アマラングナ語(アディタイト語)入門
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概要

話される国 ロシア
地域 ミヌシンスク盆地、トゥヴァ共和国
民族及び話者数 エニセイ・アマラング人: 20人、
サヤン・アマラング人: 14人、
アルタイ・アマラング人: 13人(2009年調べ)1
言語系統 ウラル語族
祖先言語 古アディタイト語、ダークL方言
方言 上エニセイ方言、後期アディタイト方言(ライトL方言)、サヤン方言、北アルタイ方言、南アルタイ方言
表記系統 サーキック伝統文字、モンゴル文字、ラテン文字、キリル文字

南シベリア、エニセイ川上流及びサヤン山脈に住むアディタイト語話者は、現地語でアディタイト語をアマラングナ(Ämärangnä2と呼称している。アマラング(Ämärang)、即ちエニセイ川は歴史上においてアディタイト語話者たちの故郷である。また、アディタイト語の現地語での別名として、ナルマサク(Nälmäsäk)、ナルカナ(Nälkänä)、聖なる言語(Holy tongue)やナルカ語(Tongue of Nälkä)などが存在する。

アディタイト語は、宗教目的のみに使用されており3、実際に会話で使われることはめったになく、「アディタイト語は秘密な言語である」という考えに基づき、使われることがあってもプライベートの場に限られる。アディタイト語についての知識が得られた外部の者は、アディタイト語を話すケット人シャーマンと一時期暮らしていた財団の人類学者だけだった。3500年の間、サーキックの経典は極めて厳密にシャーマンたちによって口伝されてきたため、アディタイト語に目立った変化はなく、学習者には一字一句を正しく発音することが求められる。

アディタイト語の話者は、完全にケット人と、異なるオクネフ人の直系血族を祖先にもつ人々だけによって構成されている。後者に関しては、その半数はY染色体ハプログループQ1に特徴づけられるエニセイ人を祖先に持ち、残りの半数はハプログループN1c-に特徴づけられるウラル人を祖先に持っている。オクネフ人は、南の針葉樹林帯タイガから移住してきた、エニセイ語を話すシベリア人と、前期ウラル祖語の原郷地とされる遼河文明から渡ってきた、アディタイト語を話すシベリア人の2つの集団からなる共同体だったが、2つの集団は互いに平和的な関係を保ち、類似した文化を発展させていた。しかし、好戦的なアーリア・アンドロノヴォ人、即ちダエーワが大規模に東進し、エニセイ川の上流にまで手を伸ばしたことで、緊張が高まった。多くのオクネフ人が奴隷にされ、やがてカルキスト・イオン4の率いる反乱が火蓋を切る。反乱でインド・イラン人は押し戻され、オクネフ人はその後、カラスク文化として栄えた。

アディタイト語はユニークな言語であり、分裂能格的で、膠着語と(構成的な)複総合的言語の特徴を併せ持つ。慣用表現が非常に多く、名詞を修飾する際には状態動詞より熟語や比較を多用する。また、言語学的に興味深い点としては、同言語に連続動詞構文が存在し、実質上の格変化が存在しないことである5

アディタイト語の音韻変化

アディタイト語は、青銅器時代に現在の西シベリア周辺地域で話されていた、ウラル語族に属する膠着的な言語である。初期のウラル祖語から派生した言語とされ、サモエード祖語、ツングース語やエニセイ諸語の影響を受けたとされる。このため、アディタイト語には前述の言語と同様な音韻変化が多く見られ、フィンランド語、ハンガリー語とエストニア語などに関連があるとされる。中央ウラル祖語に比べて、アディタイト語の変化は主に以下の通り。

  • 母音調和の拡大
  • 語中音、特に複合語における非強勢母音の脱落
  • *ï、 /ɯ/、*uなどの母音は/ɯ/に統合され、uと表記される
  • ウラル祖語の*xは*øへ変化
  • 語尾の/Vw/は/u/へ変化
  • /j/の子音環境で/a/は/e/へ変化
  • 母音に挟まれた/j/の脱落
  • ウラル祖語の/ɬ/は/l/へ変化。ただし東のサヤン方言では語中で/ɮ/に変化し、語頭の場合は/s/に統合される
  • 語中の/ɬʲ/及び*lは/j/へ変化
  • 長子音は鼻音+破裂音に変化。例として*lappe(平たい)はlabaに、*koppV(肺)はkomboに、*kokka(鉤、先端)はkonkoに変化する。ただし例外として、/kk/が/k/として現れる場合もある。
  • *Nš、*Nč、*Nć、*Nś、Nľ、Nr及びNlの子音連結での鼻音の脱落
  • *śと*šは/s/に統合される。また後期には新しいšが語中音脱落により現れた/sj/の異音として現れる
  • 付随的な特徴として口蓋化が消滅
  • *ćと*čは/ts/へ変化
  • 一部語頭に/ŋ/が挿入される(サモエード語派の特徴)

注意すべき点として、一部の証拠はアディタイト語は中央ウラル祖語から派生したものではなく、それより以前の祖語から発展してきたことを示唆している。例えば、ウラル祖語のwalke-śarnaから派生したとされるValksaranという単語では、saranは*śarnaの語中音消失前の形ではないかといわれている。一説によると、その2番目の音節での/a/が脱落し、代わりに/rn/の子音連結が現れたとされている。もう一つの例として、単語lüjekütakeŋは一般的に語源は*lülV + *kütke- + *ŋとされているが、前述と同様にkütakeの部分では/t/と/k/の間になかったはずの母音が挟まれている。

音韻体系

母音

前舌 後舌
i /i/, ü /y/ u /ɯ/
中央 e /e/ o /o/
ä /æ/ a /ɑ/

子音

両唇 歯茎 硬口蓋 軟口蓋
m /m/ n /n/ ŋ /ŋ/
破裂 p /p/ t /t/ k /k/
破擦 ts /t̠͡s/
歯擦 s /s/
摩擦 v /v/
側面 l /l/
ふるえ r /r/
半母 j /j/
  • 破裂音と歯擦音は母音に挟まれた場合に有声音化する。

方言

アディタイト語に区別が明確な方言が多く存在しており、その中で認知度が最も高いのは、エニセイ川以東で話されるダークL方言とライトL方言である。ダークL方言は、尾子音の/l/は/ɫ/に弱化され、さらに/o/にまで変化していることを特徴とする。一方、ライトL方言ではこのような変化はない。ヴァルカザロンの一部は、両者の話者によって書かれていると思われる。ライトL方言での“Valksaran”(光ある言葉)はダークL方言で“Voksaran”となっている。また、ライトL方言の“Valksaran”も最後は尾子音の/l/が/j/に変化しており、ValksaranVajksaranになった。

サヤン方言では、/ɬ/や/ɬʲ/は語中に現れた場合/ɮ/に変化し、語頭の場合は/s/に統合される。また、子音連結の*Nš、*Nč、*Nć、*Nś、Nľ、Nr及びNlの鼻音が脱落した結果、鼻母音は残留している。その他、サヤン方言はエニセイ語族から借用語を大量に取り入れており、/u/は非円唇化される。

上エニセイ方言では、語頭の/v/、/j/、/r/はそれぞれ/b/、/dʲ/、/d/に強化され、/ŋ/も/g/に変化し、有声破裂音が現れる。また、/lC/→/uC/、/rC/→/dVC/などと、子音連結が大量に消失する。その他、子音連結の/ɫj/や/kj/から、子音/x/が派生する。/u/の直後の/ɫ/が弱化され/u/になった場合、両者の間に/w/が現れ、その後さらに/b/へ変化する。/ue/などの二重母音は/we/となり、のちに/əbe/へ変化する。

北アルタイ方言と南アルタイ方言では、語尾の/ŋV/は/ŋ/に簡略化される。また、共通の変化として以下のようなものがある。

  • /v/ → /b/
  • 語頭の /ŋV/ → /Vŋ/
  • ウラル祖語の /oj/ → /ü/
  • /æ/ → /e/

語彙

アディタイト語はダエーワ方言(インド・ヨーロッパ語族)とツングース語族から大量に借用語を取り入れている。しかし、大多数の語彙はウラル祖語から派生したものである。

古アディタイト語 後期アディタイト語 ウラル祖語 語義
koja koja *kolja 悪霊、悪魔
vasa važ *wanša 古い、古の
juma juma *juma 空の神、神格
ŋorok norok *arV + diminutive suffix -kka 肉屋、引き裂く人
soone sone *sōne 腱、静脈、巻物
koratsa karadz *korvV こする、刻む、タトゥー
saran saran *śarna 呪文、言葉、発言
nälikä nälkä *ńä(x)li + ka 飢え、欲望
kulo kulo *kOlV (腸の)寄生虫
ŋalka najka *alka (前または後ろの)はし、始まり。始める
kalma kajma *kalma 死体、墓
lüjekütake lükütaka *lülV + *kütke- + *ŋ (字義的に 「力/契約のための祈り」) 力のための祈り
Valksaran (語源はvalke-saran) vajksaran *walkV + *śarna 光ある言葉
katsa kadz *kaća 青年、未婚の男性
koe koi *koje 人、人物
komi komi *kojmV 人、人物
minä min *mińä 息子の妻、若い女性
nae nai *naje 女性、妻。結婚する
niŋä niŋ niŋä 女性、妻。結婚する
nüta nüta *nojta 預言者、シャーマン、女司教。呪う
ŋura nura *urV 男性、雄
merätä märäd *mertä 人、人物
nisu nizu *nisV 女性
matse madz *mańćV 人、人物
ŋono non *onV 大きい、多い
änä än *enä 大きい、多い
ere ere *erV 大きい、多い。老いた
ütsi ütsi *üčV 大きい、厚い (ücik「陰茎」)
tsatsa tsa *čančV ~ *čačV 歩く、行く
ilma ilma *ilma 空、天気、神
jaka jag *jakka 行く、着く
jum jum *jomV 行く
tsaba tsab *ćappV 打つ、切る
tsaŋa tsaŋg *čaŋV- 打つ
kao kau *kajo 触れる、打つ
sinta sin *sitta ふん、糞便
luli luli *lewlV 息、魂
süve süb *sewe 食べる
üra üra *ürV 飲む
juui juui *juxi 飲む
kunsi kunsi *kunsi 排尿、小便
jukusi juksi *jokse 性交
nusuka nuska *nuska くしゃみ
ŋola nol *oɬa 寝る、横になる

借用語

古アディタイト語 後期アディタイト語 ダエーバイト (インド・イラン語派) 語義
sak sak sak- 聖なる
tavas tavas dajwas 神、空
jampa jamb jamb 性交
akaras karas agras 田んぼ、牧場
paraca paradz pracha 祈る、問う
ankis ang agnis 火の神
taca tadz dajcha 取る、取引する、与える
satus satus sadus 成功した、完全な、大金持ち
akarama akaram akarma 禁欲
sukanta sukand skanda 昇天6、上がる

発音の仕方7

母音

  • Iは、「イー」で発音する。英語のfeetの「ee」の発音と同じである。
  • Üは、「ユ」から口をすぼめて発音する。中国語やトルコ語のüの発音に似ている。
  • Eは、「エ」の発音とほぼ似ているが、舌の位置は少し上である。英語のbetの「e」の発音と同じである。
  • Oは、「オゥ」と発音する。日本語の「オ」の後に、「ウ」と「オ」の中間の音が弱く発音され、二重母音を構成する。英語のboatの「oa」と発音が同じである。
  • Uは、口を丸めて「ウー」と発音する。英語のfoodの「oo」の発音と同じである。
  • Äは、「ア」からやや「エ」に近づけて発音する。英語のcatの「a」の発音と同じである。
  • Aは、「アー」の発音にほぼ似ている(ただし、舌の位置は後ろ寄り)。英語のfatherの発音と同じである。

注意: 母音が二重に現れる時はやや長く発音されるがあくまで同じ母音である。例えば''aa''は英語のfatherの「a」より若干長く発音される。

子音

  • Jは、「ヤ」の子音で発音する。英語のyearの「y」の発音と同じである。
  • Cは、「ツ」の子音で発音する。英語のcatsの「ts」の発音と同じである。
  • Rは、ふるえ音のrで発音する。いわゆる「喧嘩口調」(巻き舌)でのラ行の子音と同じである。

注意: アディタイト語はウラル語族に属するため、英語のように破裂音(p、t、c、kパ、タ、ツァ、カ)が有気音となるのではなく無気音になる。日本語では、有気音と無気音を語義的に区別しないが、例えば「肩(カタ)」を発音する際に「カ」が有気音で、「鹿(シカ)」を発音する時の「カ」は無気音となる。アディタイト語の破裂音を発音する際は後者に準拠する。また、語中の破裂音はしばしば有声音化し、英語におけるb、d、j、gバ、ダ、ジャ、ガのようになるが、ウラル語族では無声音と有声音を語義的に区別しない。

文法

名詞

アディタイト語の名詞は14の格があり、単数形・双数形・複数形の形がある。文法的性は存在せず、今日のウラル諸語と同様である。冠詞の存在については不明である。
名詞の複数形を標示する際、語尾の場合は-t、語中の場合は-j-を追加する。この点はフィンランド語と同様である。また、双数形の標示は-k-である。

名詞の格は以下のものが含まれる。

  • 直接格(接尾辞なし)
  • 斜格 / 向格 -m
  • 奪格 / 部分格 -ta / -tä

比較級は次の熟語を使用する: X kala, Y cüŋkä8またはX Y-m kaŋ kava9。最上級は「超過」と「全て」を表す副詞の組み合わせで表現する。

接置詞

アディタイト語は前置詞ではなく後置詞を使用する。すなわち、英語のようなI went to Japan私-行った-日本にという形をとるのではなく、日本語のような「私は-日本に-行った」という語順をとる。興味深いことに、アディタイト語では接置詞の代わりにしばしば動詞や連続動詞構文が使用される。例えば、英語のsee through見抜くを表現するのに、日本語と似たようなsee-penetrate見-貫くの形を使用し、throughに相当する単語は存在しない。他にも、for~のためにの代わりにgive~に与えるが使用される。

形容詞

アディタイト語では、形容詞と動詞は区分されておらず、数もそれほど存在していない。アディタイト語は慣用表現が非常に多い言語であるため、形容詞の代わりに比較級が用いられる。例として、以下のようなものがある。

  • 「トムは強い」 - Tom na kucu, Tom na kucu cilaki uree, Tom na kucu sivike uree (字義的に、「トムは力を持っている」、「トムの力はクマの二頭筋のそれに匹敵する」、「トムはクマに匹敵する」)
  • 「私は花が好き」 - mi curumut rem käjä ŋäcäm(字義的に、私-花-色-血-愛する)

動詞

アディタイト語の動詞は時制テンスアスペクト(*-vaは非過去形、*-kaは非過去完結形または命令形、*-jaは過去形)とムード(*-neは条件-可能法)が存在する。

現存する最も古い史料でも、短時間で派生することが不可能な文法的な革新がいくつか散見されるため、アディタイト語の動詞は同言語が十分に古いことを証明している。また、アディタイト語の動詞は、文法上に連続動詞構文や名詞の抱合ができるなど、構成的な複統合的言語の典型的な特徴を持つ。連続動詞構文の例としては、以下のようなものがある。

  • 私はダエーワの嘘を見抜く - Mi Tüstaatan selutam van soole (字義的に、「私-ダエーワの嘘-見-貫く」)
  • 我々は山を登って越える - Man kalam kaŋ kava (字義的に、「我々-山-登り-上がる」)
  • 我々は彼を撃って、彼は死んだ(我々は彼を撃ち殺した) - Man sam lam veje(字義的に、我々-彼-撃ち-殺す)

人称標示は以下のとおりである。

主格 目的格
一人称単数 -m -ma
二人称単数 -t -ta
三人称単数 -a
一人称双数排除式 -mankätikä -mankätikää
二人称双数 -tan tana
三人称双数 -ki -kja
一人称双数包括式 -man -mana
一人称複数排除式 -mankun(a) -mankunaa
二人称複数 -tat -tata
三人称複数 -t -ta
一人称複数包括式 -mat -mata
空間 kü-
再帰 isea, icea
相互 totää

「空間」の接頭辞は「何かの近くの区域、場所、空間」を表し、例としてkücaŋa(彼/彼女はそれの周辺の空間にぶつかる=彼/彼女はあやうくそれにぶつかりかける)がある。この接辞的な複統合的言語のような特徴は、もともと「~に近い」意味を表す副詞が接頭辞化したものである。動詞に「kü-」の接頭辞をつけ、さらに無生物の接尾辞をつけることで「危うく~かける」の意味を表すことができる。

動詞の最初の音節を反復することで、動詞の習慣相が得られる。動詞全体を反復すると、習慣相のニュアンスを持つ強調相になる。最初の母音を長く引き伸ばした上で反復し、任意の接尾辞-nü-j-e-kura10をつけることで継続相11を構成できる。未完了を意味するEkuraを連続動詞構文で使用することで連続相12を表す13。進行相14は語尾の-naで表される。

連続相のもう一つの形として、英語のThe economy's been rough but I'm still makin' it経済はもうキツいがまだやっていけてるのニュアンスを表す場合には動詞ekujuna15を使用する。終止相はKuju16で表される。

相制における連続動詞構文のもう一つの例として、動詞kümäjü17を使用することで不完全相18を表す。

持続相19は副詞pile20で表す。延長相21kava22で表現する。目的相2324で、偶然相25ekarama26でそれぞれ表現する。

未来時制は「まもなく」「いまでない」を意味する単語で表す。また、連続動詞構文で表すこともできる。例: Mi caca süve27

無生物接尾辞

接尾辞 意味
-peŋe 丸い物体 びん、ボール、靴、頭など
-japa 平たい物体 ブランケット、コート、レジ袋、テーブルなど
-cupa 細くてしなやかな物体 ロープ、手袋、靴下、薄揚げ玉ねぎなど
-taŋke 細くてかたい物体 矢、ブレスレット、フライパン、のこぎりなど
-musi 糊状物体 アイスクリーム、泥、酔っ払って倒れこむ人など
-kanta 背負う物体 バックパック、束ねた物、麻袋、鞍など

統語論

アディタイト語の基本語順はSOV型で、サモエード語派の諸言語に類似している。しかし、アディタイト語の語順は近隣地域に存在した諸言語より自由度が高いと考えられている。
日本語やトルコ語に類似して、アディタイト語は非常に左枝分かれな言語である。関係節は文の最初に現れ、主動詞は常に後にくる。前置詞ではなく後置詞を使用し、形容詞は状態動詞の扱いを受け名詞の後にくる。

アラインメント

アディタイト語は活格言語(または分裂能格言語とも)であり、自動詞の主語(Sと略称される)は場合によって他動詞の主語(英語におけるIやsheなど)と同じ扱いを受けたり、他動詞の目的語(英語におけるmeやherなど)と同じ扱いを受けたりする言語である。

自動詞の主語(S)の格または一致28は働きかけの度合い(degree of volition)もしくは動作の施行者の動作への制御の度合いにより定まる。例えば、ある人が滑って転んだとすると、アディタイト語話者は「I fell」私-転んだという。しかし、「fell-me」転んだ-私(目的格)(主語の後置)または「fell I」転んだ-私(主格)をいう場合だと、その人が(例えばボクシングの試合で八百長で負けようとした際に)自ら転んだ意味になる。

状態動詞の主語は文法的に他動詞の目的語と同じグループに分けられている。状態動詞の主語と他動詞の目的語は同じく動詞の影響を受ける方(つまり語義的に動作の経験者もしくは動作に「耐える者」)だと考えると、この現象は自然とも言える。このため、例えばsleep寝るbecome hungry腹がへるlust渇望するなどの意味を持つ動詞の主語は動詞の前に置かれ、任意で斜格を標示する接尾辞-mを付けられる。

例文 (方言表現あり)

Soone Ültü

ültü mi vjema, ütü mi bədʲema

mi sülä ŋemu kuŋ uree, mi tüle gemu kug uree

ŋämän cuca, gemen susa

mäcä siŋa, mese tiga

num murun, num murun

ŋum salu, gum talu

ŋum suem, gum təbem

üe küce, üe küse

suem küce, təbem küse

käjä ŋuŋa, kedʲe guga

raŋa uree, daga uree

lujuma me, ludʲuma me

mimin ün näm, mimin ün nem

ŋul ŋul säsäjä, gubu gubu sesedʲe

mi suunam, mi suunam

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