エージェント・皆瀬の休日
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 廃工場内で銃声が響いた。膠着状態に陥っていた両者間に鉛玉が乱れ飛ぶ。フォーメーションを整える。1人。また1人。確実に敵対組織の人員が減っていく。バイタルの確認。味方人員の損害、1。敵対組織への損害、7。
 火器の残響がシンと震えた。
 デルタ4が携帯ソナーを投げる。テニスボール大のそれは空中で2回音波を出し、音響マップが体内ナノマシンを通じ各人のHMDへ共有された。敵対組織人員、残り1。
「デルタ7出ます、援護を」「デルタ1了解。デルタ5、デルタ6、援護」「デルタ5了解」「デルタ6了解」
 合図と共にデルタ7が飛び出す。右手には拳銃を、左手にはハイカーボン鋼ブレードのナイフ。マッピングされた敵対組織員のカバーポイント周辺を銃撃しつつ疾駆する。銃撃は標的への威嚇の為であり、命中は元より期待していない。標的が潜むスチール製のラックを越える。飛び越えざまに標的の背面を銃撃。拳銃は小口径、標的の装備は恐らく防弾だが、全くのノーダメージと言うわけには行くまい。
 計4発の銃弾は確実に標的の背に食い込み、バランスを崩したソレをデルタ7が組み伏せる。フルフェイスの戦闘用ヘルメットを掌底で押し上げ、露わとなった喉へナイフを突き刺した。
 標的のフルフェイスが血で溺れる。喉を押さえながら、彼はヘルメットを脱いだ。
 それはデルタ7の知った顔であった。
 うそだ、こんな。こんなこと。辛うじて銃を構えているが、かたかたと震えるそれは定まらない。
 血で染まったその顔は、笑ったように見えた。

 ざあざあと雨が降っていた。早鐘を打つ胸をぎゅうと押さえる。
「起きて大丈夫か」
 ベッドサイドにいた男が、額に手を当てた。夢で見た顔だった。
「まだ熱あるな。やっぱりまだ寝てた方がいいぞ」
 皆瀬は男にごめんと言った。
「気にすんなって。汗拭くからちょっと背中出せ」
 蒸したタオルが背中に当てられた。もう一度ごめんと言って、皆瀬は少しだけ泣いた。

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