとはしない。自惚れがそんなの許さないんだろう。

あんたはやって来た事に対して、報いを受けるだろう。俺の前に、あんたは何人ゴミたいに使い捨てたんだ?一体何人を、もはや存在しない兵器とその技術を探すために、無駄に犠牲にしたんだ?千年間も歌われていなかった歌の数々を覚えただけの奴、安産を神に感謝する舞踏のステップを覚えただけの奴、あんたはそいつらの知識の価値について、その時ほんの少しでも考えたのか?もしくは、ただたくさんの無用なデータだったのか、犠牲にした記憶みたいに。

あんたは俺を殺すんだろうな。今日明日でなくとも、近いうちに。その目に見える恐怖は、男一人殺すならさして重大じゃないくらいには十分深い。いいや、一番有り得そうなのは、あんたは自分の人間性の喪失なんてもうずっと今まで思っても無かったって事さ。そうだな?なあ?あんたと俺は同じものを共有してるみたいだ……あんたの人間性が奪われてないって事を除いてな。それは古代の素敵な図式のために引き換えられはしなかったんだ。あんたは銃を突きつけられて部屋の中へ押し込められなかったんだ。だから分からないんだ。

もう黙っていようか。古い時代の記憶が、あんたが俺を殺すまで慰めてくれる筈だ。そうして彼らと俺が死ぬまで。また一つ死体が積まれるまで。

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