エージェント・蒼井に対する人事評価
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死亡済み職員の人事ファイルを開いています………







このファイルはロックされています。編集・削除は担当人事官のみ行えます。




死亡済み職員につき、このファイルはアーカイブ化が予定されています。



名前: 蒼井 啓介(あおい けいすけ)

セキュリティクリアランス: レベル2/Eクラス 

職種: フィールドエージェント

所在: サイト-8152 神奈川・東京エリア

雇用までの経歴: [死亡済み職員につき、人事部のみ閲覧可能]

内部経歴: エージェント・蒼井は諜報部門に勤務するエージェントとして活動していました。[削除済み]に関わる事件の後、一般フィールドエージェントへと異動となりました。SCP-███-JP及びSCP-████-JPの発見の他、事案████-JP-5448での一般人の避難誘導などが主な成果です。現在、人事部監督下で後進育成を担当しています。直前までの指導職員はエージェント・戸神でした。

能力評価: 対人戦闘に関して適性があり、特に制圧術に長けています。銃火器に関しては拳銃には適性がありますが、狙撃銃の適性は平均的です。対オブジェクト戦闘に関しては使用が予想される火器への適性が低いため、機動部隊や警備職員には適さないと判断されました。

2015年2月より、後進育成のための教職職員へ試験任命されました。対象となる職員は戸神 司です。後進教育に関する評価はエージェント・戸神に対する個人技能評価が終了してからを予定していました。これに合わせて、人事部により、全体的な能力再評価の試験が予定されていましたが、本人死亡のため、再評価試験は中止されました。

人物: エージェント・蒼井はインシデント606-JPにより、実質的に死亡したものとみなされています。以前の詳細な人事情報に関しては人事部まで問い合わせてください。

死亡済み職員に対する情報処理事項に基づき、このファイルは以前の人事ファイルに代わり作成されました。
このファイルは死亡済み処理が完了した日から30日後に削除されます。以前の人事ファイルは死亡済み職員アーカイブとして人事部により保管されます。





職員記録5849-JP-E-4790 - 2016/2/██

対象: エージェント・蒼井

概要: 定期健康診断及びカウンセラーによる定期診断

内容: エージェント・蒼井に関する各種健康診断の結果と医師による診察結果は以下の通りです。

一般健康診断: 検査数値は範囲内で問題なし。ただし睡眠不足の傾向がみられる。慢性的ではないが、予備軍の可能性あり。

異常汚染診断: 各種オブジェクトによる異常に暴露した形跡なし。問題なしと判定。

心理カウンセリング: 問題がないように振る舞っているが、片岡里奈に関する質問に対して回答が遅れるなどの反応が見られる。経過観察が今後も必要と考えられる。

総合診断: エージェントとしての活動は可能と考えられますが、接触するオブジェクトによってはオブジェクトの影響下に入ることが予想されます。精神影響能力を持つオブジェクトとの接触は可能な限り避けるべきでしょう。オブジェクトと直接接触する機会の少ない役職へ異動することを提案します。

サイト-8152 常駐医務官 谷岡 誠二



2016/5/15 PM12:35

RAISAより通達


収容違反が発生しました。本通知を受け取った職員はサイト-8154司令部からの指示に従ってください。
収容違反対象のオブジェクトに対する情報は以下の通りです。

アイテム番号: SCP-606-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-606-JPの敷地は、対人センサー付きのフェンスで覆われています。センサーの感知範囲に部外者が侵入した場合、カバーストーリー「補修工事」を用いて退去させて下さい。

実験許可の可否は、研究主任に一任されます。SCP-606-JP-1との接触は、Dクラス職員にのみ許可します。他クラス職員は、単独で屋内に入らないで下さい。
 
過失等の不測の事態により、被験者以外の職員がSCP-606-JP-1に遭遇した場合、絶対に提案を了承してはいけません。警備員は直ちに屋内に突入して、SCP-606-JP-1との会話を中断させて下さい。

司令部より追加: 本収容違反は精神影響系のオブジェクトによる二次的被害の可能性があるため、事前に抗ミーム処置を行った上で周辺地域の調査を行ってください。また、サイト-8151はエージェント・蒼井に関する身辺調査を開始してください。




2016/5/26 16:24


件名 : エージェント・蒼井に関する調査報告

送信者 : 片切 沙苗

ファイル : 3つの添付ファイル

お疲れ様です。片切です。エージェント・蒼井に関する調査が完了したので、ご報告いたします。

結論から申し上げますと、エージェント・蒼井は自らの意志で収容違反を起こしたのだと推測されます。
本人の自宅からは、財団医師から処方された薬が保管されていました。服用した様子はなく、意図的にわかりづらい場所に保管されていました。また、指導を行っていたエージェント・戸神以外との接触が極端に減っていたことから、上層部に対して強い警戒心を持っていたようです。
ミーム・精神影響を及ぼすオブジェクトとの接触は確認されませんでした。診療記録と合わせて、片岡里奈殺害に対する後悔などはあれど、通常の精神状態の範疇であったと推測されます。

追加の調査等、必要でしたら再びご連絡ください。よろしくお願いいたします。




2016/6/1 16:57


件名 : Re;エージェント・蒼井に関する調査報告

送信者 : 吹上 真 

ファイル : なし

お疲れ様です。吹上です。

資料送信ありがとうございます。追加調査の必要はありません。
返信遅くなり申し訳ありません。また必要になりましたらご連絡します。


メールを送信し、吹上は溜息をついた。冷たいココアが火照った脳を良く冷やす。

惜しい人物を亡くした、と吹上は思った。能力的には優秀であったし、それが失われつつあるとしても、今回のようなことでその立場すら失われるのは損失であると吹上は考えている。

資料を見る限り、蒼井は優秀な人間であったことには間違いはない。スパイだった人間に惚れたのは財団内ではよくある悲劇だ、それ自体は責められることではないだろう。
問題なのは、全てを抱え込もうとしたことだ。上層部からの記憶処理を警戒したのか、処方箋には一切手が付けられておらず、人との接触もそういうことが出来ない戸神以外とはあまりしないようになった。内部保安部門にいただけに、そういった”闇”を見てきたのがいけなかったのだろうか。

──そして、そんな行動をした彼の気持ちもわかる気がする。
少なくとも、自分は財団以外で生きていくことは出来ないだろう。そういった確信がある。人の死には慣れてしまった。嫌われることに躊躇がなくなった。そういった確信がある。財団にいるのが長いなら、同じようなことがあるだろう。そして彼にとって、片岡里奈の殺害はその均衡を崩すきっかけだったのだ。ならば、その結末を選ぶことにも納得がいく。

財団職員としてルールを破った蒼井は、責め立てられるべき人間なのだろうか。贖罪の気持ちをないがしろにする財団は悪でないと言えるのだろうか。しかし、自分はそういったことを言えるような人間なのだろうか。
そこまで考えて、吹上は思考を打ち切った。これ以上は倫理委員会に任せるべきだ。少なくとも、自分にはまだ仕事がある。

──俺みたいになるなよ……。

少なくとも、その行動力だけはうらやましいと。吹上は心の中で思い、そして忘れた。


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