鳥達が鳴かないどこか(Places Where the Birds Don't Cry)
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今日も寝坊…本格的にアラームか何かをセットした方がいいかも。ローズ先生は怒って、私のことをこれまでで最悪の秘書だって言ってきた。あの年寄り、毎日毎日飽きずに3年間ずっと同じことを言ってきて。機嫌が良いところなんて見たことが無いんだけれど。仕事が楽だったのがまだ救いね。

このところ、先生はある患者の家から貰った山ほどの書類や資料を研究している。ラウル・サウンダーという男性が、気が狂ってしまって沢山の人を殺したとか。その目的がある種の「人生の意味探し」だったとかなんだとか。その男は18という数字に妙なこだわりがあって、それを見た先生は、「今まで見てきた『パレイドリア』の中でも最悪の症例だ」とか言っていた。 パレイドリアってヘンな言葉よね。今日はこの辺りにしておこう。外のカラスが夜中にずっとうるさいせいでロクに寝れないのよね…鳥達が夜中に鳴かない、ぐっすり眠れるようなどこかに引っ越そうかしら。


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「親愛なる日記さんへ1」みたいな日記の書き出しって意味が分からないのよね。ただノートに文字を書いてるだけなのに「特別なことをしてます」感を出すのってイタくないのかな。

まぁいいわ。今日は仕事は楽だったし、先生の小言に目を瞑れば結構良い日だった。ローズ先生にサウンダー関係の大量の資料の整理をさせられたから、休めるほど楽だったという訳ではなかったけれど。ただ奇妙なことがあって、渡された書類には埃…?では無いと思うけれど粉のような物質がついていた。まるで粉まみれの部屋に保管されていたみたい。そのせいで紙の手触りも心地悪かった。しかも紙で指も切ってしまうし。結構傷が深くて、腫れて膿んでしまったみたい。

もう寝よう。あのカラスども、また起こしてきたらもう許さない。夜中にあの鳥達が鳴かないどこかに引っ越せれば本当にいいのにな…はぁ、書いていること昨晩と同じね。「鳥達が鳴かないどこか」。ちょっと詩的で気に入っちゃった。


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今日は暇な一日だった。

でもローズ先生はいつもより様子が変だった。ビルを曲がった先の交差点にある赤信号が、他よりも早く変わるだとかで、ずっとグチグチ言っていた。窓から顔を出しては信号の色が変わるのを見ようとして。うん、まあ、彼のような年寄りは、いつかは変なことをするようになるものでしょう?知らないけど。

そういえば!英語の先生の患者さんがいて、「『鳥達が鳴かないどこか』という良さげなフレーズを思いついた」って話をしたの。彼女は「本や短編のタイトルなんかに良いと思う」って。もっと良い反応を期待してたからちょっと拍子抜けだけど。それにしても本当に詩的だわ。小説「鳥達が鳴かないどこか」スーザン・ジェームズ作、ね。

そろそろ寝なきゃ。でも、カラスが今夜鳴いてくれないかちょっと期待している自分がいる。そうしたら、鳥達が鳴かないどこかで寝られないことに文句が言えるから。


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ローズ先生が死んだ。

あの信号機のことでおかしくなってしまったのかしら。先生は昨日の夜中に家を出て、その後あの信号機で首を吊ったんだって。私は一日中事情聴取に付き合わされて、「彼は自殺を仄めかす言動をしていたか」とか「最近の彼の精神状態はどうだったか」とか質問責めにされた。先生が例の信号機のライトの点滅について、ずっとイライラしながら小言を言っていたことを伝えたら、警官さんは頷きながらそれを書き留めていた。その間ずっとあのカラスの鳴き声が聞こえて不愉快だった。警官の1人に「鳥達が鳴かないどこかで寝ないといけなかったなんて、先生は可哀想ね」と言ったら、私が変なことを言ったかのような目つきで私を見てきた。どこが変なのよ。

このフレーズは私の自慢なの。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達鳴かないどこか。ねぇ、こうやって言っていると素晴らしい言葉に聞こえてこない?

寝る時間ね。私が鳥達が鳴かないどこかで寝なくてもいいなんて、すごく嬉しい。


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仕事を探さないといけないけれど、このアパートの外に出たくはない。窓の外のカラスの声があまりに心地よくて…鳥達が鳴かないどこかに行くことが怖くなってきたくらい。冬が来たらどうしようかしら。南の方にひとっ飛びすれば良いか。


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鳥達が鳴かないどこか。


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あのカラスが昨日は一度も鳴いてくれなかった。不安になってしまう。一晩中寝返りをうちながらあの甲高い鳴き声が私を寝かしつけてくれるのを待っていたのに、結局鳴いてくれなかった。鳥達が鳴かないどこかにいるなんて、嫌だ。


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鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか。鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか鳥達が鳴かないどこか—(数ページ続く。 –██████博士)


調査メモ:

スーザン・ジェームズ氏の日記は、彼女が自殺したと思われるその後ただちに財団によって回収されました。ジェームズ氏が自室から数日間外出していないことに気づいた隣人が地元警察に通報し、警察が現地に到着した際に彼女は幾度か[データ削除済]を繰り返していた状態で発見されました。この事件の詳細な状況とローズ氏の事件との関連性は財団の注意を引き、ジェームズ氏に関する全ての資料等は公には伏せられました。アイテム番号SCP-E-███-2、「サウンダー文書」は分析のために財団によって回収されています。

補遺: SCP-E-███-2を扱う全ての研究者は完全な危険物取扱用防護装備を着用して臨むこと。次の[編集済]は許容できません。

Two birds with one stone.2
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