ヤツメウナギとウツボ
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男は、いつか来る終わりに気付き、気付けなかった過去の己を悔いた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


それでも男は、終わりに向かって精一杯に生きていくだろう。
 
男は、ようやく亡き父を悼んだ。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


それでも男が、亡父との相対を恥じる事はもうないだろう。
 
女は、家族を楽にしてやったという観念が如何に独りよがりだったか思い知った。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


それでも女は、今はただ1人の肉親へと報い続けるだろう。
 
男は、解体される為だけに生を受け、死んでいったもの達への義憤に燃えた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


それでも男が、「必要な犠牲」と言い訳する事は二度とないだろう。
 
男は、病に、病との戦いに溶かされていった父に始めて向き合った。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


それでも男が、再び父から、死から目を逸らす事はないだろう。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


ヤツメウナギはただ耳を傾けた。

ウツボは全て平らげた。


ヤツメウナギは何も持ってはいなかった。

ウツボは全てを持っていた。


ヤツメウナギは満ち足りていた。彼らが秘めていたものは、今も彼らに息づいている。

彼らがそれをいつまでも手放してくれないので、ウツボは満足できなかった。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

あなたは、後悔するだろう。憤慨するだろう。懺悔するだろう。哀悼するだろう。焦燥するだろう。


ヤツメウナギはただ耳を傾けるだろう。

ウツボは全て平らげるだろう。


それでもあなたは、きっと——

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