ある博土の恋
評価: +26+x

僕は財団で働いている博土だ。財団内部ではよくあることだが、僕は今、同じ職場で働いているエージェントに恋をしている。

「やあ、調子はどうだい」
「博士!会いたかったわ」
「研究の調子はどうだい」
「上々ね。もうすぐ、結果を上に出せると思う。しかしニホンにきて驚いたわ。例の『博士』の模倣をするなんてとんでもない頭をした人がいるなんて」
「日本での異常存在の活躍は活発化の一途を辿っているからね。君にここで働いてもらっているのも、米国本部でのノウハウを日本にできるだけ伝えてもらう点も大きい。ところで……今夜時間はあるかい」
「ええ、大丈夫よ」
「すこし話したいことがある。……今夜、一緒に食事でもどうだろう」
「まあ、嬉しいわ」

彼女は僕の申し出にうなずくと、仕事に戻る。僕は彼女の邪魔をしないよう、そっと自分の研究室に戻ったのだった。


「まずは何か頼もうか」
夜。私たちは小洒落たレストランに来ていた。財団での給与は十分に与えられており、私たちは通常同年代の社会人がもらう給料のおよそ5倍近くを毎月支払われているため、生活するぶんにはなかなかの贅沢が出来る。私を招待した彼は、いつものよごれた白衣から深いブルーのスーツに着替え、わたしを見つめていた。

「話って、いうのは……」
「なあに、博士」
私が彼を下の名で呼ぶと、彼は恥ずかしそうに笑った。
「いや、博土でいいよ。そんな……風に呼ばれるとなんだか照れてしまう」
「もう、プライベートなんだから名前でいいじゃない。私のこともそう呼んでよ」
「……うん。……エージェント……話っていうのは……実は……君にこれを受け取ってほしい」
彼は私を下の名前で呼ぶと、懐から小さな小箱を取り出した。中には、紅い宝石のきらめく指輪が入っている。
「君が研究員として日本の財団サイトに出向して居られる期間はもう1年もないのは分かってる。だからこそ……君が行ってしまう前に伝えておきたかった。エージェント……僕と、結婚してくれないか」
「まあ」

願ってもみなかった申し出に、私は飛び上がるような心持ちだった。とりあえず話がややこしくなっていそうだったので、確認の意味も込めて私は叫んだ。
「それじゃあ、私は博土エージェント研究員になるのね!イッツ、コンプリート!!ワォ!!」

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。