希望でした
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今日、就職の為に引っ越しの準備をしていたら、当時のものが出てきて懐かしくなったので、少しだけ。
 
 
最後にお会いしたのはもう随分と昔になりますが、お元気ですか?
僕はあれから、新しい環境にも慣れて、友達にも恵まれ、ささやかな毎日を過ごしています。

あの時は、いや今もだけれど、僕は馬鹿だったから、いつもビッシリと書き込まれて真っ赤になったプリントを返されていました。
作文を書くのすら本当に下手くそで。それでも頑張って書いたのに、細かく手直しをされて戻ってくる原稿用紙を見ては落ち込む日々でした。休み時間には、あの人は全然褒めないと誰かが愚痴っているのを聞いたこともあります。それに頷きかけたことだって、無いといえば嘘になります。

でも。でも一度だけ。「よく出来ました」という青い字が添えられた大きな花丸をもらえたことがありました。
僕にとっては初めてだったそれにまず驚いて、けれどその何倍も嬉しくて、その日は息を切らせて家まで帰り、真っ先に親に自慢したものです。
頑張ったことを褒めてもらえるのは、努力が認められるのは、こんなに素敵なことなんだと。僕はその時、初めて勉強が楽しいと思えたんです。
 
 
だから今、僕は下手くそなりに、創作サイトの隅っこで文章なんかを書いています。
他の人たちにはまだまだ到底敵いっこないけど、それでも面白いと思えるのは、きっとあなたのおかげです。

急な転校でロクに挨拶も出来なかったけれど。
最後にたった一言でも、感謝の気持ちを伝えられたら良かったのに。
文を生み出す楽しさを教えてくれて、ありがとう、と。
そしたら、どんな顔をするのかな。喜んでくれたかもしれないし、精進しなさいと諭してくれたかもしれない。あなたのことだから、おそらくどちらもなのでしょう。
 
 
お世話になったのは短い間でしたが、その声や笑顔。評価こそ厳しかったけれど、今なら分かる、僕たちを見る優しい目。そして特徴的な、黒い縁の眼鏡を。全て鮮明に覚えています。
先生は、あの時みたいに、笑えていますか?

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