眠った犬は寝かせておけ 2幕からなる劇
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眠った犬は寝かせておけ

2幕からなる劇

作者

ガブリエル・ジェイド







登場人物


アルト・クレフ ディレクター:                     財団職員。声のみの出演で、壇上には登場しない。

ケイン・パトス・クロウ 教授:               財団職員。ラブラドール・レトリバー。

ギアーズ博士:                        財団職員。40代半ばの男性。

ジェレミア・シメリアン博士:                 財団職員。30代前半の男性。

ゲイブリエル・ジェイド研究員:                 財団職員。30代前半の男性。

ケビン:                 好奇心の強い子ども。

ブランドン:                 引っ込み思案な子ども。

ザカリー:                 元気いっぱいな子ども。










場面
ディレクター・クレフの家の内装と、その周囲に建つ家々。


時間帯
現在。







第一幕

第一場




場面設定:


クレフの、アルカディアの住宅街にあるすてきな家の応接間。煙草の煙が空気中に充満している。ここが普通の郊外にある家とは違う、と観測者から見て判断できそうな唯一の材料は、煙草を吸いながら会話に参加する犬の存在である。




開幕:

クロウ、ギアーズ、シメリアン、ジェイドがポーカーテーブルの周りの椅子に座り、トランプをしている。クロウの前には、彼のカードを置くために小さな木製の支え台がおいてある。ポーカーチップの山がめいめいの前に置かれており、空席の前にも同様に置かれている。クレフは応接間の隣にあるトイレにいる。テーブルの周りにはビール瓶が何本か置いてある; この集団が数時間トランプをしていたことは明らかである。夕暮れ時のほのかな明かりは、応接間の窓からはほとんど見えない。シメリアンとジェイドは口論をしている。





シメリアン
(ほとんど怒鳴りながら)


君の研究チームがそれを何て呼んでるかは知らないが、不出来な収容プロトコルなのは確かだな。君は、そのくそったれの袋をそいつから外せないって言ってるのか?

(ジェイドは首を振って否定し、時間をかけて煙草を一吸いする。答えながら、彼はシメリアンに煙を吹きかける。突然、上の階で呼び鈴が鳴る。クロウは階段の方に視線を向ける。)


ジェイド


聞けよ、やってみるのは自由だ。僕のチームの誰にも、あの野郎のローブの中を探らせる気はないけどな。あいつは、プライバシーを侵害することがあの「病気」の初期症状だと思ってるんだ。

(ギアーズは話し始めるが、クロウに遮られる。)


クロウ


君たち、今のを聞いただろ?誰か来たみたいだ。クレフ、出ないのかい?

クレフがトイレから、クロウに向けて卑猥な言葉を叫ぶ。シメリアンはジェイドに面と向かい、彼の方に向かって身を乗り出す。


シメリアン


つまり君は、我々が、全身をスーツで覆った機動部隊にあいつを拘束させてアレを探させることさえも安全にはできないと言ってるのか?あいつはそこまで強くないだろう、まるで君が試してすらもないみたいに聞こえるぞ!

(再び呼び鈴が鳴る、今回は矢継ぎ早に2回。ギアーズは口論に割り込もうとするが、クレフに遮られる。)


クレフ


(オフ1で)
ちくしょう、誰か、あのくそったれの呼び鈴に出ないのか!? まったく、ここらじゃクソも満足にできやしないと来た。

(クロウは椅子から飛び降りて上の階に向かう。後ろではまだ口論の声が聞こえる。階段を登り切ると同時に、ドアをノックする音が聞こえる。)


クロウ


待ってよ、いま行く。まったく、僕たちのゲームを中断するほど緊急なことってなんだ?

クロウはドアのハンドルに結ばれているロープを引っ張ることでドアを開ける。ケビンとブランドンが外に立っている。ケビンはマリオの、ブランドンはルイージの格好をしている。2人ともブロックの形をしたキャンディーの入れ物を持っている。彼らはクロウを物珍しそうに見ている。


ブランドン


(ケビンに)
わあ!見ろよ、犬がドアを開けるように訓練されてる!すっげえ!

(ケビンは犬の他には誰もいない部屋を見回し、ブランドンはクロウを撫でようとかがむ。クロウは少年の方を見つめ、触れられないように距離を取る。)


ケビン


おーい!トリック・オア・トリート!
(困惑しながら、ブランドンに)
変なの。さっき誰かが何か言うのを聞いたんだけど。

クロウ


こんな時間に何をしてるんだい?なんの用だ?君たち、誰の子供なんだ?
(振り向いて階下に叫ぶ)
なあ、君たちバカの誰か、子どもをここに呼んだ?ジェイド、君の子かい?だいたい君、子どもがいるのか!?

(クロウが話すのを、ケビンとブランドンは信じられないという顔で見つめる)


ケビン


(横を向いて、ブランドンに)
おいおい、あの犬、今マジでしゃべってなかった?

ブランドン


(横を向いて、ケビンに)
きっと何か仕掛けがあるんだよ。かかしが置いてあるのかと思ってたら、それが実は男で僕たちに飛びかかってきた、あの家を覚えてる?あれみたいな感じ。

ジェイド


(オフで、かすかに聞こえてくる)
なんだって?ここにガキは必要ない。なにを売ってようが欲しくないって言って戻ってこいよ、ポーカーの準備はできてるぞ!

クロウ


ごめんね、トリッケルトリートはいらないんだ。どこかに行ってくれ。
(横に向かって)
ところでトリッケルトリートって何だろう、ドイツの何かかな?

(クロウが子どもたちの目の前でドアを閉めると、彼らは二人とも驚きと恐怖により叫び声を上げる。)

(暗転)


(第一幕終)







第二幕

第一場



場面設定:

応接間。




開幕:

シメリアン、ジェイド、ギアーズの目の前にはポーカーチップの小さな山が積まれている。クレフの座っていた空席の前のチップの山は、途方もない大きさにまでなっている。クロウはもうチップが手元になく、リクライニングチェアの上で丸くなって寝ている。話題が変わっているものの、ジェイドとシメリアンはまだいがみ合っている。


ジェイド


……ああ、そうだな。本当に、なあ、でたらめなんだよ。自尊心を持ち合わせてる神はカウボーイハットをかぶるわけがない。まったく、僕に言わせりゃ、あいつはファイルをいじくり回す間抜け野郎みたいだよ。最後にIT部門に君のチームのデータベースの安全性を確認させたのはいつだ?

(ギアーズが割って入ろうとするが、鳴り響く呼び鈴に遮られる。クロウは驚いて起き、予期していなかった騒音に取り乱して吠え始める。)


クレフ


(オフで)
このハンバーグたちを焦げ付かせるものか。君らの誰かが出てくれ、そして頼むから、クロウ、黙ってろ!私たちだって聞こえたさ!

(クロウはすぐに冷静さを取り戻し、階段に向かって歩き出す。)


クロウ


どうせゲームから脱落したんだ、僕が出るよ。また、ね。
(横に向かって)
イカサマ野郎どもめ。ハンバーグくらいがちょうどいいさ。

(クロウは正面玄関まで行き、ロープを使ってドアを開ける。ペストマスクと黒いローブを着たザカリーがドアの前に立っている。クロウは目に見えて驚いている。)


ザカリー


トリックオア……

(クロウは必死でドアを閉め、階下に走り降りる。困惑したザカリーの「トリート?」と言う声が、閉まったドアの向こうからかすかに聞こえる。)


クロウ


ちくしょう!みんな!ちくしょう!収容違反だ!クレフ、くそったれのガレージを開けてくれ、ウォーカーが必要だ!

(クロウが再び応接間に入ると、ジェイド、シメリアン、ギアーズは既に応接間にある重い金属のドアの裏のセーフルームに雪崩れ込もうとしている。ジェイドとシメリアンは目に見えて狼狽している。クレフはまだ別の部屋にいて、ハンバーグを焼いていることが音から判別できる。)


クレフ


(オフで)
XKクラスだろうが私には関係ないね、君は正々堂々賭けに負けたんだ、だから君が私の用意したロボトニック2の衣装を着てあれを操縦することに同意しない限り、返してはやらないぞ。

クロウ


クレフ、ちくしょうめ、今はそんなこと言ってる場合じゃないんだよ!

クレフ


(オフで)
違うね、クロウ、今こそまさにぴったりの状況だ。スーツを着てカオスエメラルドについて叫べよ、でなきゃ君の機械が私のガレージで10年腐るさ。私は構わないが。

クロウ


君は本気で、クソみたいなくだらない冗談のために僕たちの命を危険に晒すって言ってるのか?

(ジェイドは倉庫から、犬の形をした赤と黒のスパンデックス3製のスーツが入った埃だらけの箱と大きくてセイウチのような付けひげを引っ張り出してくる。ギアーズは話そうとして口を開けるが、シメリアンの叫び声にかき消される。)


シメリアン


彼はそうするってことくらいわかってるだろ、頼むから着てくれ!

クロウ


君たちは全員クソ野郎だ、知ってたかい?

(暗転)


(第二幕・第一場終)







第二幕

第二場




場面設定:

ガレージの中




開幕:

クロウはDr.ロボトニックに身を包み、ガムを急きょ使うことで鼻先に巨大な口ひげをつけている。 彼はエッグウォーカーのコックピットに座っている。ギアーズは部屋の中に立って、携帯電話のカメラをクロウに向けている。


クロウ


そうだ!ワシこそが本物のDr.エッグマンだ!生きて帰ったぞ、お前のおかげでな、シャドウ!
(横に向かって)
アルト、僕は絶対に君の靴の中にフンをしてやるからな。
(大声で)
よし、やったぞ、これで僕たちが惨い死に方をするのを回避しに行ってもいいかい?

(別室で堪えきれずに笑い出すクレフの声が聞こえる。ギアーズは無表情のまま、現在の光景を携帯電話で撮影している。ついにクレフが”OK”を出し、ギアーズはガレージのドアを開ける。クロウのエッグウォーカーは外に飛び出し、アームから催涙ガスのカプセルを乱射し始める。)


クロウ


なんてこった!思ってたよりもひどいぞ!あいつらがいたるところにいる!民間人の家に押し入ろうとしてるぞ!くそ、見つかった!おい、僕もセーフルームに入れてくれ!終わったら君たちに知らせに行く、もしーおい見てくれ、アレの大きさと言ったら!

(エッグウォーカーはもう一方の腕から大きな網を噴出し始める。通りからは叫び声が聞こえる。)


クロウ


"九尾狐"を呼べ!"下される鉄槌"を呼べ!お願いだから、"サムサラ"を呼んでくれ!

(エッグウォーカーから腕がもう2本出てきて、テーザー銃を闇雲に撃ち出す。遠くの方から警察のサイレンが聞こえてくる。)


(暗転)


(閉幕)

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