烏丸教授の特別講義: 情報災害とミーム異常 ~認識を正常に保つ方法~
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 サイト-8181の一角、とある講義室。広めな室内には多くの人が居たが、殆どの者は席に着いておらず、近くの知り合いと談笑している。壮年のスーツ姿のエージェント、年若い博士、その助手、中には緊張した面持ちで席に縮こまる新米エージェントの姿もあった。
 そんな彼らの中、正面右手、今にも倒れそうなほど顔色の悪い研究員然とした男性が、分厚い書類を広げていた。書類にペンで線を引き、難しそうな顔で別の書類に目を落とす。書類は、どうやらとあるオブジェクトについての報告書のようだ。端に何やらメモを書きつけているが、傍からでは読めない。

 彼、針山博士は、いつもならこの時間は、机に積まれた書類を前に欠伸を噛み殺している頃合いだった。今日は知り合いが、ミームについての特別講義をすると言っていたので、用事ついでに訪れてみたのだ。
 知り合いと言うよりは、同僚に近いが、彼はその人に対して苦手意識を持っていた。嫌いという程ではないんだが、何というか、やり辛いのだ。針山はペンの後ろで頭を掻いた。

 と、喧騒の中、ガラリと些か乱暴に扉を開けて、小さな影が入室した。小さな影は無言で室内を見渡す。その表情は黒いマスクと目深に被る帽子で遮られ、伺えない。少し遅れて、首に赤いバンダナを巻いた白衣の女性が、ぎこち無い足取りで続く。他の人と並ぶと、その人物の背の低さが際立った。女性は両手に荷物を抱えており、前方を行く小さな人物に批難の目を向けている。
 その人物はカーキのコートの裾を払い、見た目にそぐわぬ重そうな足音を立てながら壇上を進む。もしやアレが今日の講演者なのか、と新米の職員達が疑問を抱くと同時に、その人物は講義机の横に無造作に荷物を置くと、パンッと一つ手を打った。

「やぁ、諸君」

 マスク越しにも関わらず不思議と良く通る声で、本日の講演者、烏丸からすまる教授はそう言った。

「見ての通り、ベーグルもドーナッツもカツサンドもドラッグも無しだ。水はどれだけ飲んでも無料だよ。当然、諸君が本講義に対する相当の興味を持って出席していると私は信じているが、まぁ私だからね。あまり面白みのある話は出来ないので、諸君が望むならいつでも退席して構わない。望まない遭遇はお互いにとって損失だ。ただし、私語は謹んでくれたまえよ」

 烏丸は早口でそう言いながら、白衣の女性が持って来た資料を手早く広げる。講義用スライドをスクリーンに映す準備をした後、ごく自然に、机の上に飛び乗った。それを見た白衣の女性が何やら口にしながら烏丸の膝を叩いたが、叩かれた本人は軽く肩を揺すると追い払うように邪険に手を振る。女性はもう一度烏丸の膝を叩いてから、壇を降りて近くの席に座った。
 パチンとスクリーンに映し出されたスライドの、講義タイトル『特別講義: 情報災害とミーム異常 ~認識を正常に保つ方法~』その下には、『講演者:烏丸虎』の名前がある。逆に言うと、それだけだ。役職や所属部署の明記は無い。

 どことなく余裕ぶった雰囲気で、烏丸は手を広げる。
「さて、ミームについてだ。恐らく、諸君はもう何度も情報災害と認識災害についてのオリエンテーション、ないしは講義を受けて来ているであろうと思う。よって、私も今更それについて細かく議論しようとは思わないが、ミームについてだ。
 諸君はミームという概念を少し奇異に感じているかも知れん。情報災害は簡単だ、情報それ自体に異常性がある。認識災害は少しややこしい例外があるが難しくはない、認識することをトリガーとする異常性だ。ではミームは? それが何であるか、諸君は述べる事が出来るかね?
 なお、異常性を持つミームについて話すには、無論、認識災害と精神影響は切り離せない話題になる。よって、もし諸君がまだそれに関する理解が済んでいないのであれば、一応私もそれぞれ解説を加えていくがそれでも不十分であると感じるなら、自身で勉強して貰った方が早いだろう。まぁ、私の講義に出席してる時点で、そんな初歩的な事が分からないという職員は、いないだろうがね」

 声変わり前の少年のような声は、マイクも通さず講義室内によく響く。幾人かの出席者はこの講演者を奇異に思ったようで、怪訝な面持ちを見せていた。だが多くの者は、あいつまた面倒な喋り方しているなぁという顔をしている。針山は書類を少し片づけて、メモを取るための紙を取り出した。

「では、講義を始めよう」
 


 
 さて
 まず、何故ミームについて話す機会をわざわざ設けて貰ったのかというと、それは諸君が“ミーム”という言葉を誤解している事が多いからだ。何も勉強不足を非難したい訳ではないが、時折正しくない分類に基づいて対策を立てて仕舞しまおうとする者が居るのでね。その注意喚起も兼ねている。
 
 我々は、こうして仕事をしている以上、ある意味仕方の無い事ではあるのだが、ミームという言葉を何か特別な物と捉えがちである。この理由は酷く単純で、ミームという概念自体が多少SCiP的だからだ。またオブジェクトの“ミーム的異常性”、“異常なミーム”の定義は甘く、通常の情報災害、認識災害と如何にして区別するのかは、非常に難解なものとなっている。
 中には、『何故区別しなければならないのか?』と疑問に思う者も居るだろう。私の講義を以前にも受けた方ならば分かるだろうが、区別とは、分類とは、それにり物事が理解しやすく成るからこそするものだ。他の情報災害とミーム異常を区別する事は、ミームに特異な対処法を講じる為の手立てに成る。必要に際し分類別けをしているのならば、その分類には正しい理解をしておかねばなるまい。
 
 
 全てに先立ち、諸君に一つの言葉を示す。
 
 “ミームの本質とは、思い込みである。”
 
 言葉の意味は最後に説明しよう。
 
 
 
 そもそも"ミーム"という言葉自体は、"伝達される文化の単位"として、動物行動学者・進化生物学者であるリチャード・ドーキンスが、自身の著書『利己的な遺伝子』の中で用いた単語だ。ギリシャ語で模倣を意味する"ミム"という単語が元になっている。そしてこれは、我々が触れる情報とは、あたかも生物学的な進化と同様に、進化していくのではないか、という類推が基礎になった考え方である。
 おっと、そんな複雑そうな顔をする必要はない、まだね。先に例示を挙げた方が理解しやすいと思うので、まずはそうしようか。
 
 諸君が普段何の気無しに用いている言語、まぁここでは日本語のことだが、この中に“凄い”という言葉がある。今でこそ、この単語は強調表現として使われているが、その昔、“凄い”というワードは“酷い”という意味だった。そう、ネガティブな意味合いだ。似たような事例を知っているね? “ヤバイ”とか、英語なら“Fワード”がそうだ。では、何故元々そんな意味は無かったにも関わらず、“凄い”に強調の意味が追加されたのだろうか。
 
 これを解釈する為に導入されたのが、“ミーム”という概念だ。“凄い”が何故強調表現になったのか、ミーム学では以下のように解釈される。
 即ち、何処かの誰かが、酷いという意味の“凄い”を、後ろの単語を強調するのに使用した。それを見た他の人間が、その表現方法を好く思い、別の場所で引用する。もしかしたら、独自に表現を変えていったかも知れない。とにかく、こうして徐々に強調の意味での使い方が広まり、最終的に、全国的にこの用法が定着した。そこまで行けば、もう誰もが“凄い”を強調の意味で用いるだろう。暫くするとこの使い方は辞書にも載り、元の意味ですら薄れていった。
 
 このように、元の意味から変質して広がっていく情報を指して、ミームと呼称する。逆に言うと、ミームと呼ばれるものは全て、“複製”、“拡散”、“変異”の3条件を満たし、時間と共に進化していくものなのだ。この性質は非常に生物的な為、わざわざミームと呼び変えられるのだが、その本質はあくまでも“情報”であり、それ以外の何物でもない。
 ではその3条件とは何なのか、詳しく見ていこう。
 
 “複製”とは、その情報を見聞きした者が、その情報を自身の物として身につける段階である。例えば誰かの口癖が伝染うつってしまうのはこの性質の為だ。他にも、必要に迫られた生活習慣の変化、流行への同調等がある。経路は様々だが、どれにも共通して言えるのは、『理解が必要である』ということだ。
 私はこの段階を“情報の内在化”と呼んでいるが、何事かに対して一定の理解を示すことで初めて、諸君はそのミームに“感染”する。これは何も特別な事では無い。あらゆる情報は、理解され、知識として身に着けられた時点で、諸君を汚染し出す。
 先程の例で言うと、諸君が“凄い”を強調表現として扱っているのは、『凄いは強調表現である』というミームに感染しているからだ。しかし、そもそも私が今こうして使っている言語自体がミームであり、諸君らが同じミームに感染しているからこそ、今ここで会話が通じている。ずは“ミームは普遍的なものである”ことを納得してくれ。
 
 次に“拡散”。これは単純で、ミーム感染者が何らかの手段でって、そのミームを広めようとする段階だ。基本的には、ミーム自身に自身を拡散させる精神作用が有る訳ではない。単に、文章、言葉、絵画や画像等、媒介物を通して情報が伝わっていく様を指している。
 この性質の為、諸君は常に新しいミームに晒され続けている。感染者は意図の有る無しに関わらず、多くは積極的に拡散を行う為、また近年加速している情報化社会に於いては、非常に素早くミームが広まる。ネットミームがその典型例だ。“全てを拒絶することは不可能である”ことを理解してくれ。
 
 “変異”、は拡散及び複製の途中で生じる差である。意図された変化かどうかは重要ではなく、明確なものから誤差レベルの極僅かなものまで、様々な差が生じる。生物的な進化は環境への適用の結果と言われるが、ミームの場合は単なる"バグ"に近い。だがプログラム上のバグとは異なり、ミームの変異は時として異常なほどの指向性を見せる。例えば『不幸の手紙』がいつの日にか『チェーンメール』に変わり、立派な詐欺の手口に進化していった事など、ミームの性質が存分に垣間かいま見える。“ミームは進化する情報である”ことが、このミーム学の出発点であり結論である事を知ってくれ。
 
 以上の3要素が生物に似たものであるとして、リチャード・ドーキンスは情報にジーン、即ち遺伝子との類似性を見た。
 依ってミームという言葉は、日本語では“模倣子”、“伝達される情報の単位”、“情報ウィルス”等と呼ばれる。ウィルスという表現は本質を示した良い表現だ。ミームは、ウィルスと同様に生物では無いが、人間を宿主とし自己増殖を自身のみで行わない点等、類似点が多い。
 
 ここまでをまとめよう。
 情報が進化するという一つの現象を理解するために導入されたのが、“ミーム”という概念である。それらには流行やメロディ、デマ、常識、伝統、言語、等と言った、とにかく様々なものが当たる。そしてこれらは、人から人へと伝わって行く中で、徐々に変質していくものである。
 “ミーム学”では、情報が如何にして広まっていくのか、そのプロセスを分析することが重要視され、故にミームとは単なる情報のみがイコールではない。その為の条件というのが先にも述べた、“複製”、“拡散”、“変異”、の3つなのである。
 
 
 
 よし、一般的なミームについては大体分かっただろう。
 だが、果たして財団が定義している“異常なミーム”、“ミーム的異常性”とは一体何なのだろうか。
 実は、財団が定義している“ミーム”は、もう少し広義であり、拡大解釈されている。その為、厳密にはミームかどうか言い切るのが難しい事案についてもミームと呼称している場合がある、気を付けて欲しい。なので、ミーム的異常についての話をする前に、“ミーム汚染”について話す必要があるだろう。
 
 前提として、ミームは情報である。ミームに汚染される、というのは、情報に汚染されるということである。これは“感染”よりも、より恣意的な表現だ。さぁ、情報に汚染されると言うのは、如何いかなる状況だろうか。
 
 例を示そう。
 
 
 ここに、一本のナイフがある。白いナイフだ、奥の人見えるかな?
 いいかい、これは骨で出来ている。
 そこの君。そう、手前に座っている、スーツのエージェント君、君だ。一体何の骨だと思う?
 
 ……牛か。ふむ、まぁ妥当な所かな。
 
 では正解を言おう、これは人の骨で出来ている
 
 
 今の一連の流れは非常に重要な意味を持っている。良く考えるように。
 先ず私がこのナイフを取り出した時、諸君は“何か白い物”と認識した筈だ。恐らくそちらからでは詳しく見えないだろうからね。その後、私が『ここに、一本のナイフがある』と言ったことで、諸君の中で“白い物=ナイフ”という等式が出来上がった。また、直ぐに白いのは骨で出来ているからだという情報が与えられたね? 最後に、私はこのナイフが人骨であると述べた。すると諸君は何とも言えない表情で黙ってしまった。
 
 何故なら、諸君の中では、このナイフが人骨で出来ていることが“事実”になってしまったからだ。
 与えられた情報に対して理解を示し、ある程度の納得を示した。ここにいて事実は最早一つの視点に成り下がる。諸君が真実を精査しようとしない限り、諸君の中でこのナイフは人骨製で在り続ける。そして、人骨製のナイフなんて物を持ち歩く私は、一般的に言って仕舞えばマッドでサイコな気狂いに違いないのだ。そうだろう?
 
 以上が“情報に感染する”一連のプロセスであり、かつミームの影響を実感出来る例示である。そして『何故人骨製のナイフは驚くべきことなのか』、『何故ナイフの素材に依り、持ち主の人柄を断定できるのか』という事を諸君が疑問に思わない限りは、そもそも諸君がミームに汚染され切った存在である事を示している。善悪はミームだ。諸君はそれに感染している。
 私が今行ったのは、一種の騙りであるが、某氏であれば今のを認識へのインタラプト、即ち認識汚染であると言うだろう。そう、ミーム異常の話をする上で情報災害と認識災害を切り離して考えられないのは、そのどれもが根本的には同じものを指しているからだ。認識汚染とミーム汚染は非常に似ている。そして、認識災害もミーム異常も、本来は情報災害に区別されるのだ。
 
 
 さぁ、ここで漸く、冒頭に述べた大いなる議題が光を浴びた。ミーム異常を、情報災害、認識災害と如何にして区別するのか?
 
 情報災害の定義とは『情報それ自体が異常性を持つこと』である。情報というのは何かしらの媒体に依り伝達されるものであり、大きな括りだ。この中に、認識災害とミーム異常が含まれている。認識災害では無く、ミーム異常でも無い情報災害の例としては、例えば複製の全てが別々に意思を持つものや、報告書を拙い発想力の小説のように書き換えてしまうもの等が存在する。対策は“そもそも知らない事”である。
 認識災害は、五感により対象を知覚することで異常性が発現するものだ。つまり、“情報”という曖昧な物ではなく、多くは物質的だ。視覚や聴覚が最も身近で考え易いだろうが、無論触覚や嗅覚での認識もあり得る。対策は“認識しない事”だ。
 情報災害に於いて、そもそも該当する情報に触れないという心得は非常に重要だ。初期収容に当たるエージェント諸君はこれについて良く理解していることだろう。双方共に、肉体的・精神的どちらにも影響を起こし得る。常に精神的影響というばかりではない、注意し給え。
 
 
 さて、ではミームだが、冒頭で『何故区別しなければならないのか?』という疑問を提示したと思う。
 これに対する最も簡易な答えは、“そうする事に利点がある”からだ。ミームを他の情報災害と区別する事で、其々の性質に合致した対処を講じる事が可能だ。
 
 なお、“異常なミーム”と“ミーム的異常”は同義では無い。ミーム自体に異常がある、わば情報災害としてのミーマチックオブジェクトと、ミーム的性質に異常のある、謂わばミームとしてのミーマチックオブジェクトが存在するからだ。後者は基本的には、他の異常性をともなっている事が多い為、ミーマチックオブジェクトと呼称される事は稀だね。
 
 ミーム的異常とは、簡潔に言えば情報のミーム的性質に異常性が存在するものだ。つまり、“複製”、“拡散”、“変異”の3プロセスの内のどれかに異常性を持つ物を指している。ここで注目すべきは情報自体ではなく、それが広まる過程だ。この異常に於いては、それが認識災害であったり、若しくは全く情報的でないオブジェクトであっても、ミーム的な振る舞いを見せ、拡散し、変質していく。
 また、先にも述べた前提として、ミーム汚染自体は何の異常性も無い、ごく普通に起こる事柄であり、これには説得を納得するのと同程度の時間と理解力を要する。仮に、その過程の一切を省略して対象に感染するミームが在る場合、それは明らかな“異常”であると判断される。逆にどれだけ対象が理解した気になっても絶対に感染しないミームもまた、明確な“ミーム的な異常”であり、これも収容対象となる。
 我々はこれらをミーム的異常を持つオブジェクトと定義する。あくまでも、今述べたのはミーム的な性質に異常を持っている物のことだ。
 
 一方で、異常なミームはそのまま、異常な結果をもたらすミームのことだ。多くはミーム的性質にも異常を持つ。ここで重要なのは“ミームは内在化される情報である”という前提だ。
 危険なミームは対象の、自覚・非自覚を問わず、何らかの行動の引き金となり、良識ある人間を殺人者に変えてしまう可能性を持つ。内在化されてしまった情報に従って意思決定を行う我々は、ミームの影響下から完全に逃れる事は出来ない。最も我々を致命的存在に変え得るのは、善悪の判断だ。善悪はミームである、普段それの危険性を考える事は無いだろう。何故人がカッとなって殺人を起こすのかを考えてみたまえ。怒りはミームと不快感に依って導かれる。
 常でさえ、そうなのだ。であるならば、我々が収容すべき異常なミームとは、一体どれ程の影響を与えるものなのか。
 
 例えば、だ。
 
 ミームに依って人間が突然上空にすっ飛んで行ったりはしない。だが、自分は飛べると思い込み、実際に羽を生やして飛んで行ってしまうことはある。
 ミームに依って人が生き返ることは無い。だが、生きている人間が自分を死者だと思い込み、実際に身体が腐ることはある。
 ミームに依って何かの実存が消失することは無いが、存在の記録と記憶の一切が失われることある。ミームに依って地球が破壊されることは無いが、我々の文明が崩壊することはある。
 
 それが、情報災害と異常なミームとの差だ。我々が扱うミームには、こういった異常性が含まれる。
 
 何よりも恐ろしいのは、感染しているミームを自覚的に否定する事は難しく、そもそも自覚する事すら難しいという点だ。
 また、ミームのミームたる所以として、ただの動物であることを止めた知恵ある者の末裔まつえいである以上、諸君がミームから完全に逃げ遂せることは不可能だ。内在化された情報自体をどうこうするのは、実質的には不可能なのだ。例えそれがどれだけ馬鹿げたミームだろうと、感染している時点で諸君に逃れるすべは無い。
 
 
 他の情報災害の場合、対処法は主に、"認識しない"、"知覚しない"ことだ。だがこれは非常に難しい。我々は自身の興味の方向性を、自らの意志で以って制限する事に慣れてはいないし、SCPオブジェクトは視界を掠めただけで我々を簡単に侵食する。これらから逃れるのは、至難の技だ。
 
 だがミーム異常の場合は、曝露したとしても対処法が存在する。先に、『ミーム汚染から逃れる術は無い』とは言ったが、実はそうではない
 何故なら我々は財団だからだ。そう、諸君の予想通り、記憶処理の話だ。
 
 ミームは情報であるが、“内在化された情報”が異常性を持つという性質上、内在化されていなければ異常性など無いのだ。ならば、君がその致命的な情報を知る前まで頭を巻き戻してやれば良い。
 ただし、これで防げるのは基本的にはミーム異常のみであり、多くのミーマチックオブジェクトは認識災害的異常を伴っている事が多い為、記憶処理を過信してはいけない。情報的でない認識災害には、記憶処理はあまり有効な手立てだとは言えないからね。
 
 もう一つ、その情報に対する諸君の理解を変えるという方法がある。
 即ち、二重思考と意識改革だ。先ずは落ち着いてその情報を受け入れた後、己の認識の一切を疑ってみろ。
 “丸は四角である”、ほど、だが本当にそうか?
 “タブーなんて無い”、成る程、だが本当にそうか?
 “人を食べてはいけない”、成る程、だが本当にそうか?
 “君は君である”、成る程、だが本当にそうか?
 特異点と納得出来る落とし所を探れ。異常なミームと正常なミームを、己の中で両立させるんだ。丸は四角だが、それはそれとして丸は丸だし四角は四角だと納得するんだ。
 それが出来るのであれば、例え異常なミームに汚染されていようが、君は“客観的な正常性”を保つ事が出来る。君が異常な思考になっていたとしても、正常な視点を保持出来れば、少なくとも表面上は問題無いのだ。
 
 象が怖いのなら、頭の中でピンクの帽子でも被せて、怖くなくして仕舞えば良いのさ。ミームはあくまでも情報だ。それを基に下される諸君の意識を変えてしまおう。
 ミームに感染していても、それは沢山の情報の内の一つに過ぎない。であれば、我々は意識的にその情報への解釈を歪める事が可能だ。自身に内在化された情報の影響を、最小限に抑えるんだ。
 
 
 
 だが、認識災害の認識変性や、情報災害の二次感染等と、ミームとの区別は相も変わらず難しい。対処法を知っていたとしても、区別出来ないのでは意味が無い。そうだね?
 
 今ここに、私は簡易的な区分法を明示する。諸君が、今までの話を全て聞いていなくても、理解出来ていなくても、判別が付くような見分け方だ。眠そうな諸君、しゃんとし給え、起きろ。起きろと言っているんだ。
 
 
 ミーマチックオブジェクト群は、認識では無く、理解に依ってその異常性を発現させる。理解することが、そのまま精神・肉体に異常な変化をもたらすことがあるのだ。
 ミームはウィルスに似ていると私は言った。そう、感染と発症の間には潜伏期間が存在する。ミームの異常性発現は速やかなものでは無い。これは精神的・肉体的両方の場合でもだ。
 
 "異常が速やかなものは認識災害だ"と言いたい訳ではなく、また時間的な早さを論じている訳でも無い。ここで注目したいのは、ミーム的異常に於ける"ラグ"だ。致命的な異常性が発揮されるのに、ある程度の時間を要し、またミーム自体に感染するのにも十分な時間を要する。それこそがここで言うラグであり、感染経路と共に考慮すべき重要な特徴だ。
 
 この潜伏期間の有無を考えれば、自ずとその異常がミーム的性質を持っているのか、ミームとしての異常を持ち得ているのかが分かるだろう。
 何故ならミームとは、理解されるべき情報だからだ。理解されない内に影響が出る物はミームとは呼ばない。
 そしてミームというのは、媒体に依らない。言語や音楽、絵画や踊りといった物全てがミーマチック足り得る。
 以上を、重々覚えておいてくれ。
 


 
「結論を述べる。

 ミーム異常は多く認識災害に含まれ、認識災害は多く情報災害に含まれている。各々おのおのを区別するには異常性発現のトリガー、即ち感染経路を精査すべきだ。本当に重要なのは異常性の結果では無い、過程にこそ重要度を置く。
 そうして精査していった結果、ミーム的異常、ないしは異常ミームだという疑いが立つならば、我々はその異常性に対抗可能な手段を持っている。故に、諸君はその異常がミームなのかそうでは無いのかを意識する必要があるのだ。尚、“認識災害”と“認識異常”は全く別の言葉である為、混同しないように」

 最早半分位の出席者は机に突っ伏し、もう半分の者も半ば似たような状態だ。数名の奇特な人間だけが、真面目な顔でメモを取ったり、小さく頷いていた。針山も、手元の紙に何かを書き付け、頷く。それは端から見ると、ミミズがのたくったような線にしか見えなかったが。
 眠そうな聴衆の事など意に介した様子も無く、烏丸はパンッと一つ手を打ち、腰掛けていた講義机から飛び降りる。見た目に反して重そうな着地音で、船を漕いでいた数人が目を覚ました。

「そしておめでとう。諸君は最早完全に、“ミーム”というミームに感染した。ミームという概念ですら、そのミーム的性質によって徐々に変質していく。"ミームとは何か?"は、本来ならば原典に当たり、個々に解釈すべき事柄なのだろう。だが我々の多くに、そうやって原典に当たっているだけの時間は無い。
 いいか。ミームの本質とは、思い込みである。諸君の認識に変質をもたらし、その変質を基に蔓延はびこる。それがミームだ。ミームをミームと知る事で、我々はその異常に対抗し、影響を最小限に抑えることが出来るのだ。思い込みで行動してはならない。自身の思考を疑い、客観的に物事を判断するんだ。だから、今日話したことを、是非覚えておいてくれ」

 パチリとスクリーンが切り替わる。最初と同じ、タイトルと名前だけのスクリーン。烏丸は一度聴衆の顔を見回す。数瞬、針山の方をじっと見たが、直ぐに視線を外して、一呼吸置いた。

「以上で講義を終了する。質問がある者は私の研究室へ来るように。講義ログを見直したい人は、後でアップロードしておくからデータベースにアクセスしてくれ。では解散」

 ふぅとため息を吐くように緊張が緩み、講義室は途端に喧騒に包まれる。講義の内容を話し合う者、講義者の文句を言う者、昼飯の相談を始める者。皆、口々に話しながら講義室を出ていく。
 針山は彼等を見送りながら、広げていた書類をまとめる。先ほど読んでいた報告書を手に取り、少し考えてから、荷物の一番上に置いた。それから、人波が減ってきた所を見て、立ち上がった。

「あー、白月君、その辺の資料、研究室へ持って行ってくれ。頼んだよ」
「寄り道しないですぐ帰ってきてくださいね、教授。明日までに仕上げないといけない報告書、あるんですから」
「任せとけー」
 烏丸は丁度、荷物をまとめて、半分ほどを研究助手に渡している所だった。研究助手の女性が離れたのを見計らい、針山は声をかける。

「烏丸教授」
「やぁ、来ると思ったよ。えっと、ホニャララ君」
「僕の名前は針山です。講義お疲れ様でした。先日話していたことで相談があるんですが、この後お時間よろしいでしょうか?」
「あぁ、そうそう、SCP-040-JPについてだね。問題無いよ」

 そう言って歩きだした烏丸の後を追いかけ、思い直して追い抜きつつ、針山はSCP-040-JPの報告書を烏丸に渡した。しかし、烏丸は一瞥しただけで、手に取ろうとしない。代わりのように肩を竦めて、彼を先導するように足早に進む。
 どうせもう読んでいるか、それとも読みたくないかのどちらかなのだ。針山は特に気にしていない素振りで、どこに行くつもりなのかと訊いた。

「君のオフィスの心算だったんだが、駄目だったかい?」
「いえ、駄目という訳では」

 じゃあ良いじゃないか、と烏丸は笑う。くつくつという笑い声に、針山は内心苦い顔をする。駄目では無いが、良いという訳でも無いのだ。いつもの事ではあるが、部屋も汚い。ついでに丁度珈琲を切らしていたような予感を、彼は頭を振って払った。
 そのまま二人並んで無言で歩く。烏丸が口を開いたのは、暫く歩いてからだった。

さて、君。ここに絵がる」
 唐突に、本当に前置き無く紙片を取り出して、烏丸はそう言った。片手で持ったそれを、指先で針山の荷物の上に置く。
「そうですか」
「いや聞き給え。私が描いた絵だ」

 だからなんだ。そう思いつつ、彼は差し出された紙を見る。紙は丁寧に四つに折り畳まれて、表側が見えないようにしてあった。
「……これを、どうしろと?」
 訝りながら訊いた針山に、烏丸は首を傾げて見せる。彼は嫌そうに顔を顰めた。
 きっと拒否することは出来るのだろうし、烏丸がそれについて何も思わないであろうことは分かっていた。説明も無いし、見るからに怪しい。きっとまたロクでもない物なのだ。ここは断るのが吉なのだろうが、針山は足を止めて烏丸を見た。烏丸は悪びれない様子で首を傾げ、見ないのかい、などとのたまっている。

「見て欲しいんですか?」
「うん」

 案外素直に頷いた烏丸に、彼はふぅとため息を吐く。
「仕方がないですね。じゃあ、後で何か奢ってくださいよ」
「え、何で? 何でそうったんだい?」

 何やら不満そうな人のことは無視に限る。針山はため息混じりに書類を持ち換えて、紙を手に取った。これがもしヤバいモノだとしたら……と彼は一瞬考えたが、その時は烏丸教授がまた叱責を受けるだけだと気にしないことにした。一呼吸おいてから、パッと開いて見る。

「これは……」

 なんだろう。紙には四本の足らしきものを持つ、謎の生物らしきものが描かれていた。頭部のような丸型の何かがあって、目のようなものが書き込まれている。それは子供が描いた絵みたいに、線をとりあえず引いたという感じだった。

「……象ですか?」
「猫だよ」
 猫らしい。
「あの、本気で言ってます?」
「よく描けてるだろう?」
 本気で言っているらしい。

 絵を見て何故か誇らしげに胸を張る烏丸に目眩を覚えて、針山はこめかみを押さえる。以前に仕事で描いていた機器の概略図は、かなり的確で上手だった覚えがあるのだが、どうも芸術方面での才能はこの人には無いらしい。そもそも、040-JPの話をと言って来ているのに、何故よりによって猫なのか。マスクを付けたエージェントが、そんな二人を見ながら不審そうな様子で通り過ぎて行った。

「ん、まぁ、絵の巧拙を議論したい訳じゃ無いんだ」
「じゃあ何の話です?」
 烏丸は指を空中でくるくるさせて、彼の質問には答えずに再度歩き出す。

「君、“財団に報告すべきことを報告しないこと”についてどう考える?」

 お得意の脱線だ。針山は荷物を持ち直して、軽く呆れながら後を追った。

「職務規定違反ですね。事の大きさにもよりますけど、そこそこの処罰を受けます」
「良い回答だ。罪悪感は感じるかね?」
「違反することにですか? そうですね」
「罪悪感が導くのは常であれば贖罪行動だね」
「この場合は何が当たるんです?」
「んー、自身の行動の正当化か、規約自体の不備の糾弾か……」
「正常性バイアスの話ですか?」
いや
 烏丸は手を打とうとした、ようだった。実際は片手は完全に荷物で塞がっており、諦めて肩を竦めるだけだったが。
「ミームに対抗する手段は記憶処理と意識改革、と私は言ったね」
「意識改革……ダブルシンクの話でしたね。それと、烏丸教授は言っていませんでしたが、対抗ミームの摂取も有効です」
「うむ。対抗ミームと言うのは、あるミームと逆の意味または──」
「または、あるミームと矛盾する意味を持つミームです。通常、何かしらのミームの影響を低減、ないしは無効化する目的で使われます」

 彼の言葉に満足そうに頷く烏丸に片手を挙げて、針山は続けようとした烏丸の言葉を遮る。
「で、さっきの絵って何なんです?」
 こういう時の烏丸は機を見て話を戻さないと、いつまでも脱線したまま戻って来てくれないからだ。最終的には本線に戻って来るのだとしても、気長に待てるような心持ちでもなかった。
 烏丸は暫くの間、指をくるくる回すばかりで答えなかった。無言のまま、暫くリノリウムの床を靴底が叩く音が響く。ややあって、烏丸は告げた。

「あれは、ミーム汚染用意匠の、簡易版だよ。“ルールを犯す”ことへ拒否感を覚えるようになる代物だ」
「……あの」
「なんだい?」
「僕はそれに暴露したんですよね?」
 針山は唸るように聞く。
「うん」

 なんてこと無い様子で頷いた烏丸を、針山は抗議の意味を込めて思いっきり睨みつける。当の烏丸は、君そんな顔も出来るんだね、等と呑気な事を言っていたが、更に彼が非難の眼差しを向けてくるので、慌てたように手を振って視線を遮った。その後、帽子のひさしの下からチラリと彼の表情を覗うと、素っ気なくあらぬ方向を向いてしまった。

「それって、確実に、やばいモノじゃないですか」
「否、殆ど影響は無い筈だ。実際、私の行動規範が変化しなかった事は、既に白月君と検証済みだしね。君程度の職員であれば、まぁ影響など無いと予想している」
「何の根拠があってそう言えるのか、お聞かせ願いたいですね」

 言葉の真意を探ろうと、針山は背の低い論客をまじまじと見つめた。位置的には、帽子の頭頂部を眺めるだけに終わったが。彼の言葉に烏丸はあからさまに肩を落として見せる。そして指を一本立てると、物分りの悪い生徒に教え諭すような口調でこう言った。

「いいかい、ハニャハニャ君。人は既に感染してるミームには感染しないんだよ。十分に期間を置き変質した物ならいざ知らず、毎日再確認するようなミームに今更感染性は生じん。感染しないミームは、無論持った異常性も関係有るまい。
 君はルールを故意に破る男では無い。破るとしても、それは正当かつ理論付けられた理由が立てられるが故だ。多くの職員がそうであるように、ね。依って君が普段から規則を破る事を悪だと感じるのならば、追加で同じミームに感染しようが結果は同じだ。罪悪感が濃くなりはするだろうが、それにどれ程の意味がある? いずれにせよ、君は理由無く規則を破らない。だからあのミーム汚染は、君には影響が無いのさ」

  詭弁じゃないか、という言葉を、針山はすんでの所で飲み込んだ。何も驚く事ではない。彼は一つため息を吐く。何かを誤魔化そうとする時の烏丸はいつもこうだ。先日も、烏丸の演説に言い包められて、高価な万年筆を実費で購入してしまった職員を数人見かけた。今の針山も、言い包められかけているのだろう。彼が相手にしているのはそういう人間だった。

 針山は長い間目をうろうろとさせていたが、思案の末に、短い言葉を吐き出した。

「結論を」
「対抗ミームの話さ」

 烏丸は指をくるくる回しながら、あっけらかんと言う。
「対抗ミーム処置に疑問があるんだ。今日話し合う予定の040-JPだが、アレを防ぐのに、対抗ミームは本当に有効なのかい? いや、事実として効果的なのは理解しているさ。でなければもっと早期に問題になっていないとおかしいし、それでは我々が無能だという話になってしまう。勿論そんなことはない。我々はミーム異常に対して、対抗ミームを流布する、接種するという形で対抗策としている。対処法は今まで有用であったし、それは今に至るまで変わらない。
 だがしかし、実際問題として、対抗ミーム処置の手法が確立されているかと訊かれると、それはNOだ。そうだろう? そもそもからして、ミームに感染した者は感染したミームを自覚する事は難しく、表沙汰にならないそれを外から観測する事も難しい。
 無論、効果があろうと無かろうと、我々に選択肢は無い。だが、疑問だけがある。この疑問を解決したい」
「成る程……」

 言わんとするところは分かった。同時に、先ほどの脱線会話が、暴露後の自分の価値観が変動しているかどうかを確認していたのだと気付き、彼は歯を噛んだ。相変わらず食えない人だ。そう言う事は事前に言って欲しかったし、そもそも人を実験台にしないで欲しい。そう思って苦い顔をしながら、針山は頬をかく。

「それで、試してみた結果はどうなんです?」
「うむ、"既に感染してるミームには感染しない"という事実は、対抗ミームの一つの基本である為、ある意味一つの証明にはなった。同等のミームを事前に摂取しておくことで、当該ミームの影響を減らす事が出来る筈だ、恐らくは」
「何故……僕に?」
 一瞬悩んだ後、針山はそう聞いた。
「意味なんてないさ。個人的に、ダブルシンクでのミーム影響回避以外の実例が欲しかっただけだよ。偶々たまたま、君が居た。それだけさ、ホンガラ君」

 烏丸は悪びれない様子で肩をすくめた。たまたま、という言葉にどこか安心したような、むしろ残念なような気分を味わいながら、針山はミーム意匠の描かれた紙片を見る。紙片は内側に折り込まれており、中身は見えない。
 そう、“ダブルシンクでのミーム影響回避以外の実例”である。先程烏丸が説明したのは、事前にミームを摂取することでミーム異常を受けない、という理論だったが、まず烏丸がルールを破る事を躊躇ちゅうちょしなさそうな人柄なのだ。そしてミーム意匠は手描きらしいし、針山が確信していたように、きっと烏丸は今回のミーム意匠の実地テストの許可なんて取っていない筈だ。にも関わらず、烏丸の様子はいたって普通で、変わった様子はない。彼は、本日何度目になるか分からないため息を吐いた。

「そうですね、貴方はそういう人間でした」

 話しているうちに、二人は針山のオフィス前に着いていた。烏丸は首を傾げて、扉を開けるように無言で促す。針山は扉に手をかけつつ、何かを言おうとして、何度か口を開け閉めしていた。何か一言、言い返したい気分だったのだ。彼は扉を開きながら結局こう言った。

「あと、……僕の名前は針山ですよ、烏丸教授」
ってるさ、それが君の持つ、一種のミーム的異常だからね」

 烏丸はくつくつと喉の奥で笑いながら部屋に入り、室内の鹿島研究員にやぁと手を振った。針山はじとーっとした目を烏丸に向けながら、後をついて部屋に入る。やっぱり、この人は、苦手だ。
 微妙な顔をしている針山を振り返って、烏丸は手を振る。

「で、ホギャホギャ君。本題は040-JPだ」
「針山です。はい、相談と言うのは、先日の……」

 業務モードになった二人の会話を廊下に残して、オフィスの扉が閉まった。

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