2014年度の死亡事案
Ketergramsとは、業務中の財団職員が死亡する要因となった事実および出来事の概略を速やかに広めるための、安全小委員会プログラムの一環である。提供データは予備調査にのみ基づいており、これらの事案に関する最終的な判断や決定を表すものではない。大半の広報においては、関連する死亡者を予防または軽減できた可能性が高いと考えられる“最良実施例”を1つ以上推奨している。
広報に含まれる情報は必要に応じて編集されており、情報曝露への特殊禁止条件が無いL-1以上のスタッフによる一般利用が認められている。管理者は可能な限り速やかにこれらの広報を、スタッフが集合する、もしくは頻繁に訪れる適切なエリアに貼り出すことを求められる。
この昨年版広報の年次要約は、職員が膨大な業務量、休暇、または身体的無能力化によって把握していない可能性がある事案の検討を可能とするために提供される。
個々の読者は掲載されている情報について同僚と話し合い、自分ならばどのような準備を行ったか、または展開した出来事にどのように対応したかを熟考することが推奨される。監督職員は一般的かつ具体性のある実践案を念頭に置き、安全小委員会に届け出ることを求められる。当委員会の任務は財団における活動の安全性の体系的改善である。
ミームによる死亡者
2014年2月22日 土曜日、3週間の実務経験を有する22歳のレベル1研究員が、異常データの調査対象となっている要注意領域で、過去に存在を知られていなかったミーム災害を発見した後に自己終了した。
被害者は哲学者アリスティッポスが制作した、(財団の外部では)未知の幾何学の証明が描写されている紀元前4世紀のフレスコ画を手作業で修復していた。監視映像によると、フレスコ画の全体が唐突に崩落して厚い埃の層となり、その下にモザイク画が隠されていた様子が、レンズが埃と岩屑で覆い隠される前に一瞬だけ映り込んでいる。音声記録には20秒間に及ぶ被害者のくしゃみと喘ぎ声、続けて8秒間の完全な沈黙が残されている。その後、辛うじて聞こえる言葉(恐らく“avaunt ye”)が、被害者のものと推定される喉音で囁かれる。これに続いて、8分20秒間の急速な軽い剥離音と、それを不定期に遮る被害者の支離滅裂な呻き声が記録されている。
対応チームは鼻、口、両掌に深刻な擦り傷を負った被害者が、芸術品の前の床に不応答状態で倒れているのを発見した。現場証拠は、被害者の負傷が顔と手を — 急速に、繰り返し、強い力を込めて — モザイク画を構成する粗削りなオニキスの細片に擦りつけた結果であることを示唆した。蘇生の努力は成功しなかった。
事案直後の隠蔽されていたモザイク画 - 大部分の詳細、特にミームトリガーは被害者の血液で曖昧化されている。
最良実施例
- 要注意領域内での研究を行う際は、周知されている各種ミームへの基本的な対抗接種を受ける。
- 実務に取り組む場合、異常な画像に曝露するリスクがある状況では、常に自動暗色化保護ゴーグルを着用する。
収容違反による死亡者
2014年4月30日 水曜日、18ヶ月間の研究職務経験を有し、サイト-66に所属する32歳のEuclid認定SCP研究員が、収容セクター・フォックストロットを移動中、第26号収容室を貫通したSCP-████の口吻に胸部を殴打されて致命傷を負った。
被害者はSCP-████割当ではなく、カフェテリアから自らのオフィスへ戻る途中に第26号収容室の前を通過していた。本来であれば、被害者は如何なる収容セクターとも交差しない承認通行ルート6番を利用したと思われるが、当日早くに無関係な収容違反が発生した結果、承認ルートには不快臭が残存していた。
正式に割り当てられていた勤務中の研究員(標準的な生命痕跡抑制スーツを着用し、収容室の壁に直接設置された油圧式実体検査アームを操縦していた)は被害者に対して、身振りで詰まりの解消支援を促した。
防護措置を取っていなかった被害者は、割当研究員に接近し、収容壁から5mの位置に引かれた黄色の警告線を横切った。ほぼ即座に、有歯口吻が厚さ5cmの鋼板を貫通し、被害者の心臓を穿刺して失血死させた。
その後の調査中に、被害者はカフェテリアのキッチンで1時間前に焼き上げられたばかりのピーナッツバタークッキーを2枚、殴打された胸ポケットに入れていたことが判明した。
最良実施例
- サイト内の安全エリア間を移動する際は、承認通行ルートのみを利用する。
- 故障した機器を修理するための標準的な手順に従う。自らが割り当てられているSCPに精通していないスタッフの助力を求めるべきではない。
- 全ての警告表示、ランプ、標識に注意する。それらの配置は正確である。
- 決して収容ゾーンに食品を持ち込んではならない。
収容違反による死亡者
2014年5月2日 土曜日、それぞれ15年間・12年間の危険物研究職務経験を有し、遠隔サイト-307に所属するKeter認定SCP研究員2名が、4個の冗長抑制ランプ全てがそれぞれ30秒以内に故障したのに続いて、卵白に類似する有機物質へと変換され、その後焼却によって死亡した。
施設記録によると、4個全てのランプの電球は、特別収容プロトコルが改訂された30ヶ月前の同じ日に設置、点灯されていた。後日行われた製造業者の仕様見直しは、この電球の平均寿命が21925.7時間であることを示した(標準偏差±0.1時間)。供給目録は、24個の予備電球が用意されており、最初の設置以降いずれも使用されていなかったことを示した。
被害者2名は過去44ヶ月間、問題なくサイト-307に割り当てられており、収容違反の発生時にはSCP-███の毎週定期の生体解剖を行っていた。
映像記録の最終フレーム、フェイルセーフが起爆した瞬間のホーソーン博士。
最良実施例
- 冗長消耗品の交換スケジュールは、それぞれの平均故障間隔がずれるように行う必要がある。
- 年次疼痛閾値トレーニングへの参加は、収容違反シナリオでの生存率を大幅に向上させる可能性がある。
収容試行中の死亡者
2014年7月5日 土曜日、37年間の実務経験を有する63歳の火災対応スペシャリストが、新奇な異常存在の収容試行中に殺害された。
被害者は機動部隊デルタ-2(“ロッキー山紅斑牡蠣”)と協働して、ワイオミング州コーディ西部の熱水噴出孔から出現した複数のEuclid実体を追跡していた。スペシャリストの主な収容上の役割は火災の抑制であり(当時の周辺環境の可燃性は極めて高かった)、副次的な役割は脅威に合わせた砲撃および空爆の調整だった。
今回の事例における攻撃用の積載物は、炎ベースSCPを効果的に鎮圧できると決定的に証明されている270°Cの実験的無水████████であった。指示通りに使用した場合、この物質が承認されたターゲットに直接害を及ぼすリスクは低い。しかしながら、溶融状態では発火して偶発的な火災を起こしやすくなる。
約80分間の積極的交戦を通して、MTF デルタ-2は死傷者を出すことなく、1体を除く全てのターゲットの収容に成功した。孤立した残り1体のターゲットは著しい攻撃性の高まりを示し、一部の目撃者から“計画的な悪意”と解釈される挙動で樹木や野生動物に着火した。しかしながら同時に、対象は混乱し始めたらしく、足取りを鈍らせながら開けた場所へと移動したため、MTFは速やかに対象と近接することができた。
被害者は最終的な弾幕砲火を要請するため輸送車両内に留まり、チームの他全員が徒歩でターゲットに接近した。
続けて起きた出来事は未だ調査中である。しかし、ミッション報告会では以下の事実が明らかとなっている。
- ターゲット座標は正確なスペクトラム拡散搬送周波数を用いて、想定通りの無線チャンネルで砲兵隊に提供された。
- 録音された指令の音声分析は被害者の声紋と一致しており、何事かを強要されている形跡は無い。
- ターゲット座標は以前の交戦に使用されたものよりも小数点が1桁高い状態で提供された。
- 大砲は正確に機能していたと思われ、監査ログの見直しで誤用や改竄の証拠は発見されなかった。
- 発射された弾幕は輸送車両に命中し、その正確な中心部に燃料ドアが位置していた。衝撃でディーゼル燃料のタンクが起爆し、車両の内容物は即座に焼却された。
- 輸送車両破壊後の短時間の混乱の間に、MTF デルタ-2は残存ターゲットを見失った。当該実体は未だ逃走中である。
着弾1.7秒後の輸送車両、スペシャリスト リースの視点より
最良実施例
- その運用が非実際的でない限りは、レーザー補助形式の完全自動砲撃システムに伴う余分な安全域を活用する。
- 電動装甲車は現在、有資格チームならば利用可能である。戦闘環境におけるディーゼル燃料関連のリスクを軽減するために電動装甲車の徴用を考慮すべし。
研究中の死亡者
2014年9月12日 金曜日、全員合わせて120年以上の実務経験を有し、かつて███████の最も内周に存在していた衛星███の周回軌道上に駐留していたEuclid認定SCP研究員8名(うち2名はECRGのメンバー)が、███が自然発生的に異常なエルゴ球を生成して彼らのステーションに耐え難い張力で干渉したことにより、またしても致命的なスパゲッティ化現象に曝された。
主要な収容ミッションに加え、FSウンルーでは超大型SCPの収容プロトコルを改良するための継続的な試みとして、局所的量子現象と多体軌道安定性の間の関係が試験されていた。
これらの事象の過去3回の反復と同様、厳密なタイムライン1、スタッフの行動の具体的詳細、ステーションから送信された散発的な報告の正確な内容は、本来の連続性からの僅かな逸脱を示している。しかしながら、展開中の非常事態の要所におけるスタッフの英雄的行動は同一の大まかな流れに従っていた。
時間2 (mm:ss) |
出来事 |
00:31 |
カラペチャン主任研究員が手動操作で炉壁を開放し、炉心と物理的に接触して量子もつれを途絶させる。これによって彼は致死量のベータ放射線に曝露するが、恐らく重力の指数関数的な増大を少なくとも5分遅らせたと思われる。 |
04:45 |
イマニシ副操縦士がスフォルツァ艦長の指令に直接反抗し、███████ ████ ███を投棄する。スフォルツァは自らのL-4権限を行使し、不服従・殺人・反逆の罪でイマニシに略式の死刑を宣告する。手元に武器が無いため、スフォルツァは絞殺によって処刑を執行する — これは過去反復における彼の手段からの顕著な逸脱である。遠隔測定の事後解析は、イマニシの行動がウンルーの軌道安定性を約15分延長したことを示唆する。 |
17:45 |
定期メンテナンス実施のため既にEVAスーツを着用していたタピルス研究員が、アーク溶接機を使用して、加圧式の外付けフッ素タンクおよび隣接するリチウムグリースの保管シリンダを故意に破壊する。結果として生じる化学反応はウンルーに相当量の巡行推力を提供する。安全ケーブルとタピルスの左腕は発火によって切断される。恐らくショック状態のタピルスは宇宙船から遠ざかりつつ、傷口と宇宙服の裂け目が焼灼によって塞がっている旨を楽観的に報告する。 |
18:02 |
███████が███████-███系の有効重心(███地表面のかなり内側に位置する)に向かって検出可能な規模で移動し始めた時点で、オディアムボ研究員が伝統的なアチョリ族の“誕生歌”を███地表面に送信する。オディアムボが歌うにつれて指数関数的な重力は安定し、恐らくXK-クラス世界終焉シナリオが回避されたと思われる。歌の終わりに、オディアムボは返答としてある種の音楽が聞こえると簡潔に報告する。センサーデータは、この直後に局所的な重力異常が彼女の頭蓋内に出現し、大規模な傷害をもたらしたことを示唆する。 |
27:01 |
ウンルーが███のエルゴ球の静止限界を越えた時点で、アーノルド研究員が粗雑なペンローズ・リフレクターを組み立てて活性化させ、███地表面に向けたエネルギー兵器として機能させるのに十分な動力を引き出す。しかしながら、対応する角運動量の喪失により、ウンルーは事象の地平線を越えて急降下する。 |
34:15 |
相対論的ジェットが███の地理極から37秒間噴射され、███の重力場は通常の強さに戻る。同時に███が崩壊する。続く5ヶ月間で、███の残骸は███████の周囲にまた1つ新しい輪を形成する。 |
今回の反復は想定よりも3分間遅れて発生しました。更に、███は現行モデルの予測よりも8度大きな近点引数で軌道上に出現しました。一連の出来事は終結するまでに前回の反復より7分長く持続しました。予測モデルの不確実性、█時間に及ぶ地球との通信遅延、███が出現時に遮蔽位置に存在したことの組み合わせにより、今回の反復が発生することを予期して財団が送信した指示を、無秩序状態に陥るまでの短い時間枠でウンルーが受信できた可能性は低いと考えられる。
倫理委員会および人事部門との協議を経て、O5評議会は今回の反復で繰り返し勇敢な行動を示したカラペチャン、イマニシ、タピルス、オディアムボに追加4点の財団星章を死後授与することを決定した。
ピーク時における███████とその衛星███の重力井戸の概略図。███のエルゴ球は赤、ウンルーの最終的な軌道は青で示されている。
最良実施例
- 同速回転する基準系においてのキリングの地平線を算出するにあたっては、軌道平面がより大きな質量を有するミンコフスキー多様体と正接する時、分母の余緯度が$1/\sqrt{1-\lambda}$まで相対論的にシフトする可能性に留意すべきである。常に直交部分多様体の緩和を考慮に入れるべし。
1 ウンルーでの現地測定に基づく。 (相対論的効果のため、地球で測定したタイムスタンプには著しい歪みが生じる)
2 初期の量子もつれに基づく。これは各反復の最初の瞬間と正確に対応している。