一ヶ月
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「・・・!D-3・・・!・・・D-3845-JP!」
自分を呼ぶ声に気づき、ハッと我に返る。どうやら俺は廊下で立ち尽くしてしまったらしい。
「いや、わかってますって博士。最近どうも物忘れがひどくて」
俺の名前はD-3845-JP、つっても本名じゃねぇ。かといって本名は呼ばれなさすぎて忘れかけてる。
金目当てで泥棒に入ったはいいが3人も刺しちまって、ムショん中で死ぬ日を待つ日々だったんだがどういうわけかこの財団に拾われた。
一ヶ月ちゃんと仕事すりゃ無罪放免、釈放って言うからどんな仕事だと思えばよくわからん部屋に入れられたり変なもん飲まされたり、見てきた中だけでも同僚がウン十人は死んでった。

だけどこの忌々しいとことも今日でオサラバだ。ここで働き始めてちょうど一ヶ月、約束の日が訪れたってわけだ。
「・・・というわけでこの財団の存在は秘匿されなければなりません。ですのでD-3845-JP、あなたには記憶処理を施し体験した一切のことを忘れていただきます」
「へいへい、こっから出られるなら記憶処理でもなんでもしてくださいや」
思い返せばこの一ヶ月、普通じゃありえねぇことばかりあったな。京都弁でしゃべるカナヘビ、奇声を上げるバイク乗り、ガキにしか見えねぇ25歳。聞いた話じゃあ喋る唐揚げってのもいたらしいが、ついにお目にかかれなかった。唯一の心残りといえばそれぐらいか。いや、もうここには用がねぇんだ。考えたってしょうがねぇ。
「・・・D-3845-JP、着きました。ここで記憶処理を受けていただきます」
そんなくだらないことを考えているうちに、どうやら記憶処理室らしいとこについたみてぇだ。
博士の話を聞く限りじゃ特殊な薬を打って記憶を曖昧にしたあと、釈放ってことらしいがちょっと怖えな。
「D-3845-JP、では記憶処理を行いますので中に入ってください。お疲れ様でした」
博士に促され中に入る。殺風景な部屋が広がり、いかにもって感じがする。
・・・お、今打たれたな、薬。あー、だんだんと意識が薄れてきやがった・・・


「・・・!D-3・・・!・・・D-3845-JP!」
自分を呼ぶ声に気づき、ハッと我に返る。どうやら俺は廊下で立ち尽くしてしまったらしい。
「いや、わかってますって博士。最近どうも物忘れがひどくて」
俺の名前はD-3845-JP、つっても本名じゃねぇ。本名は・・・なんだったかな。ま、気にすることでもないか。
ムショで死ぬ日を待つ日々だったが、ここで一ヶ月働きゃ釈放らしい。色々不安な気持ちもあるが、まぁ。
──あと一ヶ月、頑張りゃ済むことだ。

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