Quiet and…
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最後の夜がやってきた。終わりを迎えるのに丁度いい夜だった。

俺の回りには酔いどれの研究員が数人横たわっていた。もうすぐ部屋にガスが充満して、眠るように全員で死ぬ予定だった。部屋には寝息すら聞こえない静寂が残されていた。

俺も少しだけ酒を飲んでいた。だからか、少しだけ欲が出た。部屋を出て小さな小瓶を探した。

『感染症』

残された失敗作を思い出す。最後に、消えゆく前に、本当の世界を眺めてみようと思った。俺は感染症を患った。副作用で眠ってしまうとは思ってもいなかった。


次の朝、俺は目覚めた。死にたがりはとうに消えていた。世界が変わったのに気が付いた。俺はまだふらつくのにも構わず、起ち上がって外へ駆け出した。

木々が生い茂り、蝶が飛んでいた。幾匹かの動物が駆け巡り、風が吹いた。太陽は眩しい位にぎらついて、空には少しの雲すらなかった。
感染症
良い天気だ。

割り込む無粋な彩色は消え去り、無音のセンテンスだけが残される。パソコンのログの上で点滅を続けながら。

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