20██/12/31に自室にて死体で発見されたD-88230の手帳内に記されていた文書
評価: +4+x

<番号に大きな欠落がみられるが、原文ママ>

今日も同じだった。俺の記憶とこの手帳が正しければ、これで13回目になる。けれど一人として話す内容も何も変化がなかった。いい加減、除夜の鐘の音が聞きてえ。

昨日書いた愚痴が消えていない事に驚いた。理由はおそらく"日付の書き忘れ"だろう。幸運なことに俺は、自分の些細なミスから解決の糸口を見つけたってわけだ。これでやっと記録がつけられる。これで14回目だ。

15回目。エージェントだった時と違い監視の目があり、目立った行動がしづらい。この日記についても特別な許可をもらってるくらいだ。何か行動を起こさなければ解決できないのはわかっているが、さてどうするか。

21回目。行動を起こすことに成功した。といってもほんの些細なことだ。食堂にいた奴にわざと大げさにぶつかった。喧嘩騒ぎになっちまったが、これくらいの傷で済むなら万々歳だ。

22回目。結局また同じだった。朝起きた時には昨日の傷跡すら治って、いや無くなっていた。多少の変化じゃ終わらないらしい。もっと根本的な何かを探らなくては。

35回目。あれから色々と試したが効果なし。

52回目。もうずっとこのままでいいのかもしれない。そうすれば俺はずっと平和な日を過ごしてられる。そうだ、なにも無理に解決しなくてもいいじゃないか。

53回目。やっぱり駄目だな。こういう時に、頭がおかしくなってくれれば楽なんだがな。生憎こちとら元エージェントだ。精神面の訓練を受けちまってる。改めて解決に向かわねばならない。俺以外にこのことを知る者がいないのなら、誰かがやらなければいけないことなら、そして偶然にも俺が知ってしまっているのなら、それは俺に課された天命だ。やり遂げて見せる。

72回目。明日からはもっと大胆に行こうと思う。もし俺が死んで、そんでこの現象が続いてるようなら、これを読んだあんたにこの任務を任せることにする。

どうやら記憶処理を受けちまったらしい。大体のことはここを読んで察したが、今が何回目なのか忘れちまった。とりあえず73回目ってことにしておく。

108回目。今更ながら、何故この日なのかを考えた。俺の今置かれてる状況から考えるに、おそらく明日行われる「再雇用」が関係してるはずだ。明日からはこのことについて調べようと思う。

112回目。どうやら「再雇用」以外に「解雇」になることもあるらしい。調べる項目が増えちまった。

<以下非常に乱雑な文字で>

156回目。最悪だ。もう思い当たる原因は一つしかない。でもこれはきっと、わかりきっていたことだった。自覚したくないだけだった。俺は収容されるべき、オブジェクトだった。ずっと死ぬのが怖くて、その現実から逃げていたんだ。でもそれも今日で終わりだ。俺は今日確実に、俺自身を殺す。財団風に言うなら無力化ってところか。はっきり言って怖い。死にたくない。でもこれは俺だけの問題じゃない。俺一人の感情が、世界を止めていいはずがない。それに俺は、多くの人命を奪ってきた。きっとこれは、その報いでもあるのだろう。こんなところで働いてる割には、死に方を選べるだけ贅沢じゃねえか。最後は財団職員らしく、世界のために命を捨ててやるさ。じゃあな、クソッタレな世界。俺はお前のことが大嫌いだったし、どうやらお前もそうだったみたいだ。最後までお前のために動くってのも癪だが仕方ねえ。あばよ。

<手帳裏表紙裏には31個の正の字と横棒が1本記されている>

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。