白紙の過去と白紙の未来
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白紙化された█████の歴史小説(SCP-2000-JP-B-██)

アイテム番号: SCP-2000-JP

オブジェクトクラス: Euclid Keter

特別収容プロトコル: SCP-2000-JPの発生によって混乱が生じた場合は目撃者及び周辺人物への記憶処理を行い、必要に応じてカバーストーリーの流布を行ってください。

許可のないSCP-2000-JP-Aへの立ち入りは禁止されています。SCP-2000-JP-Aに外部の人間が立ち入らないよう、常に厳重な警備を敷いてください。過去の戦争において重要なイベントが発生したあらゆる場所で異常性の有無を調査し、必要に応じて財団の管理下においてください。新たなSCP-2000-JP-Aが発見された場合は、即座に外部の人間の立ち入りを禁止し、過去にSCP-2000-JP-Aを訪れた人物についての調査を行う必要があります。

SCP-2000-JP-Aを用いた対人実験を行う際には、レベル3セキュリティクリアランス職員の許可を得た上で、必ずDクラス職員を用いてください。いかなる場合も、Dクラス職員以外の職員がSCP-2000-JP-Aに侵入することは許可されません。

SCP-2000-JP-Bに記録された重要な歴史資料が失われることを防ぐため、当該SCP-2000-JP-Bのバックアップをとり、サイト-01の最重要資料保管庫にて厳重に保管してください。このバックアップはO5評議会による非常事態宣言がなされた場合を除き、いかなる人物もアクセスが許可されません。

既に白紙化されたSCP-2000-JP-Bには現実改変能力は認められないため、積極的な収容は必要とされません。既に白紙化されたSCP-2000-JP-B自体の収容は必要ありませんが、各出版社・映像制作会社などに財団のエージェントを配置し、白紙の歴史資料の調査を行うことでSCP-2000-JP及びSCP-2000-JP-Cの捜索を行ってください。

SCP-2000-JP-Cは発見され次第、サイト-17のスクラントン現実錨を設置した標準人型収容室に収容されます。SCP-2000-JP-Cとの人間の直接的な接触は実験及びインタビューを除いて、可能な限り避けてください。

説明: SCP-2000-JPは歴史的事実を記録した文書・画像・音声・映像等が抹消される現象(以降、白紙化と呼称する)です。白紙化される歴史的事実を厳密に特定することは不可能ですが、全ての場合において当事者に悲しみや憎しみといった感情をもたらした出来事であり、戦争に関係したものが大多数を占めています。

SCP-2000-JP-AはSCP-2000-JPが発生する場所です。確認されているだけで全世界に██箇所存在していますが、正確な数は判明していません。発見されている全てのSCP-2000-JP-Aに共通している点として、過去に戦争による悲劇が起こった場所であることが挙げられます。SCP-2000-JP-Aに歴史的事実が記録されている物品(以降、SCP-2000-JP-Bと呼称する)を所持した人間が進入した際にSCP-2000-JPは発生します。1SCP-2000-JPによって白紙化されるものはSCP-2000-JP-Aに持ち込まれたSCP-2000-JP-Bのみに留まります。SCP-2000-JP-Aに侵入した人物の記憶が改変されることはありません。 歴史に関する知識の改変は見られませんが、感情や思想に直結する一部の記憶を改変する可能性があります。

SCP-2000-JP-Bに分類される歴史資料にはそれぞれ関連性の高いSCP-2000-JP-Aが存在していると考えられています。しかし、SCP-2000-JPの発生条件として必ずしもSCP-2000-JP-AとSCP-2000-JP-Bが対応している必要はありません。

SCP-2000-JP-Aに存在が示唆されている霊的実体との有意義な意思疎通は現在に至るまで成功していません。

補遺2000-JP.1: 発見経緯

最初のSCP-2000-JPが確認されたのは、沖縄県██郡███町に存在する鍾乳洞2の中(以降、SCP-2000-JP-A-1と識別する)でした。修学旅行に訪れていた███████中学校の生徒が平和学習の一環としてSCP-2000-JP-A-1を訪れた際、その場にいた生徒の所持していた「修学旅行のしおり」の第二次世界大戦に纏わるテキストが全て白紙化しました。この事実は「呪われた修学旅行」として中学生の間に噂が広まり、財団の注意を引いたことで発見に至りました。後日、インタビューによる調査を行った後に、関係者への記憶処理とカバーストーリー「ミスプリント」が流布されました。

以下は、現場にいた生徒に対して行われたインタビューの記録です。

対象: ████ (SCP-2000-JPを最初に確認した███████中学校の生徒です)

インタビュアー: エージェント██ (SCP-2000-JP-A-1の現地調査を行ったメンバーの一員です)

<録音開始, 2018/11/16>

エージェント██: 「修学旅行のしおり」が白紙であったことに気付いたときのことを教えてください。

████: ガマの中でしおりを開いたら戦争について書かれていたページだけ真っ白になっていました。さすがにあの場所でミスプリントだと指摘するのも気が引けたので、バスに戻ってから友達のを見せてもらったんです。そしたら、友達のも真っ白になっていました。

エージェント██: 修学旅行当日になってしおりが白紙であることに気付いたということでしょうか?

████: そうです。

エージェント██: 事前にしおりの内容を確認する機会はありましたか?

████: はい。事前学習でしおりを作ったときには、ちゃんとプリントされていました。ミスプリントが無いかクラス全員確認させられたはずなので、誰かのしおりを取り違えたなんてこともないと思います。

エージェント██: なるほど。わかりました。他に気になったことはありましたか?

████: こんなこと言っても信じてもらえないかもしれませんが……。

エージェント██: 気にせず話してみてください。

████: ガマの中から、声が聞こえた気がしました。もう、忘れてくれって……。

<録音終了>

現場に居合わせた生徒の一部が同様の証言をしていることから、SCP-2000-JP-Aに何らかの霊的実体が存在し、SCP-2000-JPとの関連性があるのではないかと疑われています。

補遺2000-JP.2: 未収容のSCP-2000-JPによる世界情勢への影響

SCP-2000-JPが発見されて以降に実施された財団の統計部門による試算により、今後10年間で核兵器を用いた世界大戦の発生する確率3が0.6%低下したことが示されました。この事例をもってSCP-2000-JPのオブジェクトクラスをThaumielに変更する提案がエージェント██によってなされましたが、管理者権限により却下されています。

補遺2000-JP.3: インシデント2020/9/9

██████高校の授業中において世界史の教科書が白紙化するという現象が起こりました。██████高校及びその立地においては歴史上、悲劇的な出来事は確認されていません。

以下は、インシデントの際に授業を行っていた教師に対するインタビュー記録です。

対象: ████ (██████高校の歴史教諭であり、後にSCP-2000-JP-C-1と識別されました)4

インタビュアー: ███博士

<録音開始, 2020/9/12>

███博士: 教科書が白紙になったという事件以前に、あなたのまわりで何か異変はありませんでしたか?異変でなくとも、心当たりのあることがあれば教えてください。

SCP-2000-JP-C-1: いえ、特にこれといったことは……あえて言うなら旅先で戦争の爪痕を見てきたことでしょうか?

███博士: 続けてください。

SCP-2000-JP-C-1: 知人の勧めで████████共和国5を訪れました。ああいった場所を訪れたのは初めてですが、幽霊なんて信じていないような私でも感じるものはありました。大きな意志というか、そういったものがあそこには漂っていたんです。

███博士: ここ最近、あなたの授業のスタイルが変わったという情報が入っています。何か、心変わりでもあったのでしょうか?

SCP-2000-JP-C-1: 歴史を忘れることで、憎しみはなくなる。私はそう思うようになりました。私たちが教えている歴史は、ただ徒に敵対心を煽っているだけではないのかと。教科書が真っ白になったときはむしろせいせいしましたよ。こんなものに縛られる必要は、もう無いんだと。

███博士: 残念ながら、あなたが目にしたものは平和をもたらすものではなく、明らかな異常現象です。私たちはそれを収容する必要があります。

SCP-2000-JP-C-1: ですが、一ついいでしょうか?

███博士: 何でしょう?

SCP-2000-JP-C-1: あなた方は異常を収容するための組織なんでしょう?だったらこれから起こりうる戦争なんかも収容すべきなんじゃないんですか?あなた方にとって戦争は異常ではないのですか?

<録音終了>

カント計数機での測定によりSCP-2000-JP-C-1は軽度の現実改変能力を有していることが示されました。このことから、SCP-2000-JPの白紙化現象はSCP-2000-JP-Aによる直接の作用ではなく、そこを訪れた人間を介した間接的な作用である可能性が浮上しました。

後に行われたSCP-2000-JP-A-██を用いた実験により、SCP-2000-JP-Aは訪れるものに限定的な現実改変能力の付与を行うことが判明しました。この現実改変能力を付与された人物(以降、SCP-2000-JP-Cと呼称)は任意の場所においてSCP-2000-JP-Bの白紙化が可能であると確認されました。この現象がオブジェクトの変質によるものなのか、今まで明らかになっていなかった性質によるものなのかについて、過去の事例を元に調査が進行中です。

インシデント2020/9/9と上記の実験結果から、SCP-2000-JPのオブジェクトクラスがKeterに変更され、特別収容プロトコルが現在のものへと改定されました。全てのSCP-2000-JP-Cを収容することは困難であり、現在もSCP-2000-JP-Cは増加していると考えられています。

補遺2000-JP.4: SCP-2000-JPの拡大

SCP-2000-JP-Cの急激な増加により、各地にてSCP-2000-JP-Bの白紙化が確認されてます。以下は、その記録の抜粋です。

確認されたSCP-2000-JPのリスト(抜粋):

関連性が高いSCP-2000-JP-A 歴史上のイベント 白紙化されたSCP-2000-JP-B
旧██県産業奨励館 原子爆弾の投下 付近の資料館に展示された被爆者による証言映像
████████=█████強制収容所 ███人に対する大量虐殺 被害者の手記
旧████████████跡地 ████同時多発テロ 慰霊碑に刻まれた犠牲者の氏名
[不明] 東西冷戦 NASAの研究施設に保管されていた初期の宇宙開発に関する資料
ギリシャの[編集済]島 シナリオXK-610-Ω 壊れた神の教会から回収された技術文書

担当者のコメント:

対象となるSCP-2000-JP-Bの幅が広がっている印象を受ける。たとえ間接的であろうと歴史的悲劇と関わりのある資料が白紙化するなら、それは人類文明そのものを白紙にしてしまう危険性、ともすればIK-クラス:世界文明崩壊シナリオを誘発する危険性すらあるのではないか? — ██博士

補遺2000-JP.5: プロトコル・ウルズ

SCP-2000-JPの原因となっている霊的実体は多くの死者の思念を含む複合体であり、明確な人格を持っていないことが判明しました。これまで、SCP-2000-JPの収容に向けた交渉の試みは全て失敗に終わっています。この霊的実体は全世界に拡散した状態で存在し、強力な復元能力を有しています。そのため、1箇所のSCP-2000-JP-Aで霊的実体を収容したとしても、数時間後には当該SCP-2000-JP-Aの機能が回復します。この霊的実体を地球規模で収容することは現在の財団の技術では困難とされています。

SCP-2000-JPの異常性は、SCP-2000-JP-A内に侵入した人間に限定的な現実改変能力を与えてSCP-2000-JP-Bの白紙化を行わせることであったということが研究により明らかになりました。この過程において、人間はSCP-2000-JP-Aに存在している霊的実体を認知することで現実改変能力を獲得し、半ば無意識にSCP-2000-JPを発生させています。つまり、人間が本来持っていた霊的実体に対する微弱な認知機能を完全に失わせることで、SCP-2000-JP-Cの増加を阻止できると考えられます。

2022/3/25、O5評議会によりプロトコル・ウルズの発案について協議がなされました。

提案: プロトコル・ウルズの実施

内容: SCP-2000-JPのより確実な収容のため、全人類に認知災害エージェントを曝露させることで霊的実体に対する認知能力を完全に失わせる。

投票結果:

賛成 反対 棄権
O5-4 O5-2 O5-1
O5-5 O5-3 O5-6
O5-7 O5-9
O5-8 O5-13
O5-10
O5-11
O5-12

O5評議会によるコメント:

たとえSCP-2000-JPが平和をもたらすものだったとしても、その平和とは人類の緩やかな衰退に他ならない。これまで、人類の進歩と歴史上の悲劇は切っても切り離せない関係だった。これからどんな悲劇が起ころうとも、それを乗り越えることで人類はさらなる進化をできるだろう。— O5-4

人類という種族が未熟である以上、歴史を全て忘れたところでまた新たな憎しみが生まれることは簡単に想像できる。我々と共にあった先祖の魂を感じることが、もう出来なくなるのだと考えると彼らに申し訳なく思う。しかし、今こそ我々の巣立ちのときだ。— O5-8

我々の文明は過去の積み重ねの上に成り立っている。我々は過去の記憶を忘れないために、過去の亡霊に別れを告げるのだ。我々はこの選択のことも決して忘れてはならない。— O5-10

提案は可決され、プロトコル・ウルズの施行が開始されました。

SCP-2000-JP-Cの捜索及び収容は引き続き実施されています。

補遺2000-JP.6: プロトコル・ウルズ施行による世界情勢の変化

プロトコル・ウルズの施行開始後、再び財団の統計部門により核兵器を用いた世界大戦の発生確率の試算が行われ、[O5権限により削除済み]結果が示されました。

補遺2000-JP.7: インシデント2031/6/9

2031/6/8、████半島において複数の国家間における軍事衝突が発生しました。当時の世界情勢からこの軍事衝突を発端とした世界大戦の勃発は不可避であろうと予想されましたが、翌2031/6/9、事態は急速な収束を向かえ、臨時の停戦協定が結ばれました。なお、現在もこの軍事衝突による世界大戦の危険性は看過できないとされています。事態が収束した原因として、現地に駐留していた軍隊の士気の低下が挙げられます。複数の軍人から「それまで降っていた雨が上がり虹が発生したことによって戦意が喪失した」という内容の証言がなされました。

同日、この軍事衝突の収束と類似する内容の小説がサイト-17に収容されているSCP-2000-JP-C-23によって執筆されていたことが確認されました。この小説の正確な構想・執筆時期は判明していませんが、インシデント2031/6/9の先月までには既に完成していたことが報告されています。

実際の軍事衝突と小説の内容の類似点は以下の通りです。

  • 軍事衝突の発生した日時
  • 軍事衝突が発生した地域の文化的背景
  • 虹の発生による軍の士気低下

以下は、SCP-2000-JP-C-23に対して行われたインタビューの記録です。

対象: SCP-2000-JP-C-23 (収容以前は小説家の████████として知られていました)

インタビュアー: ██████研究員

<録音開始, 2031/6/9>

██████研究員: あなたが収容室で小説を書きはじめた理由を教えてください。

SCP-2000-JP-C-23: 単純な理由だよ。ここは退屈だからね。想像の世界を楽しむことしかやることが無いんだ。

██████研究員: 申し訳なく思いますが、これも世界の秩序を保つためですので……。

SCP-2000-JP-C-23: いや、むしろ感謝しているよ。ここは外とは違って静かで落ち着く。物語を描くにはぴったりだ。

██████研究員: そう思っていただけるなら幸いです。質問を再開してもよろしいでしょうか?

SCP-2000-JP-C-23: ああ、構わないよ。

██████研究員: あなたの書いた小説に登場する3つの国は架空の国名のようですが、これには何かモチーフはありますか?

SCP-2000-JP-C-23: 在って無いようなものだよ。ここに連れてこられてから、外のことはあまり教えてもらえていないからね。

██████研究員: あなたの物語において虹は重要な意味を持っているようですが、着想のヒントになったものはありますか?

SCP-2000-JP-C-23: 2019年10月22日に日本で起こったこと6は覚えているかい?僕はあの虹にひどく感銘を受けてね。こんなことを考えるようになったんだ。科学に支配されるようになったこの世界で、神様がまだ存在しているのだとしたら、彼に一体何ができるのか?彼は一体、何をしようとするのか?たぶん、何の役にも立てないような些細な奇跡で、人々の心を明るくすることぐらいのものなんじゃないかな?

██████研究員: なるほど。それで虹ですか。

SCP-2000-JP-C-23: ところで、僕が白紙にしてしまったあの歴史小説を返してはくれないか?僕自身、あの頃は塞ぎ込んでいろんなことを忘れたがっていたが、今は新しく何かを描きたい気分なんだ。あの本に書きこみたくてうずうずしている!

██████研究員: その申請はおそらく通らないと思いますよ。

SCP-2000-JP-C-23: そうかい。それは残念だ。

<録音終了>

SCP-2000-JP-C-23が元来現実改変能力を有していた可能性及びSCP-2000-JPの性質が変化した可能性について、さらなる調査が必要とされています。

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