愛の奇跡
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異種の生物同士が生殖を行った場合、受精に成功したとしても細胞分裂には至る確立は極々小数、ほぼ零に近いという。
「ですからね、お客さん、うちじゃあ安心して買って頂けるってもんで・・・・・・」
細君が身重ではつまらないだろう、と同僚に連れて来られた娼館の遣り手爺はそう言って、諂うような笑いを浮かべた。
幾らなんでも獣とする趣味はない、僕は憤慨して同僚に耳打ちした。
「君、非合法の店に連れてってやるといっても、こんな悪趣味な所にするこたないだろう」
「違うんだなあそれが・・・・・・。まあ部屋で娘を待っててごらんよ、他じゃ出来ない体験だぜ」
同僚はにやりと笑うと、僕を置いて部屋に入ってしまった。
仕方ない、犬なり猫なりが出てきたところで、撫でてやるなりして時間を潰して、その後同僚をどつけば済む話だ。僕は無理矢理自分を納得させると、“日本生類創研お墨付き”と書かれた部屋の扉をくぐったのだった。

妻の腹はどんどん膨らんでゆく。僕が耳を当てると、とんとんと元気よく蹴り返す音が聞こえるくらいだ。
「こいつはきっと丈夫に生まれてくるぞ。顔はどっちに似てるかな、僕だろうか、お前だろうか」
「私はどちらでも・・・・・・。無事に生まれてくれさえすれば、それで十分ですわ」
たおやかに微笑む出来た妻の頭を撫でながら、僕は先日抱いた娘のことを思い出していた。
蕩けた瞳、えもいわれぬ桃の香、そして抱きしめた時の柔らかな肌!
次はあの子にしよう、僕は妻と和やかに語らいながらそう思う。黒髪に白い翼の映えていた、あの鶴娘に。


淫蕩の報いは、思ったよりすぐに訪れた。
「あなた!許して・・・遊びのつもりで、絶対に大丈夫って言われたの!」
泣き崩れる妻を前に、僕は途方にくれている。
腕の中でぐずる、人と猿と牛と鰐と鵞鳥を混ぜこぜにした赤子は、一体全体どうすべきなんだろう。
ねえ、教えてもらえませんか。

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