香ばしい、香ばしい世界
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諸君、我々は失敗した。
突如発生したミーム災害は、発見から二時間ほどで世界の約82%まで広がってしまった。
この拡散速度はあまりに早く、収拾がつかない。こんな馬鹿げた話があってたまるか。

我々の感染に対する試みは失敗した。 じきに世界は黄金色に染まるだろう。全ての皮膚は、毛皮は、鱗はゴツゴツとした衣になった。鶏舎に行けば、すでに調理済みの鶏たちに会えるはずだ。
もはや個々判別の手段は、それぞれの形か皿か添え物の差異しか残されていないのだ。

世界は香ばしい香りに包まれてしまった。残された手段は最終フェイルセーフ手段、アンニュイプロトコルを実行するしかないだろう。

各支部の財団管理責任者がこのメッセージを受け取ったのを確認され次第、財団の総力を挙げ、微細な記憶喪失を引き起こす化合物ENUI-5を大量散布する。たとえ世界が香ばしくなったとしても、世界中のこのような恐怖を味わうべきでない人々が、立ち止まり、腹を空かせ、困惑し、自らの生活に戻るだろう、これが現実だと確信し、何を失ったかを決して知らないまま。ただ一つ、食べ物としてのからあげの存在のみが真実を伝えていくことだろう。私は残念でならない、諸君。本当に残念だよ。

この計画はやり遂げなければ。

O5-8.

確保、収容、保護

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
ほとんどの人が出払った日本財団支部。
 
その理事室で、世界で初めて香ばしくなった男は呟いた。
 
「これ、私のせいじゃないですよね…。」

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