毘見博士と最高の炊飯器
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毘見博士は電気屋に来ていた。炊飯器を買い替えるのだ。今まで使っていたものは母から貰ったのだが、なにせ10年以上使っていたのでガタがきていた。

棚を見て回る。ちょうどいい値段のものがそこにあった。財布を覗く。これでいいだろう、と思い買うことにした。帰ったらさっそく夕飯で使うか、と思いながら会計をし、電気屋を後にした。

炊飯器のスイッチを入れる。炊きあがるのが楽しみだ。個人的にはこの時間が一番わくわくするのだが、周りにはなかなか理解してもらえない。

他愛もないことを考えていると炊きあがったようだ。蓋を開け、しゃもじを手に取り、茶碗に米をよそう。机の上に茶碗とおかずをのせた皿を置き、食べ始めた。

美味しい。

炊飯器を変えるだけでこんなに美味しくなるのか、と思った。箸が止まらない。おかずが無くてもいける。なんだこれは。あっという間に完食した。

食べ終わって一息ついたところで少しだけ疑問がわき出てきた。もしかしてこれはなんらかの異常性なのではないか?という疑問だ。いやいやまさか。いやでも、と考えること小一時間。明日サイトに持っていき検査してもらうことにした。異常性がなければそれでいいのだから。


流石にオブジェクトと言えるまでの異常性ではなかったのでオブジェクト指定はされなかったが、Anomalousアイテムとして回収された。まあ申請して許可されればあのご飯がまた食べれるんだろうし……と思いつつ自分の家に帰ることにした。

説明: 白米を用いて炊飯を行うと食味が良くなる炊飯器。分析により炊飯後の米の一部ではアミロース量の減少、タンパク質含有量の低下が生じていることが判明した。
回収日: 19██/██/██
回収場所: 愛知県
現状: サイト-8181の倉庫に保存。許可下でのみ炊飯に使用可能。


毘見博士はAnomalousアイテム使用申請に来ていた。例の炊飯器で炊いたご飯をまた食べたかったからだ。炊飯器の蓋を開けた時、違和感がした。何かが動いた気がしたのだ。もう一度目を凝らしてみたが特に何もいなかった。疲れているのだろうか、と思いながら米を炊飯器に入れ、蓋を閉めてスイッチを入れる。蓋を閉める直前にも何か動いた気がしたがやはり疲れているのだろうということで気に留めないことにした。

そろそろ休暇を取るか、と思った。そうだ、久しぶりに実家に帰ろう。とも思った。この炊飯器さえ持ち出せれば両親にもこれだけ美味しいご飯が出せたのだが、まず許可されないだろうなと諦めた。

と、炊けたようだ。いつものように茶碗によそって、食べ終わるのに10分もかからなかった。満腹になったことだし、研究に戻るか。そう思いながら炊飯器と食器を持って洗い始めた。その時何かが部屋の中を飛んでいるような気がした。見ると小さな一匹の蛾だった。おおかた誰かにくっつくかでもして侵入したのだろう。なにぶん高い位置にいるし、蛾一匹ごときがAnomalousアイテムに何かしらの影響を与えることもないだろう、洗い終わった食器を持ってその部屋を後にした。

彼は気づかなかった。その蛾が部屋を出る直前、炊飯器の中に入ったことを。

説明: 白米を用いて炊飯を行うと食味が良くなる炊飯器。分析により炊飯後の米の一部ではアミロース量の減少、タンパク質含有量の低下が生じていることが判明した。
炊飯器内に生息するノシメマダラメイガ(学名: Plodia interpunctella)。成虫は吸水中の白米に産卵し、卵は加圧、加熱により即時に孵化する。幼虫は一時間ほどで300粒ほどの白米を摂食し、白米と同程度の大きさの白色の糞を排泄。
回収日: 19██/██/██
回収場所: 愛知県
現状: サイト-8181の倉庫に保存。許可下でのみ炊飯に使用可能。 サイト-8181の低脅威生物飼育室にて飼育。繁殖の為に用いた白米は希望すれば試食が可能。

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