ネーミングセンスがない
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何てこったい!ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードの、君だけのミスター・共感を見つけちまったな!


人と心を分かち合うことって難しいことなのか?

俺にはわからない。人と語り合っても、振る舞いを見ても、俺には何を考えてるかすらわからねえんだ。だから、共感をできない。だから、友達はできなかった。だから、いつも一人だった。だから、誰の言葉も聞かなかった。

一つだけ、人の心をわかる方法がある。

俺はどんな時でも、どんな場所でも、お構い無しに道具を、人を殺すための道具を作れる。そして、俺は殺せる。そして、殺した時にだけそいつの心を知れる。だから、いつも一人だった。


警備員というのは多くの人が想像するように面倒な仕事だ。加えて今日はもっと面倒な日なんだ。

ここはヒラリーVSトランプ、夢のフリースタイルバトルだぜ、イェー。ああ、うん、要するに討論会ってことね。はい。

政治的なイベントごとには厄介者が現れがちなワケだけど、かのトランプ様となるとその襲撃の凄まじさはますますヒートアップしちまうんだ。でも、それでこの集まりの進行が妨げられちまうのは面倒だよな?それで僕たちがいるってワケさ。感謝しろよ、トランプ。

「おい。あいつ、明らかに変じゃないか?」

エディ・マーフィーに似た、というか要するに黒人の同僚が耳打ちしてくる。

「え?どれだよ」

「アレックス、お前の声はいつもでかすぎる。あの小太りで緩いリーゼントのやつだ」

「ああ、あいつか。アレはリーゼントじゃないね。リーゼントっていうのは……」

「わかった、わかった。とにかく、明らかに挙動不審だ。チェックした方が良さそうだ」

「まあそうだな」

確かに、その男は見た目の割にキョロキョロしすぎ、ウロウロしすぎで怪しい。何より政治に興味の無さそうな見た目をしてるのも気になる。まあこれは偏見だから忘れてくれ。男は俺たちの方にやってきた。そして僕と顔を合わせた。

「どうかしましたか?」

僕は警備員らしく優しく話しかけたつもりだが、男の反応は無い。もしかして喋れないのか?

「あの、どうかし……」

再度、声をかけようとすると、男は僕に銃を突きつけてきた。自分の指で作った銃だ。

「ハッ、とりあえず奥でゆっくり話をしようか」

男は引き金を引いた(フリをした)が、そんなものに構うほど僕はジョークに優しくはない。横にいる同僚も笑いを堪えきれない様子だ。

「ちょっと手伝ってくれ」

隣の同僚に助けを求めた。

「ああ、わかったよ、ウンコ」

「なんだって?」

「いや、わかったって言ってるだろう」

「そっちじゃない。今、なんて言った?」

「ウンコ」

「次、その名前を言ったらお前を殺す」

「そんなことを言われたらこちらも我慢できないが、とりあえず名札を確認した方がいいぞ」

言われるがままに関係者用パスを確認した。そこにははっきりと、自然な形でこう書かれていた。

Name: Poop

男はどこかへ走り去っていた。


自分がどうしてここにやって来たのかわからない。人が多い。この人たちは何をしようとしているのか、何のためにここに来ているのか、俺のことをどう思っているのか、全てわからない。せめて、ここがどこか知れれば。知ってそうな人に聞こう。

警察、警備員、何かよくわからないけど、制服を着た人がいる。教えてもらえそうだ。

彼の目の前に立った。しかし、喋れない。人を目の前にしても何もできない。

「どうかしましたか?」

どうもしていない。いや、している。俺は困っている。迷っている。教えて欲しい。それで俺は何を答えれば良い?この人は何を求めている?どうして俺に話しかける?

「あの、どうかし……」

とにかく、心を知りたかった。拳銃を突きつけた。男は笑った。

「ハッ、とりあえず奥でゆっくり話をしようか」

引き金を引いた。彼の額に穴が開く。その穴から俺に向かって彼の心が流れてくる。何を考えてるか。彼は何を考えていたんだ?俺の頭に流れて来たのは ー

Poop

彼はウンコでもしたいのか?自分のことをウンコだと思っているのか?彼はウンコに塗れたいのか?

それとも、俺のことをウンコ野郎だと思っている?

周りの人たちが、みんな、俺を見ている。何を考えている?わからない。とにかく、奥へ行こう。二人の男と女が喋っているのが聞こえる。マイクを使っているのか、とても大きな声だ。

彼らの気持ちも知りたい。俺は再び進み始めた。


俺以外のミスターズの気持ちはわかる。会ったことは無いけど、名前は知っている。

ミスター・ミームは人気者になりたがってた。ミズ・ゲーム狂はゲームを何よりも優先すべきことだと考えている。ミスター・タトゥーがあるやつは全てを手に入れたがってる、もしくは手に入れたかのどちらか。ただ、会ったことは無い。会ったこと無い彼らの気持ちはわかる。目の前の人らのことは何もわかりやしないのに。

自分が何のために生まれたかを知るのは人生の中で大きな課題だ。自分は何のために生まれたか。顔も見たことない母さんは何を考えて俺を生んだのか。ああ、結局、何もわからねえんだ。俺は何を求められている?俺は本当に必要とされいるのか?

「インタビューを始めてもよろしいですか?」

ダメだ。何も答えらんねえ。ここはどこなんだ?この白衣の男、博士、研究家、教授、何かわからねえ。何をしているんだ?体は固定されている。気持ちはわからない。

「……無視をしているか、喋られないのかははっきりしませんが、一先ず身体検査でもしましょうか。そこの君、来なさい」

今度はオレンジツナギの男がやってきた。

「何か怪しいものを見つけたら報告しなさい」

白衣の男が喋るとオレンジツナギの男は俺の体を弄り始めた。なんだ?気色が悪い。ポケットの中まで覗いてくる。

「先生、こんなんあったぜ」

ポケットからメモを抜き取られた。

「見せてください。ほお……ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードですか。この文書も資料として保管しましょう。そこの袋に入れなさい」

メモ、返してくれ。あのメモの彼ら、まだ会ったことない彼ら、生きているかもしれない彼ら、心がわかる彼ら。彼らとの繋がりはそこにしか、メモにしかないんだ。目の前の男たちの気持ちはわからない。思えば目の前だけじゃない、誰でもだ。生きている内に人の気持ちがわかることは無いだろう。みんなの気持ちを知りたい。


何かから逃げたりする時に人を撃ったり、刺したり、毒を飲ませて苦しませたり、そうして殺すのは便利だ。邪魔者や追っ手は消せる。でも、そういう時にもやつらの心の中はわかっちまう。そして、共感しちまう。分かち合いたくないね。そんなことは知りたくないんだ。もう喋ることのできない人の心をわかったって、俺はどうすればいい?

計画は慎重に進めた。この病院、刑務所、研究所か何かよくわからない施設の人たちは俺が人を殺さないようにいつも見張りをつけている。思い切り武器を出すジェスチャーなんてすれば直ぐに電気ショックだ。だが、重要なのは隙だ。出来る限りカメラにも映らないように気を配りながら組み立てていった。一度にできる作業時間は2秒くらいだが、重要なのは積み重ねだ。慎重に手順を間違えないように、バレることの無いように作業は進めた。

おおよそブツが完成したタイミングで腹に激痛が起こった。俺の様子に気がつくとすぐに手術が始まった。手術が終わったところで元の部屋に戻された。この状況はとても好都合だった。ここに連れて来られてからで一番、人の多い状況だ。ここにいる人たち全員の気持ちを知ることができたらどうだろう。俺が生きているならそれは叶わないかもしれない。でも、彼らと同じ天国か地獄か、どちらかわからないが一緒に行ければ気持ちをわかちあえるんじゃないか?少なくとも俺にはそれ以上のアイデアは出てこなかったんだ。

俺は起爆スイッチに手をかけた。


何てこったい!ゲーマーズ・アゲインスト・ウィードの、君だけのミスター・文字通りのシリアルキラーを見つけちまったな!

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