KamisamaDream
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 監視室に持ち込んだスナック菓子を音を立ててかじった。机の上に空き缶や菓子袋が増えていく。代わり映えのないモニター映像に欠伸が出て、映画でも流してくれたら退屈しないのにと悪態をついた。
 満腹中枢が刺激されたせいか眠気が襲ってくる。あと三十分、あと二十五分、と何度も腕時計を見て交代の時間を待ちわびた。

 瞬きをして視線をモニターに戻すと、机とモニターの間に人間大の柱が現れた。周囲を渦巻く金色の煙が陽光にキラキラと輝いている。それでその柱が神様であると一目でわかった。正しくは、柱に閉じ込められた神様だ。
「大変だ、すぐにお助けしてあげなくては」
 わたしは手にしていた斧を振り上げ、柱を鎖で繋いでいた鉄の塊を砕いた。この三つの箱が神様を閉じ込めていたからだ。
 柱が開き、中から荘厳な光を纏った神様が現れた。神様は尻尾を上にした海老の天ぷらの姿をしていた。
「ありがとうございます。貴方のおかげで自由になれました。お礼になんでも願いを叶えてあげましょう」
 昔話のような展開に感心していると、背後から「おい」と野太い声がした。
 目を覚ますと同僚が立っていた。彼はちょんまげを前後にブンブンと振れて怒り心頭を表現する。
「勤務時間中に居眠りをするとはなんと嘆かわしい! 成敗してくれる!」
 同僚は携帯用原子配列変換装置を作動させ、わたしを柴犬にしようとしている。すると、どこからともなくなりたさんが現れた。
「まあまあ、間違いは誰にでもありますよ。人間ですから」
 彼の言葉で同僚は装置を納め、わたしは尻尾を立てて去っていくなりたさんにお礼を言った。そのまま勤務を交代して、天ぷら幕府四百年祭に遅れないよう梯子を下りていく。
 地上に着くと既に屋台が軒を連ねていた。わたしはドラゴンカタツムリ™焼きを一つ買い、喧騒の中に身を委ねる。
「にいちゃん、的当てやってかんか? こうして、こう投げるだけ。ほら、簡単だろ?」
 的屋のおじさんが風車を投げてDクラスの額に見事に当てる。わたしもやってみるが、一本左肩に刺せただけだった。
 紙魚すくいでもゅゆゆと逃げられてしまい一匹もすくえなかった。残念賞に鋼入りのダンをもらう。
 幕府公式ステージでは相撲大会で前原博士が二百三十連勝していた。わたしはキャインキャインと鳴きながら飛んできた諸知博士を避ける。まわしを絞めた柴犬が巨大座布団に落ちたので、私はイナゴの佃煮を0匹、諸知博士の口の中に放り込んだ。
「やっぱり仕事の後の祭りは格別だなあ」
 一通り見終わり、わたしはビールを飲みながら日本支部城の屋根を飾る金の海老天を眺めていた。
 その時、わたしは気づいてしまった。わたしは重大な収容違反をしてしまったのだ。
「あの神様は……」
 わたしは解放してしまった神様を思い出して青ざめる。あれは収容していたオブジェクトだ。
 入職三年目にしてKクラスシナリオを起こしてしまった。
 膝から崩れ落ちるが、誰もわたしを気にも留めない。わたしは指を組んで顔を伏せ、これが夢でありますようにと強く願った。

 ハッと目を覚ますとそこは監視室だった。ゴミとスナック菓子の欠片が机の上に散らかったままだった。
 呆然としていると、同僚が交代の時間を知らせに部屋に入ってきた。
「すごい汗だぞ、何かあったのか」
「下手なホラー映画より怖い夢を見てしまって……」
 同僚は「仕事中に寝るなよ」と怒るが、オーバーテクノロジーの装置でわたしを断罪しようとしなかった。
「結城博士も言ってたでしょう、この収容プロトコルは完璧だって。収容違反なんて絶対に起きませんって」
 わたしはKクラスシナリオの起きていない現実に安堵し、神様に感謝した。

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